俺達に数々の受難が!!!
前回のあらすじ
待ち合わせ時間に校長が連れてきたのは、小学生と間違われそうなくらいのちっこい女の子であった。
そんなお子様のようなファフニーを押し付けた校長は、スタコラサッサとゴルフへGO。
祐矢達もファフニーを連れて電車に乗り込むが、いきなり方面を間違うというアクシデントが発生。
前途多難な一日の幕開けであった。
「――とまぁ、大変歴史的価値の有る展示品なのです」
「ほ~ぅ、博物館とは珍妙なものだな」
ドヤ顔でうんちくを語る愛華。
ルート変更の結果、最初の目的地である県立博物館へと到着したわけだが、当のファフニーさんは思いの外興味深げに展示品を見て回っている。
「祐兄アレ、でっかいカタツムリ~!」
「ああ、アンモナイトだな」
ここに展示されてる化石は、全て県内で発掘されたものらしい。
他にも恐竜の爪とかもあるが、本物かどうかは知らん。あんま興味ないしな。
「ほぅほぅ、変わった魔石ではないか。いくらで売っておるのじゃ?」
「非売品です」
「なんじゃつまらんのぅ。土産に買うてやろうかと思ったのじゃが……」
う~ん、そういう土産なら他の物で代用できそうだな。ビー玉でいいだろ。
「むむ? この世界には魔物の類いは居らぬと聞いたが、こんなところに居るではないか」
あろうことか恐竜の爪を指して言ってるぞ?
やっぱ本物だったようだ。
「爪のままではつまらぬ。――どれ、妾が本物を見せてやろうではないか」
「「「え?」」」
「ヱ♯∠∀⇔ヰ*£%」
本物を見せるってどういう意味だ?
――と言ってる間に、訳分からん言葉で唱えだしたぞ!? すんげ~嫌な予感がする!
「あ、愛華、早く引き剥がすんだ!」
「了解です――こちらへ……」
「こ、これこれ、動かすと狙いが定まらぬではないか」
この場合定まっちゃマズイんだよ!
「あ……」
いかにも失敗しました的なファフニーさんの台詞と共に、指先から光が飛んでいく。
しゅ~~~ ボフン!
「う、ゴホッゴホッ! いったい何だってんだ!?」
なんと、光が命中した先は智樹!
殺傷能力が無さそうなのはいいが、いったいどうなったのかと舞い上がった煙が晴れるのを待つ。
やがて見えてきたのは……
「ゲッ!」
「ちょっ、祐矢! ゲッって、いったい俺はどうなったんだ!?」
「い、いやぁ、どうもこうも……」
来れでもかというくらいの養殖アフロヘアーな智樹がそこに居た。
そりゃもう、両開きの入口で引っ掛かりそうな大きさで……。
「ほれ言わんこっちゃない。詠唱中に横槍を入れるのは危険じゃぞ?」
いや、そもそもアンタが原因なんだっつーの!
これ下手したら、恐竜が復活してたパターンじゃねぇか!
