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俺達が観光ルートの確保を!

前回のあらすじ

 校長室に呼ばれた祐矢達は、加速スキルを使ったことに関しての指摘を受けた。

 実は校長も普通の人間ではなく、魔界からやって来た元魔王なのだとか。

 そこで校長は、体よく現れた祐矢達に妻のエスコートをお願いするのだが……。

 校長による加齢なる――いや、華麗なる土下座を受け、俺達は対策を練ることにした。

 そんなわけで――はいはいっと、時間は放課後まですっ飛ばして、俺ん家のコアルーム。


 なぜここなのかって言うと、飛行型モンスターを飛ばしてそのモンスター視点から地上を眺めることが出来るからなんだ。

 これで大雑把に回るルートを決めようって魂胆な。

 ちなみに飛ばしてるのは、チャージクロウっていう見た目がカラスにそっくりなやつだ。


「面白~い! ねぇ、これってあたしには操作できないの?」

「無理ですね。支配下のモンスターを動かせるのは、わたくしか祐矢さんだけですので」

「ちぇ~」


 モニターの映像を見た嶺奈が、自分も動かしたいと愛華にすがり付く。

 だが無理だと言われて唇を尖らせた。

 いや、ゲームじゃないんだから……。


「そんなことより早いとこ決めようぜ。まずは女性陣の意見を聞きたいんだが」


 来るのは奧さんだからな。

 女性目線での意見は参考になるだろう。


「遊びに来るんだからさ、やっぱり遊園地は定番じゃない? あたしだったら一日中遊んでてもいいなぁ」


 定番といえば定番だな。

 でも校長の奧さんって飽きっぽい性格らしいし、一日中はマズイ気がする。

 つ~か、嶺奈が遊びたいだけなんじゃないか?


「私なら図書館ですね。地球のことを理解してもらうなら、効率的ですよ?」


 いやいや霧風さんよ、最初のうちは良いかもしれないが、すぐに飽きられてしまう可能性大だぞ?

 それに図書館で暴れるなんてことになれば、二度と利用できなくなりそうだ……。


「ほら、娯楽なんだし、もっと楽しい感じのがいいんじゃないか?」

「なら博物館ですね。珍しい物がいっぱいありますよ?」


 う~ん、図書館よりはマシか?

 なんつ~か、風紀委員長なだけあって真面目な回答だ。


「フフン、お二人とも分かってませんね。もっと目を輝かせてコレだ! ……というものを出さなければインパクトがありません」


 お? 愛華が自信あり気だな?

 これは期待できるかも。


「じゃあ愛華は何が良いと思うの?」

「そうですね。早く意見を聞かせてください」


 ややムッとした二人が愛華に視線を向ける。

 そこに俺の視線も加わると、わざとらしく咳払いをし、モニターを教鞭で叩いた。


「コホン……いいでしょう。――ズバリ、わたくしが提案するのは――」

「「「提案するのは?」」」

「コレです!」


 ビシッ!


「え~と何々? お口のスキマ、お埋めいたします。あなたの心にビアードママ――って、思いっきりケーキ屋じゃねぇか!」


 モニターに映されてたのは、モンスターが見下ろしたビアードママの看板だった。

 そりゃ軽食するだけならいいが、結局のところ愛華が行きたいだけなんだろう。


「経費で落ちるのですから遠慮はいりませんよ?」

「そういう問題じゃない」


 愛華の場合は本当に遠慮しなさそうだし、店に並んでるやつ全部平らげそうだよな。

 そのせいで宍戸(ししど)センパイ経由で大食い女王として一部では(ささや)かれてるらしいし、中にはギャル(さえ)とか呼んでるやつもいるとかいないとか。

 これ以上人間離れした噂は広まってほしくないんだがな……。


「とりあえずはその三つを入れとこう。――後はないか?」

「ちょっと祐、さっきからあたし達の意見ばっかりで、祐は何もあげてないじゃん」

「う……」


 嶺奈に痛いところを突かれた。

 俺の意見なんてそれこそ在り来たりなものしか出てきそうにないし、堂々とあげる程じゃないしなぁ……。


「ほ、ほら、司会進行役がいないとスムーズにいかないだろ?」

「冴木君、この少人数の話し合いで司会は不要では?」

「……ですよね~」


 はいはい、霧風さんの言う通りですね。

 つっても、俺があげるとすりゃゲーセンくらいしか思い付かない。


「よし、俺があげるのはゲーセンだ」




 言った瞬間、三人からため息が漏れる。


「多分言うんじゃないかな~とは思ってたけどね」

「ですね」

「祐矢さんですからね」


 軽くディスられてる!?

