愛華の席に野郎共が!
前回のあらすじ
学校に通いたいと申し出た愛華。
しかし、それには学費をどうにかする必要があり、考えた末にダンジョン産アイテムをネットオークションに出品することを思いつく。
出品されたのは愛華が身につけた異世界の衣装。
するとコレらは飛ぶように落札され、なんとか学費を稼ぐことに成功。
無事愛華の願いが叶ったのだが……。
「おっはよ~っ! ニコニコスマイルの嶺奈ちゃんが来てやったぞ~!」
朝っぱらから大声で叩き起こされ、掛け布団から顔を覗かせる。
ってか、ま~た勝手に上げやがったな、うちの母ちゃん……。
「――ったく、まだ7時じゃんか。一時間は早ぇよ……」
「全然早くないよ。愛華と今日香ちゃんは台所に居たし、起きてないのは祐矢だけだよ?」
今日香はともかく、愛華は起きようと思えばいつでも起きられるらしいから一緒に考えちゃダメだろ。つ~か羨ましいな、ダンジョンコア……。
それと明日香姉ちゃんはまだ寝てるぞ。敢えてカウントしてないのかもしれんが。
「それに教室に行く前に、愛華の付き添いで職員室に行かなきゃならないんでしょ?」
「……あ~~」
そういやそうだったな。
色々と校内を案内してやるんだった。
「ほら、分かったらさっさと起きる!」
ボスッ!
「ッデェェェッ! メガホンで殴るんじゃねぇ!」
つ~かどっから出した、そのメガホン。
ガララッ
「おはよう御座います」
「おう、おは――え?」
あれれ~? おっかしいぞ~? 下にいるはずの愛華が何故に押入れから出てくるんだ~?
「……え、う、嘘でしょ? た、確かに台所に居たはずよ?」
嶺奈のやつも、幽霊でも見たかのように固まってる。
そういや嶺奈って、怪奇現象とか幽霊には弱かったっけな。
――って、そんなことより何故愛華が瞬間移動したかのように現れたかが問題だ。
「そういえば説明してなかったですかね? わたくしダンジョン内ならどこにでも瞬時に移動できるのですよ。つまり瞬間移動ですね」
「「それを先に言え~!」」
ダンマスの俺にすら教えてないとか、俺って飾りもいいとこやん……。
「もぅ、驚かさないでよ愛華」
「そうだぞ愛華。嶺奈はこう見えて幽霊とか苦手なんだからな」
ボズッ!
「ッダァァァイ!」
「祐、一言余計」
にしたって、メガホンが破損するほど力込めなくてもよかっただろ……。おかげですっかり目が覚めちまった。
「いってきま~す!」
「ではいって参ります」
「は~い、車には気を付けてね~」
母ちゃんに見送られ、いよいよ愛華の通学が始まる。
初めて訪れた場所はキョロキョロと見渡す癖があるらしく、見慣れない通学路でも辺りを気にしながら歩いてるようだ。
さっきから嶺奈にアレは何――コレは何――と質問攻めを展開している。
「そういや以前、今日香と一緒に学校に来たよな? そん時に見て回らなかったのか?」
「あの時は今日香さんに手を引かれて走って来ましたからね。気にしてる余裕はありませんでした」
――等と言いつつ視線はアッチコッチとブレブレだ。つっても数日で収まるだろうが。
しかしそれとは別に、愛華の制服姿は実によく似合っている。
うちの高校は紺のブレザーなんだが、女子のスカートは赤と深緑のチェック柄だ。
そして愛華本人は青い髪のポニーテールという色合いのバランスは絶妙だな。うむ、実に新鮮で複眼複眼!
