捕虜アルゲニス
前回のあらすじ
マルガフに続いてセアトという女宇宙人に襲われた佑矢。
嶺奈と歩美が駆けつけたことにより何とか撃破に成功し、現実世界に戻ってくるものの……
「……ん、あれ? ここは……」
目を覚ました俺が見たのは見慣れた天井――つまり俺の部屋だ。
嶺奈ん家にいたはずだが、誰かが運んでくれたみたいだな。
ガラッ
「おや、目が覚めたようですね」
押入れから愛華が顔を覗かせる。
嶺奈と歩美が無事なのは分かってるが、愛華も無事でよかった。
「さっそくですが、コアルームに来ていただけますか? 先ほどの戦闘で捕らえた捕虜をお見せしたいと思いますので。嶺奈さんと歩美さんも既に集まっています」
「捕虜?」
よく分からんが、愛華の方でも戦闘が行われたらしいな。
詳しい話はコアルームで聞くことにしよう。
――と、ベッドから這い出たが……
「……佑矢さん、さすがに下着姿で捕虜の前に出るのはいかがなものかと……」
「うお!?」
いつの間にか服が脱がされてやんの!
危ねぇ危ねぇ、このまま行ったら歩美の怒りを受ける羽目になるところだったぜ。
急いで服を着てコアルームへと入る。
すると校長やアルタおじさんの前で縛られる男が目に止まった。
全身を黒タイツで包んだような格好のソイツは一瞬俺を見たが、すぐに視線を逸らした後は黙ったまま動かない。
「冴木くん、無事でよかった」
条件反射で校長もご無事で――と言おうとしたところで止めた。
元魔王が簡単にくたばる訳ないだろうし。
「はい、嶺奈と歩美に助けられましたんで。――それでコイツは何者なんですか?」
「既に想像はつくだろうが、彼はマルガフやセアトの仲間だそうだ」
「――ですよねぇ」
案の定マルガフの仲間で、先の二人に続いて偵察に訪れたらしい。
そしてコイツが襲撃したのは、嶺奈の父さんであるアルタおじさんだった。
「校長がいてくれたお陰だよ。僕一人だったら危なかっただろうね」
なるほど、元魔王が一緒ならこれほど心強いことはないな。
「オイラもいるぜ、兄貴!」
「――って、クマゴロウ!」
腕に包帯を巻いて痛々しく横たわってた男児――クマゴロウがムクリと起き上がった。
「ちょ、お前大丈夫なのか!?」
「オイラは平気でぃ! ――って言いたいところだけど、このアルゲニスって奴はマグロフって奴より強かったんだ。元魔王がいなきゃヤバかったかもしれねぇ」
……なぜか唐突に腹が減ってきたが、マルガフよりこの変態〇面みたいな奴の方が強いらしい。
マルガフが消える間際に言ってた通りだな。
「ねぇねぇ、佑が目を覚ましたんだし、早いとこ尋問しようよ」
「賛成です。立て続けに襲われたとあっては、早く対処しないと手遅れになってしまいますよ?」
それは俺も賛成だ。
この様子だと近いうちにまた誰かやって来るんじゃないかと思う。
「クックックックッ……」
ん? コイツ、縛られてんのに笑ってやがるぞ――って思ってたら、俺よりも先に嶺奈が反応して、アルゲニスって奴に掴みかかった。
「ちょっと、何がおかしいのさ!?」
「フン、おかしいに決まってるだろ? 今さら騒いだところでもう遅いのだからな」
もう遅い? どういうことだ?
「分からんって顔をしてるな? ならば教えてやろう。今日の夜、惑星ウェガからの本隊がこの星に到着する」
「なんだと!?」
アルタおじさんが、アルゲニスの台詞に激しく動揺した。
「不味いぞ、本隊ということは艦隊を編成して来るってことだ。それを指揮する人物はほぼ限られてて、奴は――アルヴェラはアルゲニスよりも強い!」
この変態〇面よりも強いって!?
そりゃヤベェよ! だってクマゴロウが苦戦する相手以上の奴が来るってことだろ!?
「クックックッ、さすがに軍を抜けた貴様でも知っていたか。奴が来るのは太陽がポイント39-TKに重なった時だ。この場での時間で表すと、18時ジャストとなるな」
じゅ、18時だと?
それって――
「たたた大変! 18時ってあと30分しかないよ!?」
「マジかよ!」
今日香に言われて腕時計に視線をやれば17時35分だった。
って、もう30分切ってるじゃねぇか!
「こうしてはおれん、私は他の者達に協力を打診してくる!」
校長がコアルームを出て窓から飛び出していった。
協力っつっても誰に頼むつもりなんだろう。
宇宙人が攻めてくるって話を間に受ける奴なんて……
「佑矢さん、おそらく西条さん達に打診するつもりだと思われます」
「ああ、アイツらか!」
なぜかこの辺りには人外が多いからな。
親友の智樹ですら狼男だったし。
「よし、たったら俺達も準備しようぜ!」
「準備と言われましても何をするおつもりで?」
「んなもん……」
「……何かないのか?」
「ダンジョンの罠を増やしてもダンジョンに誘い込まなければ意味はありませんよ?」
「ヴ……」
そういや俺ってダンジョンマスターだったな……。
くそぅ、なんて使えない奴なんだ、俺!
