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閑話:ダンジョンに挑む男達

 突然だが自己紹介をするぜ。

 俺はちょいと名の知れた窃盗団のリーダーをやってる盗井友増(ぬすいともぞう)ってもんだ。


「ちなみに(とす)は35で――」

「現在彼女募集中ッス」


 ダァァァ、もう!


「お前ら、余計なナレーションを入れんじゃねぇ!」

「「イエッサー!」」


 ったくもう……。


 ……コホン。

 今の二人は俺の部下――というより仲間と言った方がいいか。

 なんせ窃盗団は俺達三人のみだからな。

 さっきも言ったが俺がリーダーで、背の高い言増(ごんぞう)と小柄な夕増(ゆうぞう)で【黒翼(こくよく)の裁き】という名の窃盗団を結成したんだ。

 結成当初は100人はいた団員だが、今では俺ら三人のみ。

 つまり俺達はエリート中のエリートってこった。


「アニギ、嘘はいけねぇズラ。――本当は某掲示板(けいずばん)で団員を募集(ぼすう)したんだけんど、だぁれも集まらなかったズラよ」

「中二病全開のネーミングが火を吹いた結果ッス」


 ダァァァァァァ、もう!


「少しくらい格好よく決めさせろ。だいたい掲示板で募集したって集まるわけないのは分かってたぞ? アレはちょっとした余興だ」


(嘘だでな。あん時のアニギは真剣な顔してたズラ)

(嘘ッスね。集まらなくて、すんげ~ショック受けてたッス)


「それから夕増、中二病のことは指摘するな。アレは一時的な気の迷いだ」

「了解ッス」


 中二病ってやつはその名の通り病気だ。

 治ったと思ったら突然発症したりするから侮れない。

 まぁ、それはいいとして――


「よく聞けお前ら。俺達は過去を振り返らない。ただ目標に向かって突き進むのみよ」

「だども後ろぐらいは振り返っだ方がよかとよ」

「そうッスよ。そのせいで察に尾行されてるのに気付かなかったじゃないッスか」

「アレは仕方ないだろ!? 誰だって阪神タイ〇ースのユニホーム着てたら、どこにでもいるタイガ〇スファンだと思うじゃねぇか!」


 しかもご丁寧にカーネルサ〇ダースまで一緒になって歩いてたしな。

 そんなん尾行だとは思わんだろ普通。


 ……コホン。

 少々話が脱線したが、要するに俺達は凄腕の窃盗団だと認識してくれればいい。

 そんなエリートな俺達は隣の県で目立ち過ぎたってんで、こっちにやって来て一仕事しようってところなわけさ。


 ……決して逃げたわけじゃないからな?


 さぁ、そんなわけで早速仕事だぜ。

 今回のターゲットは、土日は家族全員が居なくなるという事前情報を元に決定した一軒家だ。

 今ごろ家族で旅行にでも出掛けてるんだろうが……ヘッヘッヘッ、帰ってきたら御愁傷様ってやつだ。


 キキィ……


「アニギ、トラックを家の前に止めて大丈夫だでか?」

「こんくらい問題ねぇよ」


 どうせ近所の連中も、どこかの業者が何かやってるな――ぐらいにしか見やがらねぇ。

 要は堂々としてりゃいいんだよ。


「おっしお前ら、早いとこ金目の物を探すぞ」


 予め用意した合鍵を使って堂々とこんにちはだ。

 へへ、チョロいチョロい!


「ア、アニキ、そんなに急いだら危ないッスよ!」

「だでぇ。もすかすたら罠さ仕掛けてるがもしれんがな」

「あん?」


 何言ってやがんだコイツら? 普通の民家に罠だぁ? ったく馬鹿馬鹿しい。


「忍者屋敷じゃあるまいし、罠なんて仕掛けてるわけが――『パカン!』――のわぁ!?」


 ドシーーーン!


「「アニキ(ギ)!」」

「――ってぇなチキショウ!」


 なんだって床が開きやがんだ!?

 しかも計ったように人一人が落っこちるスペースじゃあねぇか!


「だから言ったじゃないッスか。これは絶対罠ッスよ」

「っせい、罠なわけあるかぃ!」


 おおかた床下に収納できるスペースを作ってあったんだろ。

 なんで廊下のど真ん中にあるのかが分からねぇが。


「他にも有ったら厄介だ。慎重に進め」


 1メートル程の穴から這い上がり、他二人を先に行かせる。

 幸い――というか、落ちたのは俺一人というのが微妙に納得いかないが、床が開いたのはさっきの1ヵ所のみだった。


「よし、まずはリビングからだ」


 廊下を無事渡ったところで、俺が先頭になりリビングへと入――


 ガン!


