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i be RERIVE  作者: 高崎ナル
2/6

八つ当たり

星宮 零はどこにでもいる高校3年生。


歳は18。


少し、やる気が無いように取られる目付きを除けば容姿に特に特異な点は無い。


見た目は普通の高校生だった零は、


3年前に起こった交通事故で

両親と幼馴染を無くして以来、

人を必要に遠ざけ、一人で生きてきた。


それには訳がある。


零は極端な不幸体質だった。


道を歩けば糞を踏むし、

お金を入れた方のポケットには穴は開くし、

お使いを頼まれれば財布を落とし、

それならばと、お金を握りしめて行けば

カツアゲに巻き上げられた。


まるで世界にそっぽ向かれたようなツキの無さに零は苦しみながらも、それを丸々飲み込んで

納得しなかった。出来なかった。


「そんなモンかよ!神様ぁ!」


そして、誰にこの怒りをぶつければ

良いのかと考えた結果、


毎度毎度、不幸が自分を襲うたびに

高笑いを上げて、そう言った。


いつか、この不幸のツケで絶大な幸福がやってくると信じて。


だが、零の不幸は他人を殺した。


道の崩落事故だった。


零にしては、変な日だった。


零の母親が温泉旅行のチケットを6人分当て、

そこにたまたま居合わせた幼馴染家族と

一緒に行くと事になった事が始まり。


その日、道にある糞に踏む前に気がつけた。

お金を入れた方と逆のポケットに穴が開いてたし、信号が多い通りでも親と幼馴染とその家族が乗った車は信号にやけに捕まらなかったし、


道中、親父が買ってくれたアイスが生まれて初めて当たった。


溜まりに溜まりきった幸福が

やっと自分に微笑みだしたか。


そう、思った瞬間。


山間の岬を走っていた車が道路の崩落と共に

底の見えない谷底へ投げ出された。


しばらくして、

痛みと共に、目覚めた零は驚愕した。


自分の命を救ってくれた柔らかな感触。

どんなタイミングでどんな力加減が加われば

そんな体制になるのか。


零は想いを寄せる幼馴染の彼女を下敷きにするようにして命を拾った。


当然、両親はおろか、

幼馴染の両親も助からなかった。


自分の不幸が、人を殺した。


今まで一度も他人に

不幸が降りかかる事は無かった。

逆に言えば、

零の周りの人達は何故か運が良かった。


ーーそれが、何故。


いくら考えても答えは出てこなかったが、

紛れも無い事実として、


零の心に酷く深く楔を植えつけた。


自分と関係を持つ人を殺してしまう。


ーーそんな奴、人間じゃあねぇ。


以来、生活するのに必要な関係のみを残し、

友人から親戚まで、全ての関係を絶った。


--------------------------------------------------------------------


そうして生活する事、3年。


ただ、無意味に一人で無意味に過ごしてきた。


しかし、そんな日々も終わった。


家族と大切な人を殺した自分の不幸は遂に、

やっと自分を殺してくれた。


ーー今は、それだけで良い。


零はそう思った。


ーーん?思った??


巧妙に自然に溶け込んだ不自然にやっと気づく


死んだ人間は思う事もは勿論。


感じる事も、何も出来ないというのに。



ーーどう、なってんだ…?



辺りを確認しようと目を開く。


が、開く目が無い。


ならばと辺りに触れようとする。


が、手足が無い。


声を出そうとする。


が、開く口が無い。


だが、やけに穏やかだ。

まるで水の中に漂っているような感覚。

やけに居心地が良い。


ーーまさか、ここが天国…いや、俺みたいな悪魔は生前に地獄行きチケットは初回限定版を購入済みのはず。


ーーすると、ここ地獄か??


ここが地獄だとすれば、無限地獄か。

無限の時を死ぬ事も眠る事も許さず、

無限に後悔と反省を繰り返す。


なんと自分にふさわしい罰か。


ーーだとすれば、時間は文字通り無限にあるわけだしな。


と、手始めに初めの方から記憶を探る。


ーートラックに、跳ねられたよな。そのあと、女の人が来て。あの人、俺の事心配してくれてたのか…絶対、良い人だな。


ズキ、と軽い頭痛があった。

それを無視して、零は思い出し続ける。


ーーその横に、女の子が居て…ッツ!?


ズキン、と突き刺すような頭痛が襲う。


痛みに耐えかねた思考は、


強制的に中断させられる。


ーーなんっだよ!!えっと、女の子が…ッッツ!


今度はその2倍はあっただろうか。

思考が一瞬、真っ白になった。


ーーわかった!わかった!クッソ…考えんなってか??


ーー人生でも振り返ろ、って事か…


しかし、頭に過ぎるのは不幸に負け続けた

散々な自分の人生。


何一つ、上手く行かなかった。


この頭痛にも神様の思惑通りだと思うと、

腹が立って来た。


ーー思い通りにしてたまるかよ。


特に理由も無い決意。


理由を挙げるのなら、腹いせか八つ当たりだ。


ーー何か、俺に思い出してもらっちゃあ困る事でもあんのかよ!神様!!


零は思考を回した。


頭痛は絶えず襲い、

思考を削ごうと何度も打ち付ける。


ーーッツ……こんな、もんかよぉ!!神様ぁ!


白熱する頭。痛みに反して脳を回す。

1秒、1秒。ゆっくりと記憶を辿る。


猫、を抱えた女の子。

無表情。

点滅、消灯。

赤、黒。


一つ一つ、

記憶が蘇る度に頭痛は酷く頭を叩く。


泣いた、少女。

ごめんなさい。


思考が、焼き切れる。


高温に熱せられたノコギリでジリジリと

切られていく感覚に襲われる。


思考の紐はもう、千切れる寸前か。

危ない、と意識が警報を鳴らすがそれを無視。


ーーもう、ちょいぃ!!


直ぐそこにある答えに手を伸ばした。

限界を迎え、思考の紐がプツン、と千切れる。

届いたのか否か。


その答えは脳内に響き渡った。




ーーあぁ…愛狂しい。ーー

なるべく早く転生させようとしてるんですけど…

とりあえず頑張ります…

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