「ファフニーさん、この世界では魔法というものは認知されていません。公の場では使用しないよう注意してください」
「む? そういえばカーバインも言うとった気もするが……。うむ、よかろう。今後使用するのは控えるとするか」
愛華によるお説教を軽く受け流し、更にはここで【使わない】と言わないところに、この人の図太さを見た気がする。
こりゃこの先も苦労しそうだ……。
智樹の頭髪が展示物よりも注目を集め始めたところで、次の目的地へと移動する。
博物館を出るまでスタッフに迷惑そうな視線を投げ掛けられたが、アフロで天井の埃を掃き取ったのでそれで勘弁願いたい。
「さぁ、次はどんな楽しみが待っておるのかのぅ♪」
ルンルン気分で愛華についていくファフニーさん。
機嫌が良いのは別として、もうちょい自重してはくれんのだろうか。
「想像以上に破天荒かもしれません……」
「……だよねぇ。犠牲者が三沢だけなのが救いよ」
「救いじゃねぇよ、どうしてくれんだこの頭!」
頭痛を堪えるかのように歩美が額に手をあてると、嶺奈が肩を竦めて苦笑いする。
笑い話で済めば良い方だろうな。
それから智樹、すまんが散髪してる時間はないから、今日一日はアフロで頑張ってくれ。
「あ~、なんか喉乾いたな。――愛華、そこのコンビニ寄ってくれ」
「了解です」
物理的に入店出来ない智樹を外で待たせると、俺達はゾロゾロと店内になだれ込む。
ファフニーさんも愛華を追って――って、コラコラ、自動ドアで遊ばないように。
「こやつ、上手い具合に妾を避けよる。見事な身のこなしよ」
「それは自動で反応するので、生き物ではありません」
「なんと! これはまた珍妙な自動人形じゃのう!」
「……そうですね」
説明するのが面倒になったのか、愛華が無表情で肯定してる。
気持ちは分かるが匙を投げないでほしい。
「さ~て、何にすっか――「全員動くんじゃねぇ!」
声が聴こえたレジの方を見ると、覆面をした男が刃物を持って店員を脅していた。
更にもう一人の男が、刃物を店内に向け威嚇している。
こんな真っ昼間にコンビニ強盗かよ!
「ほ~ぅ、これはまたどういう見せ物じゃ?」
「いえ、見せ物ではなく、コンビニ強盗です」
いや愛華、そのまま言っても理解されないだろ……。
「おいクソガキ、動くなっつってんだろうが! そんなに死にてぇか!?」
「む? なんじゃ、人間の分際で妾に挑もうというのかや?」
「ああ? このガキ、脅しだと思って舐めてやがるな!」
男がファフニーさんに掴みかか――
ドゴォッ!
「グホォ!?」
愛華のボディブローが綺麗に炸裂!
哀れ男は、その場で倒れ込む。
忘れかけてたが、愛華も相当強かったっけな……。
「な、何もんだテメェ!?」
店員を脅してた男が刃物を向けてくる。
おいおい、そんな事してると……
「よぉし、今度は妾の番じゃな! ホレ」
グギィ!
「ギィイヤァァァァァァ!」
言わんこっちゃない……。
男の腕が曲がっちゃいけない方向に曲がってしまい、大変痛々しい。
「あ~すみません、警察呼んでもらえます?」
「はははははいぃぃぃぃぃぃ!」
腰を抜かしてた店員に通報してもらった10分後、警察が到着して一件落着。
犯人を連行する際に智樹が職務質問を受けるというアクシデントもあったが、無事解放されて動物園に到着した。
「ここでは動物に直接触れることが出来ますが、力加減には十分気をつけてください」
「分かっておるわ。その証拠にさっきの賊も生きておったであろう?」
うん、絶対に分かってないと思ったぜ。
つ~かあの強盗、終いにゃ泡吹いて気絶しちまったくらいにして。
恐らく死ぬほどの激痛を味わったに違いない。
「鶏さんだ~!」
「走ると危ないわよ~」
今日香が鶏を追いかけて行くと、その後を明日香姉ちゃんがついて回る。
うんうん、これが普通の光景だよな~。
それに引きかえ……
「なんじゃ、このタイガーは。根性がないのぅ……」
「グルゥゥゥ……」
ファフニーさんの闘志を感じ取ったのか、虎が檻隅っこで縮こまっている。
このままじゃ虎が可哀想だし、他へ移動しよう。
「ウサギが寂しがりなのは本当らしいですよ」
「そうなの? じゃあもっと構ってあげようかな~ホレホレ♪」
地面で寝そべってる黒ウサギを嶺奈がツンツンしてると、歩美は膝の上で白ウサギを撫でていた。
うんうん、中々良い絵じゃないか。
タイトルは【美女と兎と動物園】でどうよ?
