俺達に数々の受難が!!
前回のあらすじ
観光ルートの偵察のため現地を訪れた祐矢達。
なぜか祐矢ばかりトラブルに見舞われつつも、遊園地だけで1日の大半を費やしてしまった事を振り返り、修正案を話し合う。
果たして当日はどのような展開になるのか……
いよいよ当日がやってきた。
万全とは言えない厳しい状況の中、俺達は駅前にて校長が来るのを待つことに。
「明日香さ~~~ん」
「あ、智樹君……だっけ?」
「はい! 覚えててくれたんですね!? 自分感激ッス!」
俺の後ろで、感極まった智樹が嬉し涙を流している。
これは智樹への救済措置ってやつで、昨日は終始テンションが低かったコイツを哀れんだ俺が、明日香姉に頼んだんだ。
丁度予定はなかったらしく、即了承が得られたから連れてきたんだが……
「祐兄、本当に好きなだけ遊んでもいいの?」
「ああ。だけど向こうが飽きたら移動するからな?」
「うん。じゃあ飽きないように祈っとく!」
妹の方もついてきてしまったわけだ。
今日香にはくれぐれも面倒を起こさないように言ってあるから、大丈夫だと思いたい。
「もうすぐ校長の奥さんが来るんですよね? なんかちょっとだけワクワクします」
「だよね~。愛華にだけ甘いあの校長がどんな人を選んだのか、少しだけ興味あるよね~」
歩美と嶺奈は元魔王の奥さんに興味があるようだ。
ん? 歩美の格好は昨日と似たような感じだが、今日の嶺奈はデニムのミニスカだな。
これはこれで複眼なので、大変よろしゅう御座います。
「…………」
「うっ!?」
二人を見てたら後ろから刺すような視線を感じ、咄嗟に振り向く。
「どうしましたか? スケベ心丸出しの祐矢さん」
「ち、違う、何も考えちゃいないって(嘘だけど)!」
「どうでしょうね? 簡単に心を動かされる男性は信用ならないと、明日香さんが仰ってましたが?」
ぐぬぬぬ……明日香姉め、余計なことを。
愛華が不機嫌なままなのはマズイ。何とかしてご機嫌とりをせねば……。
「そ、そうだ愛華、今日は帰りにケーキを買って帰ろう。な?」
「……考えときます」
う~む、効果はいまいちのようだ。
あの愛華がスイーツに反応しないなんて、いったいどうしたんだ……。
「祐君祐君、ひょっとして愛華と喧嘩でもしたの?」
「あ、明日香姉ちゃん」
明日香姉が耳打ちしてきたんで、愛華が不機嫌だってことを伝えた。
「俺は喧嘩した覚えはないんだけどさ、昨日から不機嫌なんだよ……」
「そうなの? おかしいわねぇ、昨日あんなに楽しそうに初音〇クのコスプレをしてたのに。しかも自分から言ってきたのよ?」
楽しそうに? しかも自分から?
確か愛華は明日香姉に頼まれたとか言ってたはずだが……
「てっきり明日香姉が無理矢理着せたんだと思って、その場でため息ついちまったよ」
「……はぁ、なるほど。そういうこと」
ん? 明日香姉がため息ついて、眉間を押さえてるぞ?
いったいなんだってんだ?
「いい祐君? 愛華は祐君に褒めてほしかったの。今日もそうだけど、ちゃんと似合ってるって言ってあげないと」
「え……それってつまり……」
「そう。愛華は嫉妬してるのよ」
言われてみりゃ思い当たる節はある。
嶺奈や歩美に対抗してたのは、嫉妬してたからか……。
「今からでもいいから、ちゃんとフォローしてあげて」
「そうするよ。ありがと明日香姉ちゃん」
愛華が不機嫌な理由が分かった。
ここはキチンと話しておかないとな。
「すまん愛華、ちょっと来てくれ」
「はい?」
皆から離れた場所に移動すると、改めて愛華と向き合う。
……なんかアレだな。告白するみたいで緊張してくるが、意を決して口を開いた。
「ああ……その……なんだ」
「なんでしょう?」
「昨日も言おうと思ったんだけどな、その衣装……凄く似合ってるぞ」
「……ふむ、60点といったところでしょう」
「は?」
「祐矢さんと明日香さんの話は筒抜けです。わたくしの耳をそこらの人間と同じだと思わないことですね」
うぇ~~~、マジでか!
まさか聴かれてたとは思わなかったぜ。
なんだよこれ、めっちゃ恥ずかしいじゃねぇか!
「ですが、まぁ……わたくしを気にしていただけたと考えれば、悪い気はしません」
お? ちょっとデレてきたか?
「わたくしとしても、マスターである祐矢さんが他人のものになるのは見過ごせません。ご理解いただけましたか?」
「ああ、分かったよ」
だいぶ機嫌が良くなったな。
てっきりプリンを食っちまったのが原因かと思ったが、女の子らしい一面もあるんだと肝に命じておこう。
「それから――」
ん?
「わたくしのプリンを無断で食した件に関しては、後ほどキッチリと補填していただきますので、そのおつもりで」
「やっぱりそれも含んでんのかよ!」
帰りにケーキを買うことには変わりなさそうだな……。
機嫌が直って程なく、接近してくる一台の黒塗りワゴン車。
「確か校長の車だったはずだ」
「ではあの中に校長と奥様がいらっしゃるのですね」
俺達の目の前で停車したワゴンから、予想通り校長が姿を現す。
グラサンかけてるから一瞬別人に見えたが、あのうっすい頭は間違いようがない。
「やぁ、待たせたね諸君。さっそくだが妻を紹介させてもらうよ」
気取ったように助手席に回ると、中から手を引いて丁寧にエスコートしている。
タタン
細くて色白な可愛い足が見えた。
事前情報からぶっとい足のオバタリアンを想像してたが、全然違うのは確かだ。
バタン!
