メイク・ア・ウイッシュ
こうやって手紙を君に送るのは、僕の記憶が正しかったら初めてだと思うんだ。
出会ってからはメールや電話のやり取りで、最近だとスタンプ一つで片付けていたからね。
どうか、字が下手だから、といって最後まで読まないなんてことがないことを祈るよ。
さて、この手紙を書き出したら、君との出会いを自然と思い出したよ。
君は流行りの携帯電話を手にいれて、教室で友達に見せていたんだ。
そこに僕が通りかかって、その勢いのまま君の会話に巻き込まれて、そこから話すようになったんだよな。
あれは逃げられない勢いがあったよ。
そのときの無邪気な君の笑顔に、僕はそこですでに惚れていたんだぜ。
嘘だと思うかい? これは本当の話さ。
そこから友達で集まって遊ぶようになって、二人で遊ぶようになってさ。
君だけを誘うときはとても緊張したんだぜ。
告白、プロポーズ、ちょっと強張ったような表情になるとき。
君を抱きしめたくなる瞬間。
君から伝わる体温で、僕も安心できた。
そして一緒に住むようになって、僕はとても驚いた。
すべての家事をそつなくこなしていたからだ。
今まで遊んでいたときの天真爛漫な姿から想像していたのはちょっとドジな姿だったんだ。
怒らないでくれよ! 仕方ないだろ!
デートのときに毎回何かしら忘れてきたんだから、そこは自業自得だと思って欲しいな。
君の作る料理はとても美味しい。
君が洗濯する洋服はいいにおい。
君のいる家はとても明るい。
君と一緒にいられる時間が愛おしくてさ、
これからも一緒にいたいんだ。
どうかこれからもよろしくね。
P.S.
君はもうきっと気づいているんだろ?
この手紙の真相を。
そうだよ。
実は携帯をトイレに水没させてしまったんだ。
そこでお願いだ。僕に携帯を新調してくれないでしょうか?
君と一緒にいるために必要なものなので、どうかご検討のほどよろしくお願いします。
読んでいただき、ありがとうございました。