それは突然やってくる? 19
(初球、なにから……)
奏は身構える。マウンドに立つ梢が一つ頷く姿から、やっと決まった1球を打ち返すため。
(……兄さんなら)
きっとアウトコースの真っ直ぐ。脳裏に浮かんだ、身内の癖に最初から狙いを定め驚愕する。それは女子とは思えないスピードで飛び込み、変化したから。
(……嘘でしょ……)
思わず呟きそうになった言葉をグッと呑み込みながら、打席を外し、背を向ける。こちらに這わす視線、きっと捕手である昌也が今の見逃し方を分析している。
「クッ……」
奥歯を噛みしめながら、奏は今一度打席に入った。少し大きめのメットに手をやりながら、足元でバットを揺らし、心を落ち着かせる。
(……それにしても)
そして、始まる思考。先程の球、球速もさることながら、迫る威圧もすごかった。というより女子離れしている。少なくとも、奏が今まで対峙した事はない。更に言えば、
(あのスピードで落ちるとか、反則……)
そう、梢は初球からフォークボールをインコース寄りに投げた。速度と落下、2段階で襲った衝撃は奏にバットを振らせる余裕もなく、昌也からボールが宣告された。
(……見逃せたおかげで助かったけど)
正直、奏の技量で今の球を打ち返すのは難しい事を脳が告げる。勝負が決まった時、彼女が昌也と行ったキャッチボールは至って普通、むしろ肩を作るためなら絶対と言えるほど足りない気がしたのだが、
(それも狙いだったのね)
思わず手に力が籠る。だが、それに気づく余裕すらない奏は、2球目、外角へと真っ直ぐ延びる速球を見送る。
「ストライク」
昌也が淡々と告げ、返球する。その間も奏は口元に悔しさを滲ませながら、大きく深呼吸を続けた。
(……そうだ、こういう時こそ、落ち着くんだ)
自然と目を閉じながら伸びた白線を思い浮かべる。見た事もない速度とノビ、なんでこんな選手がここにいるのか、理解できない。だけど、現実。目の前で起こった事象をしっかりとインプットする。今取れた情報を次へと活かさなければいけない。
(それが、私のやり方……)
兄から教わり、疑う事なくやってきた事、些細な事から大きな変化を、勝利をもたらすために出来る事は。
(見ててね、兄さん)
見開いた先で宿敵が笑う。挑発的にも見えるその姿に対し、奏は至って冷静に自分の感覚が研ぎ澄まされていくのを感じた。
こんばんわ、作者です。
野球シーズンも佳境、今年はコロナの影響で遅いスタートだったため、
未だ終わってない最中ではありますが、引退宣言や事実上の戦力外通告もチラホラと。
その中には自分の大好きな選手もおり、引退を目撃した際は本当に涙が……。
正直、ここ数日そのせい(某贔屓球団も勝てないせい)で仕事終わってからもやる気が削がれて
早い眠りについた……健康的だな(笑)
ただ、いつまでも引きずっては選手にも申し訳ないので、明日からは気合入れ直そうと思う私でした。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




