愛華の激しい嫉妬が!
前回のあらすじ
眷属になったのと同時に人化してしまったミーネ。
さすがに手に終えないと思った愛華は、明日香と今日香に協力を求める。
ダンマスである祐矢の眷属なら物珍しさもあり、両親に認められるのではと明日香は言うが……
その日の夜。
食卓についた俺は、おかずの唐揚げを口に運びながらミーネの存在を明らかにした。
もし家では飼えないと言われたら校長に頼るところだったけど、そんな心配はまったくなかったと言えよう。
「OKOK! 珍しいものなら大歓迎だぞ!」
「そうねぇ、何しろ祐矢の眷属だものね」
「それに食卓が賑やかになるのは良い事じゃないか、なぁ母さん?」
「ええ。是非とも家族として迎えたいわ」
白米を掻っ込みながらも、ウキウキとした様子でOKサインを出してくる父ちゃん。
この喜び具合はどこからくるのか分からないが、反応を見る限りは無問題だ。
一方の母ちゃんも、俺の眷属ならとニコニコ顔で言ってくれた。
もし魔物を召喚しても、喜んでペットにしそうな雰囲気を感じるな。
……だからって召喚はしないぞ? フリでもないからな?
「ででで? 肝心の猫娘はどこだ?」
「落ち着け父ちゃん。ミーネは今寝てるから、明日にでも紹介するよ」
つ~か猫娘って単語は別のキャラを連想するからやめていただきたい。
「そ、そうか……寝てるのなら仕方ない。なら添い寝くらいなら問題ないだろう? さっそく今日にでも――「あらあらあら~」――ギェェェェェェ! ま、待て母さん、これは知的好奇心からくるほんの出来心で――グェアゥォ……」
例の如く母ちゃんにシメられてやんの。
この暴走しがちの性格はなんとかならねぇのかな……。
「フフッ、ちょっと予想以上の反応だったけど、良かったわね祐君」
「まぁね」
最悪ファフニーさんが泊まりにきても大丈夫な気がするよ。
かえって人妻同士で話が合うかもな。
「私が一番にミーネと添い寝するーーっ!」
「ミーネが了承したらな」
ミーネは俺以外に素っ気ない感じがするから、簡単には頷かないかもしれない。
愛華に対しても同じような――あ、そういえば愛華は……
「…………」
横を見ると、一人黙々と箸を進めている。
いつもガツガツと頬張ってる顔が、物凄くつまらなさそうな仏面を晒していた。
「どうしたんだ愛華? いつもならもっと上手そうに食ってるのに」
「……なんでもありません。プィッ」
――と、口に出しつつ、そっぽを向きやがった。
家族がミーネばかり口にするから拗ねてんだろうな。
「ごちそうさまでした。――さぁ祐矢さん、早く行きますよ」
「ちょちょ、まだ食ってる最中!」
ああもぅ……よほどミーネを気に入ったらしいな愛華は。
俺を引っ張ってるのは、ベッドや家具を用意したことをミーネに話してお礼を言ってもらいたいんだろう。
「最中も最中もありません、早く済ませてください」
「いや、最中は関係ないだろ」
ササッ――バクッ!
「アーーーッ! 俺の唐揚げがぁぁぁ!」
残ってた唐揚げをサラダごと口に放りやがった!
「さぁ、これで思い残すことはないでしょう。早くミーネの元へ!」
「あるわ! めっちゃあるわ! 俺の唐揚げを返せ!」
「残念ですが、唐揚げ氏は帰りたくないと申しております」
「嘘つけ!」
結局愛華の馬鹿力に引っ張られ、ミーネが寝転んでるコアルームへ強制連行されると、部屋の隅で存在感をアピールしているミーネコハウスの前にやって来た。
コンコン!
「ミーネ、起きてますか?」
「なんですか騒々しい。わたくしは今忙しいのですから、用があるなら明日になさい」
愛華が声をかけると、当たり前のように塩対応をしてくる。
別に忙しいはずはないしな。
「むぅ……こうなったら仕方ありません。上下関係をハッキリとさせましょう!」
「待てぃ!」
腕捲りをしてミーネコハウスへ乗り込もうとした愛華を押し止める。
いくらミーネが生意気だからって暴力はいかん。
そんな事をしたらますます嫌われるだろうし、俺としても仲良くやってもらいたい。
「ここは俺に任せてとけ。ちゃんとミーネには言い聞かせるから」
「むぅ……ま、いいでしょう。一度だけチャンスを与えますので、キッチリとチャンスをものにしてください」
「与えるって……お前はお前でどうして上から目線なんだ……」
つっても愛華がミーネのために家具を用意したのは事実だし、そこはキチンと話す必要があるけどな。
コンコン!
「ミーネ、俺だ、祐矢だ」
「マスター!」
ガチャ!
「よくいらっしゃいました! マスター自ら来ていただけるなんて光栄です。ささ、どうぞ中へ!」
腕を掴まれて中に入れられようとする俺の背中に、愛華のジト目での視線が突き刺さる。
さっきと対応が全然違うし、その気持ちは分からんでもないが。
『さぁ祐矢さん、早く言ってやってください』
「なっ!?」
コイツ、直接脳内に!