「オッブゥ!」

「「アニキ(ギ)!」」


 くっそ~、なんだこのドア。ノブを回しても開かないじゃねぇか! おかけで顔面に直撃だ!


「クソゥ……もしかして引くのか?」


 ガチャガチャガチャ!


 く、ダメだ……、押しても引いても開けられねぇ。いったいどうなってやがる!?

 

「アニギ、オラにやらぜてぐんねぇか?」

「ああ? んじゃやってみろ」


 仕方ないので言増に任せてみる。

 俺でダメだったのが、コイツに代わったところでどうにかなるとは思えんが。


 ガラララ……


「開いたど?」

「ダハッ!」


 なんでノブのついたドアがスライドで開くんだよ!

 それにコイツもコイツだ。なぜそれをスライドさせようと思った!? まさか俺がおかしいのか!?


「ったく。――まぁいいさっさと漁るぞ」


 再度気をとりなおして貴重品を漁る。


 ジャーーーッ!


「ヒィィィィィィ!」

「「夕増!?」」


 台所を漁ってた夕増が、水の出る音と共に絶叫しやがった。


「水なんか出してどうしたんだよ?」

「ちちち、違うッス! 蛇口が俺に向かって放水してきたッスよ!」

「はぁ?」


 コイツはいったい何を言ってやがんだ?


「バカなこと言ってないで真面目に探せ!」

「へ、へぃ……」


 だいたい台所なんざ漁ってないで、もっとこう……テレビの下の棚とか、有りそうな場所を探せってぇの……。


 ヒュン! ヒュヒュヒュン!


「ヒィィィィィィ!」

「今度はなんだ?」


 夕増に続いて言増まで叫び出しやがった。

 これじゃあさすがに騒ぎ過ぎだ。


「ア、アニギィ、ゴミ箱がオラさ食おうとしてきたズラ!」

「は?」


 切迫した声に振り向くと、ゴミ箱を頭から被ってる言増がアタフタしていた。

 まさかゴミ箱に襲われたとでも言うんじゃねぇだろうな?

 だいたいゴミ箱なんざ漁るんじゃねぇ!


「ホラ、見てけれアニギ。頭からスッポリと食われがけたズラよ」

「汚ねぇ!」


 中に何が入ってたのか知らねぇが、言増の全身がベトついてやがる。

 コイツはゴミ箱に顔を突っ込んだのか?

 ったくドイツもコイツも……。


「お前ら、一旦落ち着け」


 あまりにも不甲斐ない二人に説教してやろうと、俺の前に整列させる。

 俺はソファーに腰掛け足を組み、沁々(しみじみ)と語り出す。


「いいかお前ら、誰にだって失敗はある。間違って蛇口を捻ったりゴミ箱に顔突っ込んだりする事もあるだろう。――けどな、それを怪奇現象のせいにするのはいただけない」

「で、でもアニキ――」

「最後まで聞け。なにも失敗するなと言ってんじゃないんだ、失敗を糧にしろと言ってんだよ。この際だからハッキリ言うが、お前らには真剣さというものが足りな――」


 ブスッ!




「んんんぎゃぁぁぁぁぁぁっっっ!!」

「「アニキ(ギ)!?」」


 慌ててソファーから飛び上がり、気付けばケツを押さえ込んで悶絶していた。

 なんなんだよチキショウ! ケツに何かが刺さったぞ!? このまま痔になったらどうしてくれんだ!


「ちょ、アニキ、さすがに声がデカいッスよ!」

「騒ぎ過ぎると目立つズラよ」

「わ~ってる!」


 クソッ、こうなりゃ一旦出直すしかねぇ。


「おい、急いでズラかるぞ」

「「イエッサー!」」


 やむ無く俺達は引き上げた。

 俺だけはケツを押さえながらな!



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「――ってわけでリベンジだ」


 昼間は失敗しちまったが、明日の朝までは無人のはず。

 まだ時間は残されているって事で、深夜に再来したわけだ。


「アニギィ、やめだ方がいいんでないかな」

「ああん?」

「確かこの辺りは夜な夜な狼男が出るって影で(ささや)かれてる地域ズラ」

「狼男だぁ?」

「他にも獣の耳を生やした娘や、屋根の上を走るくノ一どか目撃されでたズラよ」


 ハッ、んなもん居てたまるか。

 仮に居たとしたら、取っ捕まえて売っ(ぱら)うまでよ。


「それだけじゃないッスよ。この地域にある遊園地のオバケ屋敷には、喋る非常灯が有るって噂ッス」


 アホ抜かせ! んなもんアトラクションの一つだろうが。

 斬新なアイデアだとは思うがな。


「とにかく、この家から貴金属を頂くのは決定事項だ。今更中止はない」 


 ガチャ……


 昼間と違い、夜の物音は目立ちやすい。

 よってドア一つにしても慎重に開ける必要があるため、なるべく音を立てずに開く。


 カチャン……


 よし、玄関への侵入は成功だ。

 いまだ不安がってる二人を尻目に、俺が先頭で廊下に上が――


 ゴッ!


