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俺達以外にも数々の受難が!

全階のあらすじ

 急遽ルート変更を余儀なくされた祐矢達は、博物館にて智樹の頭髪がアフロになるというアクシデントに遭遇しつつ、コンビニに立ち寄った。

 するとそこでも強盗が現れるというアクシデントが発生し、愛華とファフニーさんのコンビにより無事KO。

 ファミレスで昼食を堪能しつつ、校長の趣味を暴露するのであった。

 ファミレスでのやり取りで、校長の死刑が確定した。

 そりゃね? ファフニーさんを差し置いて愛華に夢中になるとか、制裁されても文句は言えないわけですよ。

 本人は青空の下でゴルフを堪能してることだろうが、精々今のうちに楽しんでてほしい。

 ホールアウト後に地獄が待ってるので。


「次はどこに向かっておるのじゃ?」

「次の目的地は遊園地という娯楽施設です。様々なアトラクションで遊べるので、楽しんでいただければ幸いです」


 愛華が言ったように、市電に揺られて進む先は遊園地。

 昨日に続いて今日も楽しんじゃおう的な考えは無きにしもあらずだが、恐らく楽しんでる余裕はないだろう。

 下手すると俺達が絶叫する羽目になるのは想像するに難しくないし、今のうちに釘を刺しとくか。


「あ~、ファフニーさん。くれぐれも魔法は無しでお願いします」

「堅いこと言うでない。妾とて羽目を外すのを楽しみにしてたのじゃ。なぁに、心配せんでも禁呪の類いは使用せんから安心いたせ」


 余計不安になるわ!

 禁呪とかフレーズ自体が恐ろしいことになってるし、それを抜きにしても魔法を目撃されるのはマズイ。


「せめて今日一日は禁止という方向で……」

「そうは言うてものぅ、今日一日しかこっちには居らんしの。まぁよいではないか、よいではないか♪」


 よいではないか♪ って、どこの悪代官だよ……。


 \間もなく~、〇〇遊園地前~!/


 お? もうすぐか。

 こうなりゃマジで愛華に頼むしかない。




「おお~、なんという多さじゃ! 人塵(ひとごみ)と言うだけあって、人がゴミのようじゃな!」


 到着早々、出た言葉がそれですか……。

 ついでに言うと人塵じゃなくて人混みな。


「はぐれると大変ですので、手を繋いで行きましょう」

「うむ。宜しく頼むぞ」


 端から見れば姉妹に見えるであろう光景が、実は人妻を案内してるダンジョンコアだとは誰も想像つかないだろうなぁ。


「ほら祐君、ボサッとしてると離されちゃうわよ?」

「ヤベッ」


 明日香姉ちゃんに背中を押され、愛華達を追って人混みを掻き分ける。

 俺がはぐれたんじゃ笑えねぇ。


「せっかくですからファフニーさんに決めていただきましょう。どれで遊びますか?」

「ふむ、そうじゃのぅ……」


 あちこちに出現してる長蛇の列を眺めてキョロキョロとしてると、1ヶ所の列の先に目が止まる。


「――アレにするぞ!」


 ファフニーさんが指した先を目で追っていくと、たどり着いた先にあったものは!




「アレ、風船配ってるだけだよな?」

「でもファフニーさんが選んだんだし……」


 嶺奈と顔を合わせて苦笑いする。

 まさか風船が欲しいがために並ぶとは思わなかったが、多分異世界には無いものなんだろうな。


 


「はいどうぞ~♪」

「おお~、このテカり具合がまた素晴らしい見た目じゃのう!」


 銀色でハートに型どった風船を受け取り、ファフニーさんは上機嫌だ。

 何故か俺達まで貰ったが手を離すと飛んでっちまうし、智樹の頭にでもくっ付けとこう。


「気に入ったぞ! コイツは特別に妾の使い魔にしてやろう――£ヰ*=‰#@」


 ヤベッ、また例のわけ分からん魔法を唱え出した!

 ファフニーさんが手にした風船が一瞬だけ淡く光るとすぐに収まる。

 使い魔とか言ってたはずだが、まさか!


「オッフ、お初にお目にかかります、我が(あるじ)よ」

「ゲッ!」


 予想以上に予想通りの展開になった!

 人前で声あげるのはマズイ。

 現に近くの男の子が不思議そうな視線を向けてきたじゃねぇか。

 さっそくピンチだ、何とか誤魔化さなきゃならねぇが――そうだ、アレでいこう!


「智樹、腹話術だ、バレバレの腹話術で誤魔化すしかない」

「腹話術~?」

「何でもいい、そのアフロをグォングォン揺らして声を出してるフリをするんだ。時間がねぇ、早くしろ」

「だ~もぅ分かったよ!」


 こっそり耳打ちして智樹に腹話術を依頼した。

 これで誤魔化せるといいんだが……。


「主よ、さっそくですが、我輩に名を授けてはくださらぬか?」

 グォングォン


「うむうむ、ういヤツよ。お前は妾が直々に名付けてやろうぞ」

「ははぁ……勿体無いお言葉で……」

 グォングォン


「う~む……コヤツの見た目はハート型じゃし……よし、決めたぞ。お前は今からハートと名乗るがよい!」

「オッフ、ありがたき幸せに御座います! このハート、ファフニー様に一生涯を捧げまする!」

 グォングォン


「「「おお~」」」


 パチパチパチパチ!


