exⅠ 公都での朝である
「うぁあー」
公都ベルバリアでの朝は早い。
カーテンと窓を開けると、朝日が差し込みひんやりした風が頬を撫でる。
服を着替え、部屋から出て一階の食堂に向かう。
「おっ、オスカー教授。おはようございます。」
「おう、おはよう、ジムネ教授。」
サラダをぱくついている彼は、工学部の研究者で教授だ。
彼は魔導半導体工学を専攻していて半分魔法学と分野が被っている上に、
毎年同じ寮舎で過ごすこともあり仲は良いと俺は思っている。
彼も俺と同じく半年ずつの勤務でやっているそうだ。
そんな彼を見ると、やはり西の国の人にしか見えない。
この国の西は海なのだが、その向こうにまた大陸がある。
どう見ても、そこにある国の人にしか見えないのだが、
彼が言うには
「確かにその国の生まれですけど、父も母もヴァリア公国人なので
僕は純ヴァリア人ですよ。」
とのことだ。
そんな彼は生徒からの人気も高く、
さらに研究分野でもなかなかの成果を上げているそうだ。
「そういえば教授のところの息子さんって今四歳でしたっけ。」
「そうだぞ。」
「それじゃあ、あと半年なんですね。測定まで。
気になるでしょう、アヤト君の魔力色。」
「そうだな、まあ俺は別に何でもいいと思っているが本人いろいろ言ってたな。」
そんな話をしながら朝食を終わらせ、
部屋に戻って準備した後、俺は建物を出る。
一本横に出れば、そこは南東に伸びる大通りだ。
こんな朝早くなのにもう開いている店が多い。
その通りを広場の方に歩いて行く。
広場の北にはようやく修復が完了した会議場がその威容を誇っている。
壊れたところこれ幸いにと設計も新しくして、半月前に完成したのだ。
それを横に通り過ぎ、北迷宮を通って魔法学部棟にたどり着く。
廊下を歩いていると、
「「教授ー、おはようございます。」」
この時間から通学してきた学生から挨拶される。
「おう、おはよう。今日の実験の予習はしてきたか?」
「ばっちり。」
「うっ。」
一人は笑顔のままだが、
もう一人は顔を曇らせる。
おいおい、大丈夫か?
まあ、俺も学生の時はそんな感じだったな。
「ちゃんと四限までにやっとけよ。」
「は~い。」
すれ違う学生と挨拶を交わしながら、自分の研究室に向かう。
そんな中、思う。
やはり、俺はこの大学が好きだ。
好きな研究をして、学生に教え、人と交流を持つ。
本当に満たされていると思う。
ただ、一つだけ残念なのは、
一年の半分はメアリーとアヤト、フーシアと一緒に暮らせないことか。
アヤトがこっちに来るのも五年後だしなー。長いよ。
研究室の中で、授業の準備をして教室に向かう。
一時限目は、魔導回路基礎だ。
開始時刻になり、俺は教壇に立って言う。
「さあ、授業の時間だ。」
実在の人物とは一切関係ありません。




