71 地下からは脱出です5
「聞こえるぞ。どうした?」
ディーさんは上に向かって問いかける。
すると、チェルミナさんが答えた。
それによると、ギルドからの救助隊が到着したようだった。
「坊主、端に寄れ。」
なんで?
首をかしげたその瞬間、
「うわっ。」
何かが降ってきた。
ドスンと音を立てたそれは
金属のフックがついた革のベルトのような物だった。
「ディーさんこれは?」
「救助用の道具だ。
すぐにロープが下りてくるだろうから、
しっかり装着しろよ。」
なるほど、ハーネスか。
渡されたそれを、腰に巻き付けていく。
ディーさんにこれで大丈夫か確認してもらっていると、
先端に金具のついたロープが下りてきた。
「よーし、良さそうだな。
じゃあ、これをつけるぞ。」
とロープを掴んで言うディーさん。
「いいか、ロープを引っかけたら引き上げてもらう。
そのとき、ちゃんと両手でロープに掴まっておくんだぞ。」
ディーさんはそう言うと、僕のお腹側にある金具に
ロープを引っかけた。
そして、強く二回ロープを引く。
「じゃあ、気をつけろよ。」
その言葉と同時に僕の身体が床から離れる。
一メーテ、二メーテとゆっくりと上昇していき、暗い縦穴に入る。
視界がきかない中、揺れるロープにしがみついている。
そしてついにそこを抜け……
「「アヤトっ。」」
あっ、お父さん、お母さん。
ついに僕は地下を脱出するのであった。
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「いくぞ、せーの。」
よいしょー。
「せーの。」
よいしょー。
男の人達の声が聞こえる。
綱引き?
いいえ、救助活動です。
滑車を使って、男の人達がロープを引っ張っている。
今はディーさんを引き上げているところだ。
薄々分かってたけれど人力だったのか……
そんなことを考えていると、ディーさんの救出が終わったようだ。
「ありがとう、助かった。」
「いえ、緊急依頼中のサポートも私たちの仕事ですので。
それでは、ギルドの方で報告をお願いしても良いですか?」
「ああ。分かった。」
ギルドの職員さんにそう言って、こちらに向かってくるディーさん。
「すまん、みんな。心配をかけた。
俺も坊主も大丈夫だ。
だが、坊主は脚に怪我をしているから、早く病院に連れて行ってやってくれ。
報告は俺たちの方でしておく。」
「はい。それじゃあ行きましょうか、アヤト、オスカーさん、フリッツさん。」
僕は父に背負われる。
こうして、ディーさん達と別れるのであった。




