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風紀委員長の正体が!

前回のあらすじ

 男子テニス部のキャプテン――宍戸保に誘われ放課後のデートに繰り出した愛華は、ゲーセンではイカサマ――ケーキ屋では無制限に食べまくるという煩悩を全開にしてしまう。

 結果宍戸は、スカスカになった財布を持って泣く泣く帰る羽目になったのである。

「冴木君、必要以上のスキンシップは控えてください。風紀が乱れます」

「え?」


 登校すると、俺の席にやって来た風紀委員長――霧風歩美(きりかぜあゆみ)に指摘される。

 別段風紀を乱した覚えはないんだが。


「いったい何のことだ?」

「惚けても無駄です。最近の貴方は、荒井さんと冴木愛華さんに挟まれて登校するという、プチハーレム野郎を演出してるそうじゃありませんか。これが黙っていられますか!」


 バン!


 机叩くほどじゃなかろうに……。

 それにプチハーレムって……、ただ一緒に登校してるだけだろうが。


「そんなもん、たまたま幼馴染みが女であり、たまたま従妹が同居するようになっただけで、別に演出でもなんでもないだろ。――なぁ、智樹も何か言ってやってくれ」

「いいや、お前は風紀を乱してるね。なんたって明日香さんと同居してるんだから、お前のポジションと代わりてぇよ」


 あっさりと親友に裏切られた。

 そういやコイツ、明日香姉ちゃんみたいな年上が好みだったっけな。


「ほらみなさい。やはり貴方は風紀を乱す諸悪の根元です。美少女二人を侍らせてるハーレム野郎です」


 いつの間にか諸悪の根元にレベルアップしていた。

 断言するが、例え俺がいなくなったとしても風紀は変わらんぞ?


「いつもいつも幼馴染みと従妹にデレデレして羨ま――じゃなかった、みっともないったらありゃしない! 少しは自覚してください!」


 え~? 説教されるほどかぁ?


「その意見――賛成で御座るぅ! 冴木殿はおとなしく愛華たんを差し出すで御座るよ!」

「キモデブは引っ込んでてください」

「グハァッ!」


 出てきて早々、武悲山(ぶひやま)が撃沈する。

 何しに来たんだコイツ……。


「……とにかく、今日からしばらく私が登下校を共にしますので、そのつもりで」

「はいぃ!?」


 メガネをクイッと持ち上げ、目を光らせる霧風。

 何故そうなるのか意味不明だ。

 だいたいにしてコイツと一緒に登下校するってことは、風紀委員長までハーレムに入ることにならないか? あ~いやいや、俺自身はハーレムのつもりはないんだけど。


「なんで一緒に?」

「これ以上冴木君に悪い虫がつかな――じゃなかった、冴木君が風紀を乱さないようにするためです」


 これ以上って、そんなに酷いのか?


「……お前はどう思う?」

「ああ、酷いね、酷すぎる。お前が明日香さんと同居できるなら、俺だって同居できてもいいじゃないかよぉぉ! まったく、世の中ってやつは……」


 ダメだコイツ……。

 智樹は別の世界に旅立ったようなので、しばらくそっとしとこう。


「つ~かさ、お前と一緒に登下校するのは風紀を乱すことにはならないのか?」

「なりません、風紀委員ですので」


 ……都合良すぎね?


「掃除当番なんかで時間がズレたら?」

「合わせます。もしくは他人に押しつけます」

「俺が補習を受ける羽目になったら?」

「一緒に補習を受けます」

「実は一緒に登下校したいだけだったり?」

「はい、そのと――おりなわけないじゃないですか。いい加減にしてください」


 だよなぁ……知ってた。

 で、その日の放課後、さっそく一緒の下校となったんだが……


「家メチャ近くない!?」

「はい、風紀委員ですので」


 驚いたことに霧風の家は、俺ん家から百メートルも離れてない至近距離だった。

 そういや登校するとき、背後から視線を感じることが多い気がしたが……まさかな?


「では冴木君、明日は七時半に登校を開始しますのでそのつもりで」

「マジかよ!?」


 七時半って、俺の起床時間じゃねぇか!

 そんなん無理ゲーもいいとこだ。


「マジかよ!? じゃありません。貴方の場合、いつも遅刻ギリギリに来るじゃありませんか。本来もっと余裕を持って行動するのを心掛けなくてはならないのです。そんなんだから、幼馴染みに起こされるという下らないイベントを引き起こすのですよ?」




「……なんで知ってんの?」

「! あ、貴方が教室でペラペラと喋ってたからです! ……コホン。と、とにかく、明日から私が起こしに行きますので心配無用です。ではさようなら」


 なんということか、明日から規則正しい生活を強いられそうだ……。




「ま、――侵入――か!」

「――貴女――では――」


 ん? 誰かが言い争ってる?

 つ~かうるさくて寝れねぇなぁ……って、まだ6時じゃねぇか。

 誰だよこんな朝っぱらから……。


「さては貴女――宇宙人ですね!? まさか宇宙から冴木君を洗脳しようという高度な輩が現れるとは!」

「いえ、宇宙人ではなく異世界人です。厳密に言えば人でもないのですが」

「くっ、異世界からの刺客! ここは冴木君のためにも始末せねば!」

「!」


 ガバッ!


 尋常ならざる空気を感じて飛び起きた俺が見たものは!


「まさかこの世界でダンジョンへの侵入を試みる輩がいようとは……」

「まさか冴木君の家が異世界人に占拠されてるなんて……」


 ななな、なんだこの状況!?

 愛華と霧風が互いに距離をとってファイティングポーズを!


