気付いてやれなかったことは俺の落ち度だが、それはこれから行動で償うとしようか
「ヤーゲ、お前さんもだ」
仕事の話となれば、無視するわけにもいくまい。ヤーゲにも声をかけ、向こうも嫌そうな顔をしながらもやって来る。
「さて、ターロの繋ぎ屋からも上っ面は聞いているだろうが、最初から話すぞ。繰り返しになる部分は確認とでも思ってくれ」
「ああ」
ハルクが頷き、ヤーゲを除く他の5人も表情を引き締める。
「ここ数日……正確には一昨日からか。ユグ山に妙な動物が現れるようになった。以前から住み着いていたものとは共通するところも多いが、色々と異常な動物がな」
「やけに凶暴。見た目も普通じゃない、とは聞いたが」
「そうだな。何かしらの理由で野生の動物が凶暴化する、なんてのもたまに聞く話だが、ソレとは違っているような感じなんだ。しっくり来る言い回しをするのなら――おとぎ話に出て来るような……“魔物化”とでも言えばいいのか」
「ハハッ!」
失笑ものの例えだとは、俺自身も思っていたが、実際に嘲笑が飛んで来た。誰の、なのかは、言うまでもなかろうが。
「情けない言い訳ですね。自分の役不足を隠したいだけなのでは?頭潰しも耄碌したのではありませんか?」
やれやれ……
この男は、どれだけ俺を呆れさせれば気が済むのやら、だ。
俺が耄碌していることに関しては否定もしないが、ついぞ先ほどに、そんな人間相手に軽くあしらわれた挙句、殺気を叩きつけられて震えあがっていたのはどこの誰だったのやら。
ついでに言うなら、絵に描いたような“役不足”の阿呆な誤用だろう。面倒なのでわざわざ指摘もしてやらぬが。
周りを見れば、俺以外がヤーゲに向けられる視線も随分と冷めきっていた。
いちいち腹を立ててやるような価値も無さそうな相手。その方がよさそうではあるのだろうが。
「……かもしれぬな。俺ひとりの手に余るから、こうして応援を頼んだというわけだ。それで、何をしてもらうかという話だが……」
ヤーゲの発言は適当に流す。苛立たし気に俺を睨んでくるが、当然ながらそんなものは無視して。
「駆除なり調査なりをせねばならぬのだが……連中、昼も夜もお構いなしでこの村にまでやって来やがるのでな。おかげで、俺は身動きどころか、ベッドで眠れもしないのさ。そんなわけで、お前さんたちに頼みたいのは、その間にこの村を守ることだ」
「おう。繋ぎ屋からもそう聞いてるぜ」
「ああ、ここまでは確認事項だ。まずは……“敵”がどんなものか見てみるか。始末した連中の死骸はいくつか取り置いてある。……いや、その前に村長さんのところに顔を出しておくか」
「ああ、ここにいたんですね」
腰を上げかけたところで、入り口の扉が開く。
「……いいところに来てくれた」
やって来たのは村長。どんな経緯かはともかく、当然ながら村長のところにも話は行っていると考えるのは妥当なところ。
俺としても、手間が省けるのはありがたい話だ。
「この人たちが?」
「ああ。村長さんの予想通りだ。ターロの繋ぎ屋が回してくれた鏡追い。俺の同業者たちだ」
「そうですか。私はこのユグ村の村長をやっている者です。どうかよろしくお願いしますよ」
ようやく数が揃ったということもあるのだろう。わかりやすくホッとした風でハルクたちに声をかける。
「ああ。こっちこそ頼むぜ。俺はハルク。ティークのダンナには借りがあるんでな。返す意味でも、キッチリ働かせてもらうぜ」
