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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
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6 父親は説明魔です3

「さっきのってふたつもつかってたの?」


父に聞くと


「よし、じゃあさっき俺がどこで使ったのか当ててみろ」


逆に問い返された。

えーっと、たぶん一つは最後に氷に向かって飛んでいったあれだよね。もう一つなんてあったか?

氷を砕いたのしか分からなかったと伝えると、上出来だと父は笑った。


「さて、答え合わせといくか」


父はもう一つの桶の前に立つと


「普段の俺がこんな氷に手を突き刺すなんてできない」


そう言って、先ほどと同じように桶に左手を突き刺した。


「「……」」


なんか転げ回った後、左手を押さえてうずくまっている。


「……もっ、も…ちろん……、こう…いうことに……なる」


「「……」」


母ですら呆れている。

父は三ミニ程してから復活した。


「ふぅ、で、俺が突き刺した時はこうやったんだ。俺の左手をよく見てろよ」


 そう言うと、父は左手の指を全てそろえて……

 んっ?手の周りの空気が陽炎みたいに揺らいでいる?


「せいっ」


 グサッと父の左手が氷に刺さった。


「っとまあ、こんな感じだ。これが身体強化だ」


「どうやるの?」


「やり方は簡単、体の強化したいところに魔力を集める。それだけだ」


「なんでそれだけでできるの?」


「さっき現象波って出てきただろ。俺たち生き物の体ももちろん現象波で出来ている。これを俺たち研究者は生体波動、生体波と言うんだが、それぞれの人の生体波と魔力波は特性がほとんど同じなんだ」


 父は紙に二つの波を書いて言う。


「振動数の同じ波を重ね合わせると、振幅はその二つの波の振幅の合計となる。簡単に言うと波が強くなるってことだな」


 紙に二つの波を合成した波が書かれた。


「これを魔力波と生体波でやると、体の生体波が強くなる。結果、体が強化されるというわけだな」


「へぇー。じゃあさっき、てのところでくーきがゆれてたのは?」


「ああ、実はそれ、あまり起こさない方が良いんだ。分かりやすくするために起こしたが、あの揺れは魔力の無駄だ」


 僕は首を傾げる。


「いくら強化出来るとは言っても、やっぱり限度はあるんだ。それを超えた分が外に出てきてしまうんだ」


 なるほど、その余剰分が空気を揺らすと。


「だからこの魔法のポイントは、いかに素早く、過不足無く、そして的確に強化する場所に魔力を送るかということだな。で、こっちが」


 父の右手から氷に向かって魔力が放射される。


「魔力放出だな。こっちは文字通り魔力を相手に向かって飛ばすんだ」


「まりょくはなみで、エネルギーをもってるから、それをあいてにぶつける?」


「そういうことだ」


「かんたんそうだね」


「そう思うか、アヤト。じゃあ、実践といくか」


 父はそう言うと、意味ありげに笑みを浮かべた。

今回、陽炎のように空気が揺れているという表現が出てきますが、実際の陽炎は密度の違う空気が混ざることにより光が屈折することで起きる現象です。

あくまで比喩表現ですのでご理解ください。


そしてもう一つ、波の合成ですが、振幅が2つの合計になるのは位相も同じ時です。何度も言いますが、父が(見た目は)3歳児に教えているところです。いろいろ省略もしています。現実の知識として使う場合は(そんな人いないか?)ご注意ください。

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