 そんなにダメかよ!


「他には何かないの?」

「動物園!」

「後は?」

「水族館!」

「他は?」

「展望台!」

「もう一声」

「メイド喫茶!」


 バチン!


「ッデェェ!」

「変態」


 いやいやいや、メイド喫茶くらいで変態だったら、世の中変態だらけやん!


「嶺奈、お前は分かってない。メイド喫茶は普通にお触り厳禁なんだぞ?」

「お触りOKなとこもあるんでしょ?」

「それは夜のお店だ。んなとこ連れてかねぇよ」


 そんなことしたら、俺が奧さんにシバかれるっつーの。


「あのぅ……冴木君って、メイド喫茶に行った事あるんですか?」

「……えっ……と、た、確か行ったことはなかったような気がするなぁ……ハハハハ」


 鋭い……さすが風紀委員鋭い……。

 でも軽蔑されたくないから黙っておこう。


「では何故候補に上がったのでしょう?」

「そそ、そりゃお前、行かなくたって噂くらいは聞くことあるだろう」


 くそ、愛華も鋭い!

 こうなりゃ腹いせに、学祭でのクラスの出し物はメイド喫茶にしてやる!


「もっと健全なのはないの?」


 決してメイド喫茶が不純なわけではないんだが……まぁいいや。


「だったら猫カフェならいいだろう?」

「うんうん、それなら良さそう! あたしも一度いってみたいと思ってたのよね~」


 実は俺も行ってみたかったんだよな。

 なんつ~か、癒しが欲しいっつ~かね。


「って嶺奈、さっきから俺ばっかりじゃねぇか!」

「ハハハハ! ご苦労ご苦労! でもだいぶ候補は上がったんじゃない?」


 確かに候補は揃った感があるな。

 後は――ん? なんだアレ?


「なぁ、モニターに映ってるアレって何だろうな?」

「何々?」

「ほら、あの屋根の上にいるやつ」

「アレは……何かのオブジェですか?」


 すっかり日が落ちた夜の街並みをチャージクロウが見下ろしてると、一軒の民家の屋上で毛むくじゃらな何かが夜空を見上げてるように見える。

 霧風はオブジェに見えたようだが、微妙に動いてるので飾りではなさそうだ。


「この高度だとよく見えませんね。もう少し接近させて音量もあげてみましょう」


 愛華の操作で更に高度を落としてみると、毛むくじゃらなソレは人間を一回り大きくして……狼の頭をして……尻尾の生えた……




「アオォォォォォォン!」

「「「狼男!?」」」


 俺と嶺奈と霧風がハモる。

 今……確かに遠吠えが聴こえたんだよな、この毛むくじゃらなやつから。


「ふむ、人狼(ウェアウルフ)ですか。まさかこちらの世界にも生息してるとは思いませんでした」


 そりゃ愛華の世界はモンスターがいるくらいだし、狼男の一人や二人はいてもおかしくないだろうが、こっちの世界じゃおとぎ話の中だけだ。




 いや、よく考えたら魔王やら宇宙人やらいる時点で、おとぎ話のレベルを越えてたな……。


「愛華、この場所はどこなんだ?」

「ここから歩いて30分程度の場所ですね。どうなさいますか?」


 さてどうしよう。

 俺としちゃあ2割の興味本意と、危険物排除が8割ってとこかな。


「行ってみよう。いざって時は愛華達に任せるよ。俺、この中で一番弱いだろうし……」


 だろうじゃなくて、間違いなく――だな。

 自分で言ってて悲しい……。


「そこは普通、俺が護ってやる! って言うべきところじゃない?」

「ハッタリでもいいのか? それならいくらでも言えるが、いざって時は加速スキルで逃げるからな?」


 よく考えりゃ加速スキルって便利だな。

 最初はいらね~とか思ってたが、要は使い方しだいか。

 今後もチンピラに絡まれた時なんかは重宝しそうだ。


「うっわ最低。自分だけ逃げるんだ」

「いや、ちゃんと嶺奈も連れて逃げるよ」

「そ、そう? ありがと……」

「わ、私もその……一緒に連れてってくれますか?」

「勿論霧風も一緒にな」

「(しゃあ!)」

「わたくしは危機が迫れば()()を出しますのでご安心を」


 ……愛華自身が強い上に、モンスターも召喚できるんだよな。

 うん、これなら安心だ。


 ――って、こんな事やってる場合じゃない。


「早いとこ行ってみよう」


 こうして狼男と思われるやつを間近で確認すべく、夜の街へと飛び出した。


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