愛華が捨て猫を!
前回のあらすじ
山頂のデートスポットで膝を抱えてた女優――神野見留久を発見した祐矢達は、成り行きで彼女の抱える悩みを聞くことになった。
しかし、それは一般人ではどうしようもない事であり、力になれそうもない。
ならばどうしようと頭を悩ます祐矢達の元に別行動をとってた愛華達が現れ、愛華の案により神野見留久を助けることに成功するのであった。
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諸事情によりミーナの名前をミーネに変更しました。
「じゃあね~愛華!」
「ばいば~い!」
「はい皆様、また明日」
今日も一日終わりました。
祐矢さんは掃除当番とのことで先に学校を出たわけですが、どこか寄り道でもしましょうかね?
「ハイ、デシタラ、ビアードママニヨルコトヲオススメシマス」←裏声
――っという事で、ビアードママに寄るという結論に達しました。
このところ周囲の目を気にするあまりスイーツを手につけられてませんので、たまには良いでしょう。
なにせ以前食したのは3日も前なのですから。
さてさて、只今の所持金は――
――チッ、たった370円で?
今日買ったジュースと、昨日購入したフルーツゼリーの詰め合わせがつくづく悔やまれます……。
今日のところは見逃して差し上げましょう。
家に帰ってから冷蔵庫を漁れば何かしらの物にありつけ――
「ミャーー」
――はて? 今、何かの鳴き声が聴こえたような……
「ミャーー」
やはり聴こえます。
発生源の座標を確認――こちらですね!
「ミャーーー!」
「この箱ですね」
学校の裏手にある倉庫の横に、ダンボールが置かれてました。
声はここから聴こえてくるようです。
ガサゴソガサ……
「ミャーー!」
「こ、これは――」
なんということでしょう!
気付くとわたくしは、見いられるままソレを拾い上げてました!
つぶらな瞳でこちらを誘い、白と黒と時々オレンジが混じりあったコラボレーションの色合いが視線を釘付けにし、さらにはこのモッフモフな毛並みが全神経に伝わってきます!
スリスリスリ
「ウゥゥン♪ この質感は癖になり――「フニィーーー!」
バリバリバリバリ!
「あたたたた……」
ちょっとスキンシップがオーバーヒートしてしまったようです。
この子には少々キツかったのでしょう、顔を引っ掛かれてしましました。
頬擦りはお互いの距離がもっと縮まった時にしましょう。
む? 箱の底に何か書いてありますね。
え~と何々――
心優しいあなたへ。
もしこの子が気になったのでしたら、是非とも可愛がってあげてください。
親戚から譲られた子なのですが、この度引っ越しをするにあたって飼えなくなってしまいました。
そう、引っ越し先がペット禁止なのです。
しかし生活環境を考えればそこ以外になかったため、やむ無く手放す事にしました。
どうかミーネをよろしくお願いします。
「なるほど。貴女は捨て猫でしたか」
「ミャーー!」
しかしどうしましょう。
居候の身でありながら、勝手に連れ帰るのはよくありませんね。
実に残念ですが、心優しいお方を待っていただく以外に方法は――
「ミャーーー?」
「いえ、そのように首を傾げられてもですね、わたくしに決定権はないのですよ」
「ミャミャ……」
「くぅぅ……」
こ、これは強烈です。
ダンボールに戻したら露骨にしょんぼりしてしまいました。
このまま放置するのは良心が痛むというものです。
ああ~どうしたらよいのでしょう! このまま立ち去るなと、わたくしの中の何かと猫の視線が訴えてきます!
しかし……しかし……
「ミャー……」
「むぐぐぐぐ!」
ガサゴソガサ!
こ、これは保護です。
目の前で飢えそうになり、困り果てた猫を救済する必要があったのです。
それを見捨てるなんて言語道断です!
万が一バレた場合には、祐矢さんがこっそり飼ってた事にしましょう!
「ただいま戻りました」
「ミャーー!」
「――しまった!」
シュン!
「お帰り愛華ちゃ~ん。今猫の声が聴こえて――あれ?」
……フゥ、危ない危ない。
もう少しで今日香さんに見つかるところでしたので、瞬間移動でコアルームに転移してきました。
「とりあえずここで大人しくしててくださいね?」
「ミャーー♪」
ひとまずミーネを隅に置いて猫ハウスを作ることにしました。
幸いにしてこのダンジョンには豊富なDPが有りますのでね。
祐矢さんがダンジョンに興味が無いせいかDPは貯まる一方ですので、少しくらい消費してもバチは当たらないでしょう。
「ではさっそく召喚――」
と、思いましたが、普通の猫ハウスを召喚したところで面白味はありません。
何かしらのコンセプトが欲しいところですね。
あ、ならばこうしましょう。
ここはダンジョンなのですから、ダンジョン猫ハウスにしてしまえば良いのです! うんうん、我ながら冴えてますね。
コアルームの一部――そうですね……三畳間ほどのスペースにしときましょうか、そこをミーネの猫ハウスとして設定しましょう。
「えいっ!」
ジュワーーーン!