「「「キキィィィ」」」
「ふむふむ。貢ぎ物とは良い心掛けじゃ」
一方こちらはファフニーさん。
猿達がバナナを持って挨拶に訪れるという奇妙な光景がそこにあった。
本能的に格の違いが分かるんだろう。
さしずめタイトルは【少女と猿と像物園】だな。
「なんじゃ、せっかくの貢ぎ物を返さねばならぬのか?」
「はい。ファフニーさんは気持ちだけお受け取りください」
というわけで、バナナは無事返却されました。
さすがに持って帰るわけにはいかないし。
「む? あの熊はどうしたのじゃ?」
「「「熊?」」」
見ると1匹の月の輪熊がぐったりとしてて、その側で係員が心配そうに見守っていた。
「スキャン完了。熊のステータスとしては生命力の最大値が低すぎるため、生まれつき病弱だったと思われます。可哀想ですが持って数日でしょう」
なんとも可哀想は話だが、こればっかりはどうしようもない。
「なんじゃ病気くらいでだらしない。そんなもの――こうしてくれる」
何を思ったのか、ファフニーさんが何やら唱えだした!?
「ちょ、いったい何を!?」
「なぁに、心配はいらん。数日経てば分かるじゃろう」
「いやいやいや!」
何をやったか分からない上に結果が出るまで数日待たされるとか、いったいどんな気分で待ちゃいいんだよ!
「祐矢さん、見当はつきますので、後で教えます」
愛華が言うなら大丈夫だろう。
しかしここにいると寿命が縮むような気分になる。
早いとこ動物園から出よう。
動物園を出た俺達が向かった先は、近くのファミレスだ。
昼を過ぎた辺りだし、時間的にはちょうど良い。
「――で、さっきのは何だったんだ?」
「はい、アレはですね――「ここで言ったら面白くなかろう」
気になるお題、ファフニーさんが唱えた魔法を聞こうと思ったんだが、ファフニーさん本人に阻止されてしまった。
「こういうのは何が起こるか分からないから面白いのじゃぞ?」
「何が起こるか分からないからこそ不安なんです!」
「せっかちじゃのう……」
場合によっては対処に動く必要が出てくる。
「それでしたらご安心を。少なくとも世間を騒がす事にはなりません」
「う~ん、愛華がそう言うなら……」
智樹の頭髪を見て世間とは何かを考えつつ、一応は納得することにした。
「ほほぅ……」
な、なんだ? 急にファフニーさんがニヤニヤしだしたぞ?
「祐矢よ、やけに愛華を信頼してるようじゃが、本命はこの娘か?」
「え?」
いやいやいや、急に何言い出すんたこの人!
本命がどうとか、今まで考えたこともない。
第一俺とは無縁だと思ってたし……
チラッ
「?」
視線を向けると首をコテンと傾けて見つめ返してくる愛華は、誰が見ても美少女だ。
もはや人間にしか見えない彼女が、他の男のものになるなんてのは見過ごせない。
そう考えると俺は愛華を――
グギッグギッ!
「ギィェェェェェェ!!」
「ぬぉっ、どうしたんじゃ!?」
誰かが俺の足を踏んづけてるぅぅぅって、よく見たら嶺奈と歩美か!
「ファフニーさん、祐の本命は他にいると思いますよ?」
「そうですね。きっとその人物は、風紀を乱さない素敵な女性だと思います」
「なんじゃ、そうなのかぇ。波長が合っとるようじゃし、良い組み合わだと思ったんじゃがのぅ」
堂々と会話に割り込んできた。
しっかし何だってまた足を踏む必要があったんだ?
「寧ろファフニーさんは注意した方がいいと思う。あの校長ったら愛華を凄く気に入ったみたいで、愛華の着てた衣装を買い漁ってるんだから!」
「そうですそうです。鼻の下を伸ばして風紀を乱しまくってました!」
「……その話、詳しく聞かせてもらおうか?」
やっべーーーっ! ファフニーさんの目が笑ってねぇ! あの校長、間違いなくヤキ入るな……。




