それは突然やってくる? 02
「あれま〜」
「今日はまた一段とすごいね……」
投手である佐々田 梢と山辺 千尋が目の当たりにしたのは悲惨な情景だった。
グラウンド内、各ポジションで息を切らしながらグッタリする内野陣とホームベース手前で仁王立ちする男性の姿を目撃した二人は、顔を見合わせ渇いた笑顔を浮かべた。
「……兎志子が火付けるから」
スタミナ強化のため、山道でのランニングを終えた二人の元へこっそり抜けてきたちゃんこが呟く。いつも通り、表情が読み取れない顔面からも疲れが滲み出ているのが見える。
「オイッ!ちゃんこっ!まだ終わってないぞっ!!」
しかし、彼から逃げる事は出来なかった。ベンチへ向かう足を咎めるように叫んだ昌也、と、同時に定めた視線に光が灯る。獰猛な肉食獣のような煌びやかな瞳に梢と千尋は震えあがり、理解する。
「ねぇ……これって……」
「うん、私達も、だよね……」
「ハッハッハッ!喜べお前らっ!投手含めた守備連携行くぞっ!!」
その後、更に1時間の間、昌也の歓喜する声と金属音が乾燥した寒空に高々と響き渡るのだった。
「おっし、お疲れ〜」
「「「「……お疲れ様でした……」」」」
ずいぶんとご機嫌になったコーチとは対照的に、挨拶が終わった瞬間雪崩の
如くその身を土へと還す女子達。
「……もう……無理……」
「なんで……こんな……」
「スベテハ……トシコ……ノセイ……」
「……わたくしと……したことが……」
流石に今回ばかりは自分の失態を認めている兎志子により満足した昌也は鼻歌交じりにバットを回しながらベンチへと入っていく。
そんな昌也を恨めしそうに睨みつけながらも口元に笑みを浮かべる久子が呟く。
「……しかし、この苦業も今年残りわずか、ですね」
「……私は今日で即終わりたい……」
めんどくさそうな表情を終う事なく、ただただため息を吐き出したのは俊恵。ちなみに二人とも他の女子達とは違い、立ったままで息も切れてはいなかった。
「……ほんと、鷹金家の……メイドさんって……どんな鍛え方、を……」
「わたくし……が、きき……たいくらい……ですわ……」
徐々に冷えてきた外温に熱を奪われつつも、なかなか動き出せないでいる彼女ら、結局この後更に5分間その場にへたり込むのだった。
こんばんわ、作者です。
唐突になりますが、来週以降の更新についてです。
私の私用、というか仕事の話で恐縮なんですが
来月より急遽転勤が決まり、ちょっとバタバタする可能性があるため、
更新が一時ストップするかもしれません。
この連載を楽しみにされている方がいらっしゃったら本当に申し訳ございません。
いちお、更新するつもりではいますが、如何せん急遽な異動のためどうなるか……。
読者には関係ない事で申し訳ないのですが、ひとつ。
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございます。