74 ベッドの上は退屈……ではなかったようです3
「……ごめん。」
そっぽを向きながら棒読みする少女。
こ…こいつ、謝る気さらさら無いぞ。
何か言ってやろうと口を開こうとしたところで
ディーさんがすまなそうな顔で
とりあえずゆるしてやってくれ
と口パクをしているのが見えた。
「……いいよ。」
もやもやとした気分を抱えながらも、
ディーさんに免じてそう言うと、
銀髪の少女は用事は果たしたと言わんばかりに
病室から出て行こうとする。
「ちょっと待て。
せめて自己紹介だけはしろ。」
ディーさんが呼び止めると、
少女は振り向いてその青い瞳でこちらを睨む。
「ルーシェ。」
一言だけ言ってスタスタと去って行く少女。
「ったく。チェルミナ、テレス、頼む。」
「りょーかい。」
「分かりました。」
二人が部屋から出ていき、一瞬の静寂が流れる。
外からの喧騒が大きく聞こえる。
「なんかすまんな坊主。」
「いえ、いいですよ。」
「そう言ってくれると助かる。
それと俺からも、危険な目に遭わせちまってすまん。
そして、助けてくれてありがとうな。」
助けた?
……ああ、ルーシェちゃんの不意打ちの時か。
「たまたまですよ。
それと、僕がついて行きたいと思ってついて行ったんですから。
気にしないでください……っていっても気にしちゃうなら、
また稽古をつけてください。
それでチャラということで。」
「わかった。約束する。」
そう言ったディーさんは、
一息つく。そして、言葉を続ける。
「坊主、今日来た用件は三つあって、
一つは坊主のお見舞い。
二つ目はルーシェの謝罪と自己紹介。
で、最後が事件のその後のことを教えようかと。
坊主も当事者だからな。聞きたいか?」
「お願いします。」
僕がそう言うと、ディーさんは僕たちが別れた後の事を語り始めた。
ギルドへ戻る途中ディーさん達は崩れ落ちた会議場を見た。
どうやら地下崩落の影響が出たらしい。
地下の出口は北地区で僕はそのまま同じく北地区の病院に運ばれたから
全く気付かなかった。
ギルドでまた緊急依頼が出たのか会議場の方は対応している人がいたので
とりあえず報告を優先させ、戻ったギルドでレンさんとテレスさんと合流したらしい。
第二陣の人達は隠し扉が使用不能になってからしばらく待機していたが
待っていても合流は不可能との判断でギルドに戻ってきたところだった。
その後は、ギルドに事情を説明していったようだ。
そして浮かび上がった問題が一つ。
地下から救出された女の子の処遇をどうするか。
事情聴取でも女の子はダンマリ。
事件の状況から、女の子は犯人の一味(もうどんな事件だったのか分からなくなりかけていたが)
であるが、主犯に利用されていた可能性が高いと考えられた。
こんな複雑な立場に加えて、まだ幼いこともあって
女の子をどう扱うか議論は二日に渡ったらしい。
結局、保護観察処分ということで当事者であった
暁の旅団がしばらく面倒を見ることになったのだ。
そして今に至る。




