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今日香と明日香姉の正体が!

 怪しさ満天の今日香を探るため、ミーネに尾行するよう頼んだ。

 俺が尾行すると上手く誤魔化されそうな気がするしな。


「ププッ、中々楽しませてくれますね。これを動画配信できないのが残念です」


 一方愛華は部屋の隅でスマホゲームに熱中してる。

 つ~か動画配信って、ゲームのプレイ動画を配信したいのか? 別に好きにしろよと言いたいところだが、そんなに面白いものなのかちょっと気になるな。


「愛華、いったい何のゲームをやってんだ?」

「はい。実はこれ――おや、逃げられてしまいましたか」


 逃げられた? アクション系のゲームでもやってたんだろうか? よう分からん。


「今のうちに罠を増やしておきましょう。もしかしたら夜に現れるかもしれません」


 夜に? リアルタイムなイベントみたいなやつか?

 ますます分からんが愛華は楽しそうにしてるし、邪魔しないように昼寝でもしてるかな。

 座布団を枕にして横になると、すぐに睡魔が襲ってきた。




 ガチャ


「マスター、あの姉妹が話したいことがあると仰って――マスター?」


 んあ? 誰かが俺を呼んでいる。


「マスター」


 あ~悪い。

 なんか今は起きたくない。


「マスター!」


 すまんな。

 今起きるのは億劫(おっくう)なんだ。


「愛華さん、マスターが起きないのですが、どうしたらよいのでしょう?」

「協力するのは構いませんが、見返りとして頬擦りをさせていただきますよ?」

「くっ……やむを得ません。その条件をのみましょう」

「交渉成立です。では……」


 ん? 話し声が聴こえなくなったな?

 いったい何をするつもりだ?


「おやおやまぁまぁ、ここからだと露天風呂が丸見えですね」


 何だと!?


 ガバッ!


「そいつぁ一大事だ! おい愛華、いったいどこの露天風呂だ!?」


 これは由々しき事態だぞ!? 是非とも全容を明らかにしなければ!


「あそこです」

「どれどれ――って、なんだよ、爺さんしかいねぇじゃねぇか!」


 愛華が見下ろしてる先では、爺さん連中が湯船に浸かっていた。

 しかし、それだけじゃダメだ! 露天風呂と言えば混浴でなければならないのだ!


「おい愛華、爺ぃの尻なんざどうだっていいんだよ! 若い姉ちゃんはどこだ、若い姉ちゃんは! 俺の桃尻パラダイスはどこにあ――ハッ!?」


 気付けば愛華とミーネの二人に白い目で見られていた。


「祐矢さん、さすがにそれは……」

「最低ですわマスター……」


 なんてことだ。

 二人に悪印象を与えただけで、何も得るものがなかったじゃないか……。


「下に見えるのは男湯です。考えれば分かりそうな気もしますが。――それよりミーネが二人を連れて戻って来ましたよ」

「二人?」


 愛華の言う二人とは今日香と明日香姉のことだ。

 どういうわけかミーネの尾行は思いっきりバレてたらしく、二人によりそれは尾行とは言わない! と力説されたらしい。

 マジでどういう尾行をしたんだか……。


「わたくしは、二人の一歩後ろをキチンとついて行きましたわよ?」

「oh……」


 それは尾行とは言わんな……。

 ミーネはまだまだ人間社会の常識に馴染んでないって事を再認識させられた。


「それで、肝心の二人は?」

「それでしたら――「入るわよ祐君」


 ミーネがドアを指したのと同時に、明日香姉と今日香の二人がどこか緊張感のある雰囲気を漂わせて入ってくる。

 胡座(あぐら)をかいてた俺の前に座ると、突然明日香姉が土下座をしてきた。


「祐君、今まで黙っててごめんなさい!」

「ご、ごめんなさい!」

「あ、明日香姉!? それに今日香まで!」


 明日香姉に続いて今日香も土下座を開始。

 訳も分からず困惑した俺は、とりあえず顔を上げてくれと言って落ち着かせた。

 いや、俺の方が落ち着いてないのは理解してるけども。


「とにかく順をおって説明してくれ」

「ええ、実は――」

 

 幼少の頃から知ってる今日香と明日香姉。

 そんな二人の正体は、なんと妖弧(ようこ)なのだという。

 妖弧というのは狐の妖怪のことだ。

 間違ってもユウコさんとかヨウコさんとかの人名じゃないからな?