そうしてひととおりの自己紹介が無事に終わった後――ちなみに、そのあたりは約1名も普通にやれていた。まあ、多少偉そうではあったが――村長も同行するということで村の片隅にある小屋に向かう。
普段――というか平時は、狩りの獲物をさばくのに使っている場所、とのことだ。
10日程前であればがらんとしていた小屋の中らしいが、今は片隅に毛皮や角や爪や牙などが積まれ、別の隅には動物らしきモノの死骸が積み重なっていた。
無論、全部俺が撲殺した連中と、その成れの果てだ。
「コイツらが問題の妙な動物なんだな?」
「ああ。ほれ、このウサギっぽいのを見てみるといい」
山のてっぺんにあったのは、半日ほど前に始末したばかりのウサギモドキ。
「……なるほど。こんな生き物は俺も初めて見るぞ」
「俺もですね」
角を掴んで引きずって来ると、近くで見たハルクたちも表情を変える。
「ちょっと調べてもいいか?」
「そう思うが……構わぬか?」
「あ、はい」
一応、村の方に押し付け……もとい、引き取ってもらったもの。念のために取った確認には、即許可が出た。
「……ハルクさん、この角、かなり頑丈そうですよ」
「それに、かなり鋭く尖ってやがる。コイツにグッサリやられたら、下手すりゃ死ぬな」
「こっちのネズミっぽいやつの牙もヤバくないですか?噛みつかれたらただじゃ済みませんって」
「ああ。簡単には離れそうもない。かといって無理矢理引きはがせば、ゴッソリえぐられそうだな」
「この爪も見てみろよ……。野犬は何度か退治したけど、全然違うぞ……」
「しかも凶暴なんですよね……」
ふむ。6人全員、見るところはしっかり見ているらしいな。
恐れも感じているようだが、それも悪いことではない。無警戒な奴と怯えている奴。どちらの生存率が高いかといえば――少なくとも俺の経験上は――後者の方が勝っている。
「あそこに積んであるのって、こいつらを解体した物なんですか?」
ふと気付いたのか、小屋の一角に目を向けたダイトが質問をする。
「そうですね。角や牙は頑丈なので何かに使えそうですし、毛皮も普通の動物のものよりも丈夫なんですよ。それに、肉も美味いですし」
「おいおい……初耳だぞ……」
「そうなんで……って、食ったんですか!」
「はぁ!?」
「食ったって……こいつ等をですか!?」
「嘘だろ……」
質問していたダイトだけではなく、そんなやり取りを何気なく聞いていた他の連中までが驚きの声を上げる。俺も含めて。
普通はそう思うだろう。俺も大いに驚いた。普通ではない生き物。毒があるのではないかと疑うのも、おかしな考えではない……はずなのだが。
「若い者がですね、試しに焼いてみたら良い匂いがするので思わず口に入れてみたら美味かったらしくて……」
「えーと……じゃあ、あそこにある毛皮とかの持ち主の肉は……」
「全部食べてしまいました。角なんかにしてもそうですけど、ターロに持って行ったら高く売れるんじゃないか、なんて話も出ていましてね」
「そうですか……」
腹を壊したという話も聞かぬ以上、それはそれでいいのかもしれぬが。中々に逞しい連中だ。
ま、いいけどよ……
考えてみれば、蛇共の飯にもなっていたくらいだ。食えるのならば、それはそれで結構なことだ。それはさて置き、
「美味い不味いはさておくとして、“敵”がどんなモノかは把握出来たか?」
「ああ。よくわかったよ。“魔物化”なんてダンナは言っていたが、それも大げさじゃないってことは理解出来たぜ」