 智樹のナイスな腹話術により、周囲から拍手が巻き起こる。

 ただでさえアフロが目立ってて注目の的だし、さっさと移動しよう。


「ファフニーさん、この世界だと風船は喋らないんで、ハートには喋らせないように厳命してください」

「なんと、そうであったか。――ハートよ、聞いた通りじゃ。こっちの世界にいるうちは喋ってはならぬ――よいな?」


 コクリ


 銀色風船が黙って頷いてる。

 中々理性的なようで、大変助かります。


「ファフニーさん、次はどれで遊びますか?」

「ふむ、そうじゃのぅ――」


 歩美が観覧車に視線を送りつつ尋ねる。

 残念なことにファフニーさんはその意図には気付かずに、()()()()()をキョロキョロと見渡した。

 なんつ~か、歩美ドンマイってとこか。


「むむ? あの人だかりは何じゃ?」


 見ると確かに人だかりが出来てる場所があるな。

 何かのヒーローショウでもやってるのかと思ったが、それにしては子供は興味無さげに素通りしてくし、アクション的な声も聴こえてこない。

 ……ま、行ってみりゃ分かるだろ。




「残念ですが、僕が連れている女性達の方が魅力的だと思いますよ?」

「フフン、それはどうかなぁ? 俺の連れているレディ達は一味も二味も違うからね。君の見る目がないだけじゃないかな?」


 ん? 多数の女の子に囲まれた真ん中で、男2人が言い争ってるな。

 しかもどっかで見たことあるような……


「……言ってくれますね、宍戸(ししど)先輩。まるでこちらの女性達に魅力がないような言い方は受け入れ難い。寧ろ先輩の目が劣ってると見るべきでは?」

「むぐぐ……。ま、前々から思ってたが西条(さいじょう)君、君は少々思い上がってるようだ。そんな君に連れている彼女達は実に可哀想でならないよ」

「うっぐ……。そ、それを言うなら先輩に騙されている彼女達も同じでしょうね」

「「ぬぐぐぐぐぅぅ……」」


 あ~実にアホらしい。

 似た者同士の2人がこんなとこで喧嘩してらぁ。

 しかも互いに10人近くの女の子を連れてるとか、リア充気取ってんじゃねぇ!


「ファフニーさん、あそこにはバカ2人が居るだけで、何にも面白いものはありません。他へ行きましょう」

「そうなのか? じゃが、バカが()るなら見せ物としては丁度よい。――どれ、余興と思うて覗いてやるとしよう」


 余計乗り気にさせちまった……。


「お? おお~! こりゃ確かにバカコンビじゃ!」


 バカコンビ? どういう意味だ?


「ああ、今日香さんじゃありませんか! こんなところで会うとは奇遇ですね!」


 こっちに気付いた西条が両手上げて駆け寄ってきたと思ったら、ま~た今日香に引っ付きやがる。


「祐兄、この人暑苦しいんだけど、殴ってもいい?」

「それは構わんが、余計喜ぶと思うぞ」


 つ~か連れの女の子は放置してていいのかよ。


「ああ、愛華さんじゃありませんか! こんなところで会うとは奇遇ですね!」


 宍戸もこっちに気付いて駆け寄ってきた。

 コイツもコイツで、まるで西条の台詞をコピペしたように話しやがるな。


「申し訳ありませんが、只今客人をエスコートしてる最中ですので、貴方に構ってる余裕はありません」

「そ、そんな……」


 愛華がバッサリと切り捨てた。

 哀れ宍戸はヨロヨロとその場に崩れる。

 いや、本当に哀れだな。愛華からすれば、財布としての役割を果たさないなら必要ないって感じだろう。

 これは宍戸とのデートを終えた愛華が言ってたから間違いない。


「いやはや面白いものじゃ。こっちの世界にも、()()()()()()()()()()()()()るとはな」

「はい?」


 ……今、ヴァンパイアとインキュバスって聴こえたような気がするが、気のせいだよな?


「あの~、ファフニーさん。ヴァンパイアとインキュバスがいらっしゃると?」

「ホレ、そこに()るじゃろ――」


 あろうことか、ファフニーさんが指したのは……


「ヴァンパイアと――」

「ヒグッ!?」

「インキュバスがな」

「フグッ!?」


 ……え~と、西条がヴァンパイアで、宍戸がインキュバスだと(おっしゃ)るので?

 いやいやまさか……


「なぁ西条?」

「う……い、いや……す、すまないが、急用を思い出した!」

「「「西条く~ん!?」」」


 物凄い勢いで西条が走り去ってくと、その後を女の子達が追いかける。


「……宍戸先輩?」

「えっと……は、はは、ははは、はははは! ――失礼する!」

「「「宍戸さ~ん!?」」」


 宍戸も同じように走り去っていく。

 まさか本当にこの二人も人外なのかよ……。


「フハハハハ! 中々良い見せ物だったぞ。あの色ボケコンビをこっちの世界で見れるとは思わなんだ」


 いやもう、マジでこれ以上のアクシデントは勘弁だぜ……。


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