それは突然やってくる? 20
(スイッチ、入ったかな)
返球されたボールをもてあそびながら奏の様子を伺う。一球目、驚愕とともに焦る姿は、想定通り。ただ、その驚き方に少し愛着が湧きつつ、思わず笑みを零しながら彼女の態度を見極る。
二球目、これも梢からのサインで決めた配球。アウトハイに伸びるような速球、ゾーンを通過する様子を見送った直後、奏の雰囲気に大きな変化が届く。
こちらに向けられた視線、今日初めて奏から送られたそれは、表面上は薄く、焦点を合わせたのみ、だが、その後に走ったのは敵視する感覚。正しくは奏が梢を相手にとって不足無と、全力で勝負を決意した証に梢は思わず微笑が漏れた。
ロジンに手をやり、捕手へと向き直った梢は即座にその手を肩にやる。その意味を知る昌也はマスクの向こうで頬を引きつらせると、即座にサインを出した。
(そうこなくっちゃっ!)
心の中で歓喜を上げながら振りかぶる梢、狙いは内角、幾分、バッターボックスの前側に立つ梢の膝元に向かって、投げ降ろす。
いつにも増して心地よく流れる速球、威力もコースも申し分ない。しかし、奏は自然に白球の軌道へとバットを交差させる。
「クッ!?」
思わず漏れた悲鳴と共に上半身が空を向いた奏。当てるのが精一杯のようで、昌也の後方へと鋭い打球が飛んでいく。
カウントは1-2、フォークに驚愕し、速球に詰まらされ、どう見ても梢有利の状況、なのに、彼女の頬に一筋の汗が滴る。
今の直球、ほぼ完ぺきにタイミングを合わせられた。球威が勝り前に飛ばなかったとはいえ、3球目、たった3球で奏は梢の球を理解している。その恐ろしい才能は間違いなく天性の素質であり、努力で磨かれた事が梢は感じ取る。現に、再び構えたその姿には追い込まれたという事実よりも次の一球に対する集中が勝っているように見える。
「……だからこそ……」
相棒から新しい球を受け取り、ロジンへと指を押し付けながら梢は呟いた。あの日、昌也の運命を決めた試合で目覚めた感覚が蘇る。自分が追い込まれているはずなのに、窮地に立たされているはずなのに、なぜだか止められない、ワクワクする時間が。
「やりがいがっ……あるっ!」
4球目、同じコースに要求された速球は思った以上に力が籠ったせいか、ゾーンからボール1個分外す結果となった。
こんばんわ、作者です。
いよいよ今年のプロ野球も終盤、我が贔屓球団は残念ながら優勝は逃しましたが、
ドラフト会議では最高の指名が出来、まだシーズン残っていますが、既に来年へ心が飛んでたり(
笑)
本当のミラクルが起こればまだギリギリ2位に滑り込めますが、まぁまず無理かな、と……。
それでも最後まで選手達へエールを送り、1つでも勝ってもらいたいです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