「ムググググ!」


 クソッ! 外靴を脱ごうとしたら接着剤のようなものに足を取られ、思いっきり床に顔面を強打した。

 辛うじて口を塞いだことで不審には思われないだろう。


「アニギ、どうじたズラ?」

「コントやってる場合じゃないッスよ」

「るせぇ」


 コントやりたくてコケたわけじゃねぇ!

 靴の裏に接着剤が――


「あれ? 何も付いてない……だと?」


 おかしい、確かにベットリとした接着剤が付着したと思ったんだが……。

 まぁいい、恐らく気のせいだったんだろう。

 そう片付け、慎重に足を乗せるが――




 パフッ♪


「「「っ!?」」」


 ななななんだ今のは! 何の音だ!?

 キョロキョロと見渡すが周囲に音源となるようなものは何もない。


「ちょ、アニキ、なんつ~可愛らしいすかしっぺをかますんスか」

「だで。顔に似合わず大胆ズラ」

「お、お前ら……」


 今すぐにでもブン殴ってやりたいが、状況が状況なだけにグッと堪える。

 後で覚えとけよバカ共が!

 時間が惜しいんでヒソヒソ声で二人に注意してやる。


「恐らく防犯用の音が出る床なんだろ。こういうのは気にしたら負けだ。このままリビングへ行くぞ」

「「イエッサ~」」


 その後も一歩進むたびに色んな音が飛び出してくる。


 ボヨ~ン♪

 テロ~ン♪

 ガコッ♪

 元気ですか~!

 シュィィィン♪

 タタタン♪

 キュイン♪

 テレレレ~レッテ~♪

 バシュゥゥゥ♪


 歩くだけで凄まじいく神経をすり減らしてくるこの仕掛けを考えた奴は称賛する。

 いくら俺らが気にしないようにしても、夜にこれだけの音をバラまいたら周囲の住民が気にかける可能性が出てくる。


「あまり時間をかけるのは得策じゃない。()()()()()()()ひたすら集中しろ、いいな?」

「「イエッサ~」」


 ガチャ……


 言増と夕増に別の部屋を漁るよう言い付けると、リベンジのドアを開けてリベンジ開始だ。

 昼間はスライドして開けたドアが普通のに戻ってるようだが、もうそんなものは気にしない。

 そういう事もあるんだと自分に言い聞かせ、貴金属の類いをかき集めていく。


 ガタガタガタ!


 無視だ無視。

 額縁が動いたからってなんだってんだ。


 パッ!


「キャーーーーーッ!」


 無視だ無視。

 突然テレビが点いたからってなんだってんだ。


「助けてぇぇぇ……」


 無視だ無視。

 なぜかテレビから女子高生が飛び出してきたが、それがなんだってんだ。


「フフフフフ……」


 無視だ無視。

 テレビから出てきた何かが背中にまとわりついたが、それがなんだってんだ。


 プルルル! プルルル!

 カチャ……


『私……メリーさん。今……貴方の後ろに居るの……』


 あ~はいはい御苦労さん。

 背中に張り付いた奴の正体が分かって清々しいぜ。


「アニギ、()()()()()()()()()()を持ってきたズラ」

「同じくッス」


 見るとやけに手荷物の少ない二人が戻ってきていた。

 通帳か小切手でも見つけたか?


「よし、とんずらするぞ!」

「「イエッサー!」」


 民家から出て車でゴーよ。

 これだよこれ。

 この脱出した瞬間が最高に心地いいぜ!

 今回は妙な体験をしちまったが、今後のことを考えりゃいい経験だろ。

 結局終わってみれば俺らの大勝利だ。

 ハッ、楽勝楽勝!




「――という夢を見たのか?」

「そうみたいです……」


 10分後、なぜか俺らは()()()()()()していた。

 そう、自らの意思で来てしまったんだ!


「――で、何のために盗みに入ったんだ?」

「分かんねぇズラ……」


 そりゃそうだ。

 キッチリ成功していて自ら放棄するのは理解不能だろう。

 取り調べてる察も困惑気味だ。


「――んじゃ午後10時40分……逮捕ね」

「ウッス……」


 いったいどこで間違ったんだ?

 ……そうだ、あの民家に入った時、既に俺らはおかしかったんだ!

 それならあの怪奇現象も説明がつく。

 クソッ、これまでかよ……。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



「あれ? コンフュージョンパウダーの箱が無くなってる……。愛華、持ってったか?」

「わたくしは持っていってません。()()()が持ってったのでは?」

「今日香か明日香姉か? まぁ使わないからいいか」


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