ドアを閉めることで全身が露になる。
徐々に視線を上に向けると、白いワンピースを着た小柄な美少女であることが判明!
また気性の荒さを象徴するかのように、真っ赤な髪をショートカットにした垢抜けない印象が――
「皆の衆、はじめましてじゃ。妾はコイツの妻をやっておるファフニーと申す。以後宜しく頼むぞ」
美少女でいて気品のある丁寧な挨拶。
だが見た目は小学生そのものやん!
「え、え~と……宜しくね、ファフニーさん」
「よ、宜しくお願いします」
「宜しく~!」
皆も思うところがあるのか、顔が引きつりながらそれぞれ自己紹介を済ませる。
ただ一人、今日香だけは何も感じなかったようだが。
いや、でもね? 見た目が本当にアレなんだよ。
もうマジで背伸びしてる小学生にしか見えないのが問題だ。
「なぁ祐矢、校長ってもしかして……」
「言うな……言わずとも分かる」
俺と智樹がヒソヒソ話を始める。
校長の個人的趣味に言及するつもりはないが、さすがに犯罪はいくない――いや、魔界だと法律の範囲内なのか?
いずれにしろ通報されても知らんぞってことで、俺達はノータッチだ。
「カーバインは一緒じゃないのかや?」
「ああ、すまないハニー。僕としても大変心苦しいのだが、立場上激務に追われる毎日なのだよ。キミのエスコートは彼らに任せてるから、安心したまえ!」
おいおい、完全にこっちに押し付ける勢いだな?
「――んじゃそういうことで、バイビー♪ さぁゴルフゴルフっと……」
激務とは無縁に見える爽やかな笑顔で、カーバインもとい校長は去っていった。
つ~か最後のゴルフってフレーズ聴こえてんぞ!
「では参りましょう」
「うむ。苦しゅうないぞ」
愛華が先導して、ファフニーさんを駅構内へと案内する。
最初に説明したのはここがどういう場所だとか、ルールやマナーに関してだ。
簡単に説明すると、さっそく移動開始だ。
「ほうほう。つまりキップというものを買って目的地に移動するのじゃな?」
「その通り。通貨はこちらをお使いください」
初めて目にする異世界の通貨に、ファフニーさんは掌でコロコロと転がし興味深げだ。
けれどすぐに飽きたのか、券売機へと投入する。
「むむ? 確か280円だと言うとったはずじゃが、下にある140というのは何じゃ?」
「あ、それは子供料金だよ。地域によって違うらしいけど、一般的には12歳以下の子供が利用する場合は安い料金で乗れるの」
「ほほぅ~~~」
他にも一々年齢の確認はされないから、見た目で子供っぽいやつは子供料金を選択する場合がある等を教えてあげると……
「えい!」
ポチッ!
「「「…………」」」
この奥さん、迷わず子供料金を選択したぞ?
いったい何歳なんだ?
「さ、行こうかの♪」
「あ、あのぅ……」
どうしようか迷ったが、俺が年齢について尋ねようとすると……
「フッ、今から妾は永遠の12歳じゃ」
「いや、そうじゃなく……」
「野暮なことは聞くでない。年齢は乙女の秘密じゃぞ♪」
確か校長って子供がいるって話を聞いたんだが、子持ちの乙女とは斬新だな。
「それよりもじゃ、もう電車とやらが来とるし早ぅ乗ろうぞ」
やべっ! 急がないと!
ファフニーさんが乗ったのを見て、駆け足で俺らも続く。
\ドアが閉まりま~す!/
全員が乗り終わると間もなく発車。
ここまでは順調だな。
「して妾達はどこへ向かっておるのじゃ?」
「あ、それはですね――ああっ!」
歩美が外を見て驚いてる。
いったい何があるのかと思いきや、外を見て俺も気が付いた。
「反対方向じゃねぇかぁぁぁ!」
おいおいやっちまったよ。
いきなりアクシデント発生じゃねぇか。
「? どうしたのじゃ?」
「あ、いやいや、こっちのことです……」
苦笑いで誤魔化したが、急いで作戦会議が必要だ。
「どどど、どうしましょう? 次の駅で戻るにしても、30分以上はロスしてしまいます」
「うはぁ……そりゃキツいよ~」
歩美が取り乱してオロオロすると、嶺奈は額に手を当てて天を仰ぐ。
正直そのタイムロスは痛い。
遊園地では開園と同時に即行動が重要だ。
これじゃあ完全に出遅れ確定だな……。
「ならよ、いっそのこと目的地を変更した方がよくね?」
「目的地をか?」
智樹の提案により急いで地図を広げる。
元々奥さんに見せるために用意したものだが、ありがたく使わせてもらおう。
「愛華、今向かってる方面の駅から、一番近い候補地はどこだ?」
「少々お待ち下さい――」
時間にして十数秒、瞑ってた目を開いた愛華が、最適の答えを導き出した。
「二つ目の駅を降りてから15分程度で博物館に着きます。さらに20分かけて動物園へ移動し、その後に近くの大型ショッピングセンターで昼食が望ましいでしょう」
凄ぇ……さすが愛華だぜ!
「昼食後、市電を利用して遊園地へ向かうと日が暮れるまで滞在し、ロープウェイで山頂を目指すと夜景を堪能してもらいます。再びロープウェイで戻り、商店街を見ながら帰宅――というのを推奨いたします」
「完璧だ!」
「「「うんうん!」」」
俺は元より他の面々も異論はないようだ。
これなら何とかなるだろう。