ハルクの言葉に他の5人も頷く。残り1名は……もうどうでもいい。不注意慢心油断情報不足あたりを原因にして死にたいのならば勝手に死ねばいいだろう。それも鏡追いの背負うもの。自己責任だ。
まあ、俺に不利益を持って来るようなら、直接処理するかもしれぬが。
「なら、次は仕事場に行くぞ。連中は山の中に住み着いているのでな」
村長と別れて向かったのは、ユグ山方面の出入り口。ここ数日、1日の大半を俺がすごしていた場所だ。
見張りをしていた村の者に説明をして、番を引き継ぐ。
「さて、山から下りて来る連中の駆除をこの場所でやってもらうわけだが、さっきも言ったように、昼も夜もお構いなしでやって来やがるのでな。通しで番が必要になるんだ。とはいえ、四六時中やっていたら倒れてしまう。となれば、お前さんたちには交代で入ってもらうことになるわけだが……」
一同の顔を見回し、ハルクの顔に視線を止める。
「ハルク。お前さんは、どう振り分けるのがいいと思う?」
「そりゃダンナに任せるさ。ダンナなら、妙なことはしないだろうしな」
やれやれ……
俺を信頼している、と言えば聞こえはいいかもしれぬが。
食堂でも思ったが、この男、面倒だからと考えることを放棄している様子がところどころに見える。
ミッシュにコ-ナス。ダイトたちのことも考えるなら、いい傾向ではあるはずもなしだ。
「そうかい。なら、ハルクは1日中休み無しでここに常駐だな」
「ちょ、ダンナ!?」
そう無茶を振ってやれば、すぐに顔色を変えて抗議してくる。
「……というのはさすがに冗談だがな。ハルクよ、どう振り分けるのか、真面目に考えて言うだけ言ってみろ。……一応、今の雇い主は俺ということになっているのでな。これは雇い主としての指示だ」
「……わかったよ。少し時間をくれ」
「ああ。ちなみに、昼間も無いわけじゃないが、襲撃の頻度は夜間の方が上だ」
パンパンと自分の頭を叩きながら考え始めるハルク。素振りだけ、ではなさそうだ。ハルクなりに真剣に考えていることは、表情から見て取れた。
ふむ。せっかくの機会だ。
「お前さんたち全員、協力していいぞ。俺が満足する案を出せたなら……この仕事を終えた後の祝杯は全額俺の懐から出そう」
思い付きを口にすれば、
「いいのか!?」
「ハルクさん、俺も手伝いますから!」
「この村の酒は旨いって話ですよね。俺も協力しますよ」
「「「俺も!」」」
「お前らなぁ……。いや、細かいことはどうでもいい。何としてもダンナに奢らせるぞ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
「よし!決まったぜ!」
ああでもなければこうでもない、なんてうなり続ける連中を待つことしばらく。組んでいた円陣を解いたハルクたち6人が俺の方を見る。
さて、答え合わせと行こうか。
「まず、3組に分ける。ひとつは早朝から昼過ぎまで。ひとつは昼過ぎから夜更けまで。もうひとつがそこから朝までだ」
「ほう。それで、振り分けは?」
「朝からがコ-ナスとアルバ。昼過ぎからがミッシュとダイト。夜中が俺とネブラとヤーゲだ」
「……やれやれ」
「ダンナ……何かマズかったか?」
俺の嘆息をそう解釈したらしいハルクが不安そうに聞いてくる。
「ああ。後悔しているよ。ハルク、お前さんのことだ。ここぞとばかりに呑みまくって食いまくろうという腹だろ。どれだけの額が俺の懐から吹き飛ぶかと思うとな。ため息のひとつくらいは容認してもらえまいか」
「……へ?それって……」
「ああ。及第点どころではない。ほぼ満点だ」