「おい、二人共落ち着け! いったいどうしたんだ!?」

「祐矢さん、この者はわたくしのダンジョンに侵入した際、巧みにトラップを回避してコアルームを荒らしたのです! 恐らく人間ではありません!」

「マジで!?」


 愛華の仕掛けたトラップって、異世界の勇者ですら回避が難しい(愛華談)んだぞ!? 

 それを一般人の霧風が回避するって……


「冴木君、騙されてはいけません。この女は貴方を洗脳しようとしてるのです。この女こそ人間ではありません! ――尚、トラップを回避したのは本当です」


 あ、うん。愛華が人間じゃないのは知ってるんだが……。

 つ~かこれ、コアルーム見られちまったし、霧風にも理由を話したほうが良さそうだな。


「とりあえず落ち着くんだ、二人共」

「「これが落ち着いていられますか!」」


 なんで息が合っんだよ……。


「こうなったら仕方ありません。わたくしのコアルームで決着をつけましょう。ここで闘っては被害が大きいので」

「望むところです。貴女の化けの皮を剥がして差し上げます」


 よく分からんが、突如として愛華と霧風の闘いが幕を開けた。

 しかし霧風は無謀だなぁ。

 まぁ、愛華は手加減してくれるだろうが。


「見ててください、冴木君。きっと本来の貴方を取り戻してみせますから!」


 いや、本来もなにも、俺は失われてすらいないけ――ど!?


「テヤァァァ!」


 ドガッ!


 き、霧風がトンでもないスピードで回し蹴りを放った!

 スラッとのびた脚とともにサイドテールがなびく。

 が、当然愛華も負けてはいない。

 片手でガードすると、空いてる手で反撃を試みる。


「くっ、中々の動き……やはり只者ではありません――ね!」


 サッ!


 う、嘘だろ? 愛華の一撃を避けて大きく飛び退いたぞ!?


「実力は把握しました。恐らく今の私と貴女は同等――そんなところですね」

「奇遇ですね。わたくしがスキャンした結果からも、同等のステータスが打ち出されました」


 え……愛華と同等の強さってマジ?

 それってつまり霧風は人間ではないってことにならないか!?


「致し方なし……。祖先よ――今ここに私の正体を晒すことをお許しください――ハッ!」


 霧風が制服を脱ぎ捨てると、黒装束をまとった格好に!

 でも下はスカートのままなんだな……。


「私は名もなき忍の末裔――霧風歩美。この真実を知るのはクラス内では3人だけ……当然冴木君と貴女を覗いてですが」


 ちょっと待て、後3人も知ってるやつがいんのかよ!

 そっちにも驚くわ!


「ならばわたくしも名のらなければなりませんね。――冴木家にダンジョンを構えるダンジョンコアの冴木愛華です」


 もうバレちまったから仕方ないけど、これ以上愛華の正体が広まるのは勘弁してほしい。


「このダンジョンを知ったからには生かしては帰しません」

「それはこっちの台詞です。我が家に代々伝わる秘密を知った者は――まぁ多少の口外は許されますが、極力内密に願います」


 許されるんかい!


「「いざ――」」




「「――勝負(参ります)!」」


 再びぶつかり合う二人。

 愛華の拳を飛んで避けた霧風が、そのまま踵落としを見舞うと、足首を掴んだ愛華が床に叩きつける。

 まさに互角の闘いだ。

 ちなみに動きが激しいため二人ともスカートが捲れ上がってるんだが……うん、邪魔しちゃ悪いし黙っておこう。

 

「やりますね……ならばこれでどうです!?」

「!」


 ん? 何やら愛華がスマホで操作して……


 シュシュシュシュシュシュシュシュ!


 うおっ!? 四方の壁から無数の矢が飛び出て来たぞ! さすがにこれは危ないんじゃないか!?

 ――と、思ったが……


「なんのこれしき――奥義鎌鼬(かまいたち)!」


 霧風の周りに目に見えない壁のような物があるらしく、迫る矢は彼女に到達することなく全て床へと落ちていった。


「今度はこっちの番です――奥義火炎龍(かえんりゅう)!」


 霧風が両手を愛華に向けると、左手からは風が渦巻き右手からは炎が燃え広がる。

 それはまるで炎の竜巻のようになり、愛華へと放たれた!


「フッ、避けるのは簡単ですが、それだと面白味がありません」


 てっきり避けると思ってた愛華が、再びリモコンを弄りだす。

 直後床から火柱が立ち上がり、霧風の奥義に向かっていった!


「ダンジョントラップ――ファイヤーストームです!」


 バチィィィィィィ――ギュインギュインギュギュギュギュギュ!


 愛華のファイヤーストームと霧風の火炎龍が真っ向からぶつかる。

 威力はほぼ同等らしく、互いに押し合ったまま動かない。


「くぅぅ……並の冒険者なら死体も残さず焼き尽くすほどのトラップを!」


 ちょ、んな物騒なもん発動させんな!


「くぅぅ……その昔、敵の城ごと燃え上がらせたと言われるほどの奥義を!」


 こっちはこっちで、なんでそんなもん使えるんだよ!

 ああもぅ、いつになったら終わるんだ……。


 ガララ……


「祐~、いる~?」

「あ、嶺奈?」


 あ、嶺奈に霧風の正体がバレそうだけど、フォローしたほうがいいんだろうか?


「「あ、しまった!」」

「ん? うおわっ!?」


 闘ってた二人が嶺奈に視線を移した直後、集中力が乱れたせいか、トラップと奥義が向きを変えて俺と嶺奈に迫ってきた!

 こんなん食らったら絶対に助からない!

 さすがにこんな間抜けな最後は嫌だぁぁぁ!


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