ちなみにうちの高校、頭髪には緩いのでどんな色でもOKだ。
「祐矢さん、先ほどから視線が鋭いのですが?」
「え? いや、別になにも……」
「祐、まさか愛華をイヤらしい目で見てたんじゃないでしょうね? 制服姿が新鮮だとか複眼だとか思ってんでしょ?」
「いや、そりゃ新鮮だとは思うが、イヤらしい視線ではない! 断じて!」
くそぅ、なんで女ってやつは鋭いんだ。これじゃあ迂闊にウキウキウォッチングが出来ないじゃないか。
「ふ~ん? じゃあさ、あたしの制服姿見てどう思う?」
「どうって、そりゃお前――」
うん? 改めて見ると嶺奈もスタイルいいし、愛華とは違う路線でマッチしてるな。
うん、ほどよく焼けた肌と制服の組み合わせは実にいい!
結論、愛華と嶺奈――甲乙つけがたし。
「嶺奈は嶺奈で似合ってるぞ」
「そ、そそそそう?」
ん? 嶺奈のやつ、何を今更照れてんだ?
まぁいいか。
と、なんやかんや言ってるうちに、学校に到着。
家から20分という近距離にあるから話してるとすぐだな。
「じゃあまた後でね!」
「おう」
嶺奈は先に教室に向い、俺と愛華は職員室へと足を運ぶ。
コンコン
「失礼しま~す」
「失礼致します」
「お、来たか転校生」
入って早々、担任に手招きされる。
もしかしなくても俺と同じクラスか?
「薄々気付いてるようだが、冴木も――いや、二人とも冴木だったな。愛華も同じクラスになったから、お前の方で色々とフォローしてやってくれ」
「分かりました」
そうだった。愛華の設定は同い年の従妹で名字も同じってことにしてるんだったな。
「それじゃあ簡単に校内を――「よ~く来てくれたよ愛華く~~~ん!」
「「うぉわっ!」」
俺と担任が一緒になって仰け反る。
何故か知らんが、校長がいきなり割り込んで来たのが原因だ。
「うんうん、画像で見た通り、まさしく本人であると断言するぞ! いやぁ、今日は実に素晴らしい日だ!」
ああ、そういや愛華の着た衣装を気に入って落札した一人が校長だったな。
「あ、あの~校長、女子生徒に触りすぎです。これ以上は職員会議になりますよ?」
「はいは~い、いつでもどうぞ~♪」
「いや、どうぞじゃないが……」
おい、堂堂とセクハラすんな!
担任、もっと言ったれ!
「よく分かりませんが、誉められてるということでよろしいのでしょうか?」
「もっちろ~ん♪ 僕気に入ったもんね~、愛華ちゃん世界一ぃぃぃ!」
なんか病的なまでの好意を愛華に寄せてるが、この校長のおかげで学費を解決できたのも事実。
だがベタベタと愛華を触りまくるのは、やはり看過できない。つ~か今すぐ離れろ!
「だぁぁもぅ、校長いい加減にしろ! これから校内の説明しなきゃなんないんだぞ!」
「校内の説明? よし分かった。今日は愛華ちゃんの登校記念日として、一時間目は校内探索にしよう!」
「「やめぃ!」」
今さら校内の探索なんかしたくもねぇ。
「校長、お願いですから校長室でおとなしくしててください」
「え~ぇ? 今日は午前中に文部省の役人が来るんだもん、面倒くさいんだよ~ぅ」
「「仕事しろや!」」
何気にサボろうとすんじゃねぇ!