木製の壁で周囲を覆いました。
しかしこれだけだと殺風景なので、次に外装を整えていきましょう。
この愛らしいミーネの家だと、一目で分かるようにする必要がありますが……
ピコーーーン!
「ナイスなアイデアを思いつきました!」
ミーネの画像を掲げればいいではありませんか!
有りとあらゆる角度からミーネを撮影し、様々な画像へとクラスチェンジするのです!
「ミーネ、ちょっと宜しいですか?」
「モグモグ――ミャ?」
ん? ミーネの口回りに何か――
「ア"ーーーーーーッ! それは先日購入したばかりのフルーツゼリーの詰め合わせ!」
「ミャーー♪」
くぅぅ……美味しそうに食べてる手前、強引に奪い取るのは非常に憚られます。
しかし、ここは心を鬼にしてでも没収しなければ!
「――えいっ!」
「ミャッ!?」
奪還成功!
ミーネの手が届かないところに隠しておきましょう。
「フシャーーーッ!」
「そんな毛を逆立てて怒ってもダメです。これはミーネが食してはいけない物なのです。身体を壊してしまいますよ?」
「…………」
「な、なんですかその【お前が食い意地張ってるだけだろう】と言いたげな視線は? 決してわたくし個人の事情ではありませんよ? 絶対に違いますからね!?」
まったく、失礼なミーネです。
このわたくしがスイーツに目がないみたいじゃないですか。
「まぁ、そんな事はあっちに置いといて――さっそくミーネを撮影しましょう!」
「ミャーー?」
「あ、ミーネは何もしなくていいですよ? ダンジョン機能を使って有りとあらゆる角度から撮影できますからね」
欲を言えば、走ってるところや丸くなって寝てるところ等を撮影できれば最高でした。
しかし、そこはやはりダンジョンです。
我がダンジョンに掛かれば、ミーネの画像を元に予測シーンの加工を行えるのですからね、これほど優秀なダンジョンはそうそうありませんよ。
「フフン、完成です。これを猫ハウスの入口上部に掲げておけば、誰が見ても立派なミーネ専用猫ハウスの出来上がりです!」
ちゃんと窓も有りますし、外見はこれで良いでしょう。
しかし、これほど可愛いミーネのことです、外敵から護ってやらねば誘拐されかねません。
ここは一つトラップを多用して、侵入者対策を万全にせねば――
トントン
ん? 背中に何か――ああ、ミーネですね。
「なんですかミーネ? 今忙しいのですから遊んでほしいなら後にしてください」
……トントン
「はいはい、大人しく待っててくださいね」
……トントントントントントン
むぅ……これでは集中できません。
クルッ
「ミーネ、今大事な局面を――」
「た・だ・い・ま・愛華」
おおぅ、ミーネかと思ったら祐矢さんでしたか。
「お帰りなさい、祐矢さん」
「おう。さっそくだがこの猫について聞きたいんだが……」
「ミャーー♪」
なんとなんと、振り向いた先ではミーネが大人しく祐矢さんに抱えられてるじゃありませんか!
さっそくのピンチ、どのようにして切り抜けましょう……。
「……愛華?」
「ミャーー?」
こうなったら仕方ありません。
強引に押し通すことにしましょう!
「ゆ、祐矢さんはお忘れですか? え~~と、そ、その猫は貴方の眷属ですよ?」
「――という設定をたった今思い付いたと」
「ムグッ!」
うむむむむ……、まさか祐矢さんのくせに先回りする知恵を身に付けるとは……。
ですが押し通すことに決めた以上、上手く誘導してミーネを眷属として迎えてやらねばなりません。
「祐矢さんは物忘れが激しいようです。よ~~~く思い出してください。ダンボールに入れられたこの子が、寂しさを訴えて鳴いていた時の事を! さぁ、呼んであげてください、ミーネの名前を! そして迎え入れるのです!」
「……よく分からんが、この猫はミーネって名前なのか?」
しゃぁぁぁあ、作戦成功!
シュインシュインシュイン……
「うお? ね、猫が光りだしたぞ!?」
「はい。只今眷属化の儀式を行ってますので、儀式が終了すれば収まります」
「眷属化ぁ!?」
フフン、驚いてももう遅いですよ? もうキャンセルはできませんからね。
「あ、光が収まった。――いやいや、それよりも眷属化ってどういう事だ?」
「そのままの意味です。たった今、ミーネは祐矢さんの眷属になったのです」
「ホワァッ!?」
一連の流れでわたくしが行ったのは、ダンジョンマスターによる名付けの眷属化で、これを行ったことにより晴れてミーネは眷属となったのです。
「な、なぁ愛華、この猫また光ってるぞ?」
「はい?」
妙ですね? 眷属化が終了した以上、変化するところはないはず――などと思ってると、なんとビックリ、ミーネが人の形となっていくじゃありませんか!
「ふぅ……これで喋ることができますわね」
「「え!?」」
猫耳を生やしたミーネの爆誕です……。