『ただの念話です。そんなに驚かないでください』
無茶言うな! 急に使われたら驚くに決まってる!
「あの……マスター?」
「す、すまん。ちょっと考え事をしててな。それで一度話そうと思ったんだが、この部屋にある家具やミーネコハウスそのものは愛華が召喚したものだ。だから愛華に対してキチンと礼を言わないとダメだぞ?」
「うぅ~ん……」
アレ? 腕を組んですっげぇ考え込んでるのは何故なんだ?
「……マスターの命令とあらば、礼を述べるのも吝かではありませんが」
不本意ながらってか?
にしても理由が分からんし、愛華に聴こえないように耳打ちしてみた。
「なぁミーネ、もしかして愛華が嫌いなのか?」
「そ、そのような事は御座いません! 愛華さんに拾っていただかなければ捨て猫のままだったのですから嫌いなわけありません」
「じゃあ何で愛華に冷たいんだ?」
ズバリ聞く。
すったもんだやってても時間の無駄だし、この際ハッキリとさせたほうがいいだろう。
するとミーネは決心したのか、俯いてた顔を上げて……
「頬擦りが……」
ん? 頬擦り?
「同性による頬擦りは抵抗があります」
詳しく聞くと、愛華に発見された際に頬擦りをされたらしく、それが気に入らないんだという。
本来頬擦りとは結ばれた者同士で行うのが猫社会の常識で、行われる頻度としても少ないんだとか。
異性なら抵抗は少ない上に、マスターである俺の頬擦りなら大歓迎らしい。
「つまり、頬擦りされたくないからわざと冷たくしてるってことか?」
「そうなります。わたくしとしてもスキンシップが嫌いなわけではありませんが、頬擦りは別なのです」
それなら話は早い。
愛華には頬擦りをしないように注意させれば済むことだ。
さっそく後ろで不安そうに眺めてる愛華に教えてやろう。
「つまりカクカクシカジカって事だ」
「まさかそのような理由で避けられていたとは……」
原因は分かったんだ、後はもう大丈夫だろう。
「なんということでしょう、これでは頬擦りができないではないですか!」
……どうやらまだ問題残されてるらしい。
「いや……あのな、頬擦りを我慢すればミーネに嫌われたりしないんだぞ? なんで頬擦りに拘るんだ?」
「何を言ってるんですか祐矢さん! あのモフモフな毛並みを頬擦りで堪能できないなんて、人生の七割は損をしてますよ!?」
「そんなにか!?」
それじゃあ……それじゃあ今までの俺の人生はいったい……
「――って、なるわけないだろ」
ポコン!
「あた! ……ま、まぁ七割は少々盛り過ぎましたが、一割は損をしてると言えるでしょう」
「…………」
そう言われると気にはなるな――ってイカンイカン、ミーネは頬擦りに抵抗を持ってるんだ、それをしりながら頬擦りさせてもらおうと考えるのは邪道!
……いや、待てよ? 確かマスターである俺の頬擦りなら大歓迎って言ってたよな? ならお願いしたらさせてくれるかも!
「オッホン! あ、あ~ミーネ、ちょっといいか?」
「はい、なんで御座いましょう?」
「す、すす、すまないが、頬擦りをさせてもらうことは可能だろうか?」
「はい、わたくしは構いませんよ?」
なんと、アッサリOKもらっちゃった。
「じゃ、じゃあさ、猫形態でお願いしてもいいか?」
「猫形態――で、御座いますか?」
「ああ」
失礼ながら、今のミーネは猫耳カチューシャを付けた人間にしか見えない。
つまりこのまま頬擦りをしても、猫本来のモフモフは堪能できないのだ。
シュワァァァ……
「お? 光に包まれたミーネがどんどん縮んで猫の姿に!」
「ミャーミャ?」
「OKOK! もうバッチリだ!」
これでいいかと言われた気がしたんで、うんうんと頷いて抱き寄せる。
さぁ思いっきり堪能しようじゃないか!
スリスリスリスリ
「こ、これは……」
この直に伝わる毛先のなんと心地いいことか! 口元から漂うフルーツの匂いもアクセントとなり、俺の精神を揺さぶってくる!
こうしてみると、愛華がのめり込むのも分かる気がする。
「くぅぅぅ、もう耐えられません! わたくしも頬擦りを――」
「フシャーーーッ!」
バリバリバリバリ!
愛華が強引に頬擦りを迫ったため、強烈な引っ掻きを食らった。
それでも離さないのは感心すべきなのかどうか……。
「こ、この直に伝わる毛先のなんと心地いいことでしょう! 口元から漂うフルーツの匂いもアクセントとなり、わたくしの精神を揺さぶってきます! 顔がヒリヒリするのもまた良し! もう離しません!」
「フ、フニァァァァァァン!」
涙目でミーネから助けを求められてるが、残念ながら俺が愛華に勝てるわけはない。
洗礼だと思って、ミーネには我慢してもらおう。