「「「「「「……よっしゃああああぁっ!」」」」」」
数秒置いて、意味を把握したハルクたち6人が一斉に勝ちどきを上げる。
しっかりやれるじゃないか。
俺の見立てでは、この中で一番腕が立つのがハルク。次いでミッシュとコ-ナス。その次は新人3人。腕はともかく、ヤーゲは論外。
新人だけの時間を作るのは上手くないだろう。それに、ハルクはともかく、ミッシュやコ-ナスもひとりでは多数を相手取るのは厳しいかもしれぬ。
ならば、最も危険が大きい夜間を担当するのはハルク以外にはいないだろう。そして、約1名の手綱を握るのも、ハルク以外には厳しい。
そう考えたら、必然的にハルク……いや、ハルクたちが出した案になるわけだ。まあ、ハルクの負担が大きすぎるのは気にかかりもするが。
そこは、可能な限り俺も手助けするべきか。
「よし。ならさっそく働いてもら――」
「納得できませんね」
やれやれ、またお前か……
異論を口にしたのが誰なのかは言うまでもないだろう。
「……なら、お前さんの案を聞かせてもらおうか。当然ながら、代案くらいはあるのだろう?」
いちいち問答するのも面倒だ。さっさと案を言ってもらおうか。
「私を含めて7人もいるのなら、4つに分けるべきですね。私が夜間。昼間は、そいつとそいつ。そいつとそいつ。そいつとそいつでいいでしょう」
ヤーゲが指差した組み合わせは、ハルクとミッシュ、コ-ナスとダイト、ネブラとアルバ。
「で、その根拠は?」
論外にもほどがある――のだが、一応聞くだけは聞いてやる。
「夜間の襲撃が多いと言いますが、頭潰しひとりでやれたことを私がやれないはずはない。他の連中でもふたりで組めばどうにかなるでしょう」
「「「「「「「……」」」」」」」
どこをどう指摘すればいいのやら、だ。俺も、この場に居た他の全員も、返す言葉が無かった。
「ふん。ようやく私の偉大さが理解出来たようですね」
そんな沈黙をどう解釈したのやら。得意げに胸を張って見せる。
ある意味では関心もするがな。
ロクでもない輩だとは、出会ってすぐに認識した。が、これだけ短い時間でここまで底無しに評価を下げさせられたのは初めてかもしれぬ。長生きはしてみるものだ。
「「「「「「「……はぁ」」」」」」
全員のため息が綺麗に重なった。多分だが、コイツの印象も綺麗に重なっていることだろう。
「話にならねぇよ」
「論外」
「問題外だろ」
「さすがに擁護できないよなぁ……」
「認めるところが無いっていうか……」
「むしろツッコミどころしかないんじゃ……」
ハルクたちの感想は散々なものだが、俺も全くの同意見だった。
「なっ!?」
それを受けてヤーゲが見せたのは驚愕。
「…………下賤な奴らが揃いも揃って私を馬鹿にして……」
怒りで顔を真っ赤にし、
「そうか!お前たち、頭潰しに金をもらってるんだろう。だから私に逆らって……クソっ!どこまでも下劣な奴らめ」
わけのわからぬことを言い始め……いや、待てよ?
ひとつの仮説が浮かぶ。そんなことが起きるとは考えにくい。けれど、絶対に無いとは言い切れない。そんな仮説。
一応、落ち着いたら確認を入れておくか?まあ、その前に片が付くかもしれぬし、俺の杞憂であってくれたなら、それが一番楽でいいのだが。
まあ、それも今はさて置くとしよう。
「お前たち全員!殺してやるぞ!」
気が付けば、ヤーゲは赤ら顔で剣に手をかけていた。
やれやれ、こっちもこっちで面倒な話だ。まあ、頃合いではあるのか?