 ……コホン、話が脱線した。

 そんな妖弧の二人はある時、俺の住んでる家から魔力が溢れてるのを感知したらしい。

 原因は不明ながらも二人にとっては貴重なエネルギー源であるのは変わりなく、それを放置しとくのはあまりにも勿体無いという理由から、魔力を頂戴することにしたのだとか。


「ウチら――コホン、私達が生きてくには魔力が必要になる。自然に囲まれた場所なら魔力が集まりやすいから、大抵の妖弧は人里から離れて生活してるの。けれどあの家は都会にありながらも異常なほど魔力が溜まるらしく、私達が楽して生きていける環境が整っていた――だから5年前、あの家に住み着いたのよ」


 なるほどね、二人が家に住んでる理由は分かった。

 だがそうなるとおかしな点が出てくる。

 俺は()()()()()()この二人を知っているんだ。

 もし5年前に住み着いたのなら、小学生――いや、幼稚園児の時にも二人の記憶があるのは明らかにおかしい。


「あ、それは記憶を改竄(かいざん)したからよ」

「記憶を改竄!?」


 詳しく聞けば、俺と両親の記憶を書き換えたんだとか。

 まさかそんな事が!? と思う気持ちも少なくないが、現に魔王やら吸血鬼やらインキュバスやらが居るんだから、その程度じゃ驚きはしない。


「つまり、俺の幼少時代の記憶は作られたものだと?」

「……そういうことになるわ」


 ふむ……どう反応したらいいのやら、逆に俺が困るくらいだ。

 ただ1つ言えるのは、不思議と怒りは沸いてこない。

 寧ろ我が家が賑やかでいいんじゃないかと思える。

 勝手に押入れに住み着いた愛華が居るんだし、今更出てけなんて言えない。


「ふむ。わたくしの顔に何か?」

「何でもない」


 愛華を横目で見ながら考える。

 二人が居て困ることは何もない。

 だったらこれまで通りで何も問題はないな。


「まぁあれだ。ちょっとだけ驚いたけど、これまで通りでいいんじゃないか? 別に悪さしてるわけじゃないんだしさ」

「許して……くれるの?」

「ああ。逆に二人が居なくなると寂しくなるしな。父ちゃんと母ちゃんも分かってくれるだろ」


 万が一分かってくれなかったら、俺が全力で庇えばいい。


「ありがとう祐君!」

「祐兄大好き!」


 二人が俺に抱きつくと、涙を流しながら礼を述べてくる。

 その様子を見てドアの隙間から覗いてる()()が悔し涙を流してるが、今はそういう場面じゃない。

 智樹と西条(おまえら)は引っ込んでろ。




 しばらく経つと二人は泣き止み、そのタイミングを見計らったように嶺奈達が戻ってきた。

 ――というか思いっきり覗いてたのは気付いてたんだが、ここは空気を読んで何も言わない事にしよう。


「良かったですね、お二人とも」

「うん。歩美さんもありがとう」

「ありがとう!」


 聞けば俺に正体を明かしたのは歩美からの助言によるものらしい。

 つまり、俺と愛華とミーネの三人だけが知らなかったんだと。

 なんて不公平な……。


「良かったじゃないか。僕としても今日香さんが遠くへ行ってしまうのは悲しい事さ」

「だなぁ。俺も明日香さんと離れちまうのは勘弁だぜ」


 そういやコイツら、妖狐だと知ってて好意を寄せてんだよな?