喧しい校長を校長室に押し込んでる間にも時間は過ぎ去っていき、とうとう校内の説明をしてる余裕はなくなった。
仕方ないのでそのまま教室に向かい、愛華の自己紹介を終えたところでホームルーム終了。
直後、愛華の机の周りにはもの凄い人だかりが――って、愛華の席は俺の隣なため非常に窮屈である……。
「ねぇねぇ、どこから来たの~?」
「好きなブランドは?」
「どの歌手を応援してる~?」
「ライン繋ごうよ!」
「ていうかカラオケ行かない?」
初っぱなから際どい質問が飛んできた。
しかしこれは予想通りで、どこから来たのかという質問には青森からってことにしている。
深い理由はないが、青森に詳しいやつは少ないだろうと見越したのが大きい。
「青森出身です」
「好きなブランドは……特にありませんね」
「歌手は……そうですね、チャゲ&ケフカでしょうか」
「ラインですか? すみません、ちょっとよく分かりません」
あ、そういや愛華ってスマホ持ってなかったな。
多分殆どの女子はスマホを持ってるだろうから、このままだと仲間外れにされかねない。
こんど一緒に契約しにいくか。
でもって女子連中が撤収すると、今度は男子共が群がり始めた。
「ししし、趣味は何ですか?」
「よ、よければ俺と同じ部活に」
「そそ、その……つ、付き合ってるお人は、い、いてはるんでしょうか?」
「すすす、スリーサイズなんか教えてくれちゃったりなんかしちゃったり……」
「貴女の幸せを――祈らせてください!」
うん、実に分かりやすい連中だ。
俺がコイツらの立場だったら同じ行動に出るかもしれない。なんせ制服が見事にマッチしてる美少女だからな。
フッ、けど残念だったな。俺がいる限り、愛華に手を出すことは断じて許さん!
「おいお前――「待つで御座るぅぅぅ!」
ドゴォォォ!
「「「ブッハーーーッ!」」」
「拙者がいる限り、愛華殿には指一本触れさせないで御座るぅぅぅ!」
群がる男子共を跳ね飛ばしたのは、クラス一の巨体――武悲山通だ。
クラス内では二次オタとして有名なコイツが愛華に興味を示すとは……。
「冴木殿ぉぉぉ!」
ガシッ!
「おわっ!?」
「よくぞ……よくぞ愛華殿を連れて来てくれたで御座る! この場を借りて、感謝致しまするぅぅぅ」
「ちょ、おい……」
そんな感激されても、コイツのために連れてきたわけじゃないんだけどな。
てか握られた手が痛ぇ……。
「まさか拙者の心を射つ三次元が存在しようとは、夢にも思わなきそうろう……。いやはや世界は広いということを改めて思い知らされたで御座るよ」
沁々と語ってるとこアレだが、愛華の場合は世界の前に異がつくんだぜ? 教えないけど。
「愛華さん――いや、愛華たん! 拙者、貴女に射たれし哀れな子羊にてそうろう」
お前の場合、子羊じゃなくて豚だろ……
「是非とも拙者と共に愛の巣を築き上げましょうぞ!」
ガシッ!
あ、コラ、愛華の手を握んな!
しかも愛の巣ってなんだ、愛の巣って!
「この野郎、愛華から離れろ!」
「ま、待つで御座る、よすで御座る、殿中で御座るぅぅぅ!」
「やかましい! ――おい愛華、お前からも何か言ってやれ!」
「わたくしがですか? では――」
そして飛び出す、愛華による強烈な一言。
「汗臭いので離れてくれません?」
「グハァッ!」
痛恨の一撃を受け、哀れな豚は倒れた。
ハッキリと言い切った姿勢に、女子からは拍手喝采――一方の男子共は自分の臭いを犬のように確かめだす。
「祐矢さんも少々汗臭いですよ?」
「やめろ、俺にまで飛び火させるな」
つ~か汗臭いって言われるの、地味~に効くな……。
そして授業と授業の合間に愛華へ群がるという光景を繰り返し、放課後がやってくる。
本当は愛華と一緒に帰ろうと思ったんだが女子からの勧誘が凄まじく、やむを得ず嶺奈に任せることにした。
まだこの時の俺は、次の休みにでもスマホの契約に行こうかなぁなんて気楽に考えていた。
うん、まさかね、まさか愛華がのめり込むような物が出てくるなんて知るわきゃないんで。
「ただいま戻りました」
俺が帰宅後、しばらくして愛華も戻ってきた。
「おう、お帰り。女子会は楽しかったか?」
「ふむ、アレは女子会というものなのですか。女子会とは実に素晴らしいものですね」
女子会が素晴らしい? それだけ楽しかったってことだろうか?
「あのような催しはいつでも大歓迎です。わたくしの心は満たされました」
妙にベタ褒めだ。
いったい何を言ってるのかと思い、愛華に振り向いた俺が見た物は!