「……抜くつもりか?」
念のため、だ。一応、問うだけは問うてやる。
最後通牒とするつもりで。
「……そうかい」
返答は剣を抜き放つ音。
これは処置無し、だな。ここで引き下がるようなら、この仕事から降ろした上で繋ぎ屋に報告するだけで済ませてやるつもりだったが。……しかたなし、だ。処理するか。
そう決断する。
「お前さんたちは下がっていてくれ。これは俺の役どころだ。……さて、殺り合うとするか?」
ハルクたちを下がらせ、俺も得物を抜く。
「今度こそ殺してやるぞ頭潰し!今度は卑怯な手は通じないからな!」
ったく、どんな思考しているのやら。
卑怯を悪とは思わぬ。善悪にもさして興味は無い。
だが、不意打ちという名の卑怯なマネをしてきたのはどっちなのやら。
「お前さえ……お前さえいなければ!私が鏡追いごときになることも無かったんだ!我が一族の栄光を汚したお前に神罰を下してやるぞ!」
「おいおい……」
鳥肌が立った。
恐れからではなく、気持ちの悪さから。
圧政重税搾取を続ける領主――ハオカー家の下で、これ以上は生きていけないという領民が、隣接する地方の領主――ラーギ家に助けを求め、ラーギ家側がその願いを聞き入れることに端を発した騒乱があり、そこに首を突っ込んだことがあった。
当然ながら繋ぎ屋に金を積んで裏は取った。ハオカーは絵に描いたようなクソ領主で、ラーギはそれなり以上にはマトモな領主。
俺はラーギに加担し、申し訳程度には貢献したつもりだ。まあ、それはさておき、結果としてハオカーの領地はラーギに併合されることになった。
それが、俺とハオカーの因縁。
1年ばかり後に繋ぎ屋に聞いたところ、旧ハオカー領の領民も今は穏やかに暮らしているらしいとわかり、それ以来記憶の片隅に放り投げていた一件だ。
俺がやったのは大したことではない。上手く行けば死ねるかもしれないと、そんな淡い期待を抱きつつ、ハオカーの本陣に単身で乗り込み、“頭”を潰しただけのこと。そういえば、あの場にはクソ領主の息子もいたんだったか?頭を潰したら残りは方々に逃げ出したから詳しくは知らぬが。
やれやれ……。あの仕事、受けるのではなかったな。
ため息をひとつ。
結局、あの時は死神の気配すら感じ取れずに終わり、今はこうして阿呆に付きまとわれている。
つくづく思う。何故に人生はこうもままならぬのか、と。
「貴様……真面目に聞いているのか!」
「聞くだけはな」
この阿呆はクソ領主の息子なのだろうが、当時聞いた話では、領主一族は揃いも揃ってクズだったとのこと。一人息子に関しての情報もあったな。確か……若い娘を何人も、無理矢理に手籠めにしていたとかなんとか。抵抗する人間を何人も切り殺したとも聞いたか。
あまり好きな考えでもないが、あの親にしてこの子あり、というやつだろう。栄光を汚した、などと言っていたが――栄光なんてものが存在したと仮定して――本当にソレを汚していたのはお前さんたちだろうに。
「もういい!もう許さんぞ!お前は殺してやるからな!」
「……そうかい」
さっきから何回殺す殺すを言ってるのやら……
「お前だけじゃない!宿屋に居たあの娘も殺してやる!」
「……ほう」
少しばかり笑える発言があった。俺の聞き間違いか?まだ耳は遠くなっていないと思っていたのだが。
「いや、殺すだけでは罰が軽すぎるな。あの小娘、顔だけは悪くないからな。なぶりものにして……最後はあの黒い髪に油をかけて燃やしてやるぞ。そして、頭潰しのせいでこんなことになるんだと教えてやる。ははは!頭潰しを恨みながら焼け死んでいくのを見るのが楽しみだ」
聞き間違いでも人違いでもなかったらしい。黒髪の女、なんてのはケイコお嬢ちゃんくらいしかいなかったはずだが。
そうかそうか。
なるほどなるほど。
そういうことか。
よくわかったよ。
気付いてやれなかったことは俺の落ち度だが、それはこれから行動で償うとしようか。つまるところは――
本気で死にたいらしいな。
もっとも、それがなくとも処理する予定だったわけで、なにが変わるというわけでもないのか。
「それで、いつまで楽しくおしゃべりしていればいい?」
とはいえ、そろそろ戯言を聞かされるのにもうんざりだ。さっさと始めるとしようか。
「それとも……口では殺す殺す言っているようだが、本当は俺が怖いのか?なら、尻尾を巻いて逃げ帰るといい。あの時……4年前のフェドス地方で晒した醜態を繰り返すようにな。あの無様な姿、お前さんにはさぞ似合うだろうさ」
だから挑発をかける。安っぽいとは承知の上だが――
「……殺してやるぞ!」
それでも、今のこの阿呆には十二分に有効だった。