 なんつ~か人外カップルってやつ?

 普通こんなに人外が集中することはなさそうだし、俺としてもこの姉妹が望むんなら背中を押してやりたいが。


「で、明日香姉と今日香はどう思ってんの?」


 智樹と西条を指して聞いてみる。

 一瞬ビクッてなったコイツらだが、期待の眼差しで姉妹を見上げだした。


「う~ん、お互いにもっと知る必要があるかなぁ。でも普通の男の人と付き合うのはリスキーだし、理想といえば理想よね。それに智樹君の事は嫌いじゃないわよ?」

「マジッスか!? っしゃあ!」


 どつやら一歩前進したらしい。

 何より俺に対して工作する必要がなくなったのは大きいのかもな。

 ――さて、もう一組はどうだ?


「私は……よく分かんない。けど嫌いってわけでもないし、う~ん……どうしよ?」


 何故か俺の顔を見てくる今日香。

 そこで俺に聞かれても困るんだが……。


「まぁ……テキトーでいいんじゃね?」

「ちょっ、君! 僕のスイートなラブロマンスをテキトーに済まされては困る!」


 ってもなぁ。

 ハッキリいってどうでもいい事だし。


「じゃあどうしろってんだ?」

「もっとこう――僕が魅力的に見えるように持ち上げてくれたまえ!」


 コイツは俺に何を期待してんだか……。

 ま、しゃーない。

 せっかく誘ってくれたんだし、少しくらいは役に立ってやるか。


「今日香、西条はモテモテの色男だ。こんなにモテるやつはそうそういない。今のうちに確保しないと他の女に取られちまうぞ?」

「う~ん……」


 俺の横で薔薇をくわえて決めポーズをとる西条。

 しかし、効果はイマイチのようだ。


「早めに確保しないと血を吸われるぞ?」

「血ぃ吸うたろぅかぁ――って何を言わせるんだね君ぃ!」


 途中までノッてたじゃねぇか。


「今日香、西条は大金持ちだ。不自由な生活は強いられないし、将来は安泰だぞ?」

「う~ん……」


 俺の横で札束を見せびらかす西条。

 しかし、効果はイマイチのようだ。


「今なら札束で頬を叩いてもらえるぞ?」

「フッ、いくら欲しいのかね――って何をやらせるんだね君ぃ!」


 何だかんだ言ってお前もノリノリじゃねぇか。


「ならこうしよう。西条なら油揚げを好きなだけ食わせてくれるぞ?」

「お揚げ! そ、それは本当なの!?」


 すっげぇ食い付き。

 最初から油揚げで釣ればよかったんだな。


「え……も、勿論だとも! 毎日三食約束しようじゃないか!」

「じ、じゃあ考えてもいい……かな?」

「おおお、ありがとう今日香さん! 一生大切にするよぉぉぉ!」


 考えてもいいって言ったはずだが、西条の頭の中では更に前進しちまったらしい。

 これ以上は面倒だし、放置しとこう。


「ぬぁんとなんとぉ! ここで二組もの仮カップルが成立したでござる! ここは拙者も続かねばなりますまい――愛華殿ぉぉぉ!」

「今忙しいので邪魔しないでください」

「グハァァァ!」


 場の流れでいけると思ったのか、武悲山が華麗に玉砕する。

 愛華の視線はスマホに集中したままで、武悲山を見ようともしない。

 うん、本当に哀れなやつ。


「じゃあ祐君はどうなの?」

「はい?」


 これまでとは一転、明日香姉が俺に水を向けてきた。

 まさかこっちに振られるとは……。


「祐兄の好きな人って、嶺奈さんと歩美さんと愛華ちゃんの誰ぇ?」


 無邪気な今日香の視線が眩しい。

 本人は深く考えてないんだろうが、返答しだいによっちゃ大変なことに。

 さて、どうやって切り抜けよう……。


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