「せ、せめて武器だけでも……」
「ミスリルソードくらいなら召喚できますが、剣の腕がど素人な佑矢さんではあまり効果は見込めません」
「いや、無いよりマシだし……」
こんなことならせめて剣道でもやってりゃよかった。
ほんと今さらだが。
「ところで、佑矢さんのご両親には何て説明しましょう?」
「ああ、それなぁ」
素直に宇宙人のことを話すしかないんだが、そもそも信じてくれるかどうか……。
「宇宙人なんかどうでもいいから宿題やれとか言われそうな――」
「なんだ、そんな事を気にしてるのか」
「え?」
突然父ちゃんの声が――って
「父ちゃん!? それに母ちゃんも!」
「佑矢、心配しなくても事情は把握してるわ。お母さん――これでも異世界じゃベテラン冒険者だったんだから」
「はいぃぃぃ!?」
母ちゃんが異世界人!?
マジで初耳なんですけど!
「一応言っとくが、父さんは普通の人間だからな?」
「んなもん見りゃわかるわ!」
毎回毎回プロレス技で母ちゃんにやられてるのも納得だわ。
というか母ちゃんが異世界人ってのは、この家に異世界から魔力が流れ込んでるのに深く関わってそうだが……。
「佑兄ちゃん! 時間が!」
「何!?」
どうやら18時を迎えてしまったらしい。
ろくな対策も立てられてないままで大丈夫なのか?
ドゴォォォン! ドドドドドォォォ!
「この爆音は!」
慌ててコアルームから飛び出すと、窓から身を乗り出して上空を見る。
するとゴマ粒みたいな無数の飛行物体が空一面を埋め尽くしていた。
いや、正確にはゴマ粒に見えるといった方がただしい。
これがアルゲニスの言う本隊なんだろう。
「佑くんあれ!」
「あれって――校長!?」
明日香姉が指した先には、宇宙人の艦隊を撃破し続けている校長の姿があった。
更にはその周辺でちょこまかと動き回っている奴も見えるが、恐らくは智樹達だろう。
あ、あのデカイのは武悲山だな。
「あの変態な人も頑張ってるみたい」
今日香の言う変態とは西条のことだ。
その西条とは別に宍戸まで参戦してるようだ。
それでもまだまだ数はある。
とてもじゃないが、校長含めた5人だけじゃ対処しきれないだろう。
ピンポーン♪
「は?」
誰だよ、この非常時にやって来た奴は!
ドガッ!
「な!?」
おいおい、誰だよこの非常時に家のドア蹴破った奴ぁ!
まさか火事場泥棒じゃないよな!?
ガチャ!
「ここか、アルゲニスがいるのは」
「は?」
な、なんだコイツ?
すんげぇ硬そうな鎧を着た女が入ってきたぞ?
それこそファンタジーな世界にあるフルプレートってやつにそっくりだ。
それにコイツ、今アルゲニスって言ったような……
「ここだアルヴェラ!」
コアルームでアルゲニスが叫んだ。
そういや捕虜がいたのを忘れてた! このままじゃアルゲニスを解放され――
ザシュ!
「グボッ!?」
「「「え!?」」」
てっきりアルゲニスの仲間が来たんだ思ってたら、いきなり剣で斬り降ろしたぞ!?
「フン、たかが地球人に拘束されるような雑魚に用はない」
「くそ……アル……ヴェ……ラ」
アルゲニスは恨めしそうな視線を女に向けながら、そのまま事切れた。
けど今アルヴェラって言ったような……
「気を付けろ佑矢! ソイツがアルヴェラだ!」
「コイツがぁ!?」
アルタおじさんが教えてくれた。
敵の大将がいきなり俺ん家に来やがった!
「退きなさい佑矢!」
「オイラもいくぜ!」
俺を掴んだ母ちゃんが強引に後ろへと下げると、そのままアルヴェラに向けて剣を突き出した。
反対側からはクマゴロウが迫り、アルゲニスを挟みこんだ。
「フン、くだらん」
バシッ! ガスッ!
「母ちゃん! クマゴロウ!」
母ちゃんはともかくクマゴロウが片手で弾かれた!
「母ちゃん!?」
「コイツ……予想以上に強いわ……」
「す、すまねぇ兄貴……。オイラじゃとても歯が立たねぇ……」
「クマゴロウ……」
こ、こんな奴に勝てっていうのか?
「嶺奈、重力操作で押さえつけるんだ!」
「分かった!」
「わたくし達もいきますよ」
「分かってます!」
二人が倒されてから、アルタおじさんを中心に愛華達が挑む。
嶺奈の重力操作を行ってる間にアルタおじさんのビームガンと愛華の魔法に加え歩美の忍術が奴へと撃ち込んでいくが……
「フハハハ! どうした、もしやアルゲニスごときを捕縛した程度で勝った気でいたというのか? だとしたらおめでたいな。アルゲニスなど私の足元にも及ばん!」
だけどコイツ――アルヴェラは予想以上に強く、まるでダメージを受けてる様子はねぇ!
「そんな、私の忍術が効かない!?」
「わたくしの魔法もです。これは少々不味いですね……」
「くっ、やはり無理か……」
……悔しいがアルヴェラの言ってることは事実だ。
嶺奈は言葉を失い、他3人は戦意喪失が気味……。
明日香姉は震える今日香を庇ってて父ちゃんは……うん、母ちゃんを介抱してるから放っておこう。
せめてコイツをダンジョンに――
――あれ? そういやコアルームってダンジョンに含まれるよな?
俺は透かさず愛華に駆け寄り、アルヴェラに聴こえないように耳打ちした。
「愛華、奴をうまく罠に掛ければ何とかなるんじゃないか?」
「佑矢さん、残念ですがそれは……」
え? 残念って……
「フハハハハ! おい小僧、コソコソと話したところで私の耳は誤魔化せんぞ?」
「んげっ!」
まさかの筒抜け!?
「ついでに教えといてやろう。このダンジョンとやらの罠は私が無力化してやった」
「はぁ!?」
「少々厄介だったのでな、出る杭は打つのが当然だろう?」
くそ、打つ手なしかよ……。
次回で最終回となります




