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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
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69 地下からは脱出です3

「急げっ。」


階段の上、はしごの先で出口の扉を押し上げた父が叫ぶ。

父の後はフリッツさんが登り、重い蓋を父と二人で支える。

次は女性陣、ハッチのような穴から脱出していく。

母が登りきったところで通路全体が揺れ始め、

通路の向こう側から破砕音が響いてきた。

土煙が流れてくる。


「ウォーレル、背負ったままいけるか?」


「……無理。穴の大きさが足りない。」


「そうか……なら、一旦坊主は俺があずかる。

おまえは急いで上がって、上から坊主を引き上げろ。」


そう言ったディーさんが怪我で脚を動かせない僕を背負う。


「坊主、もう少しの辛抱だ。」


「はい。でも、ごめんなさい。

迷惑をかけてしまって。」


「いや、そんなことはない。

長年冒険者をやっていると、こういうことはよくあるしな。

しかも今回は、おまえがいなかったら俺はやられていただろう。

俺も、腕が鈍ってきたかな?」


そう言って自嘲気味に笑うディーさん。


「隊長、アヤト君を。」


ウォーレルさんが登り切り、

手を伸ばしたところでついに近くの壁が崩れ始める。


「ウォーレルっ、頼むっ。」


ディーさんが僕を抱え上げ、僕は手を伸ばす。

その間にも崩落の脅威はこちらに迫ってくる。


もう少しっ。


こちらに手を出すウォーレルさんに向かって

僕は必死に手を届かせようとする。

手の間の距離が少しずつ縮まって、

ようやく届きそうだ。


ウォーレルさんの手を掴もうとするその瞬間

ガラガラガラ

という重い音とともに僕は浮遊感に包まれるのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ピチャンピチャンと水滴の落ちる音が意識を覚醒させる。


「うぅーん。……痛っ。」


ひんやりとした空気が肌を撫でる。

ここは?

闇の中、周りに何か無いか手探りすると、

少し温かい物があった。

手触りからすると布を被った何か?

と考えていると


「うわっ、動いたっ。」


「……っ、なんだ?」


声からするとどうやらディーさんだったらしい。


「ディーさんですか?」


「その声は坊主か。」


「ええ。それで、ここは何処なんでしょうか?」


「あー、多分さっきまでいた通路の下だろうな。」


そこで急に明かりが灯る。

ディーさんがバッグの中からランプを取りだしてつけたようだ。

床にはレンガが積もっている。


なるほど、立っていた地面が崩れ落ちたってことか。

ん?さっきの場所の真下ってことはもしかして。


「ディーさん、それなら上に呼びかけたら。」


「ああ、そうしようか。」


ディーさんも気付いていたようだ。

そこで


「「おーい、聞こえるかー」」


二人で声を張り上げる。

すると……


たいちょー、きこえますよー。

ぶじですかー


と言う声が聞こえてくる。


「無事だー。」


とディーさんが返すと、


わかりましたー

いまギルドにたすけをよびにいってるのでー

もうすこしまっててくださいー


とおそらくチェルミナさんが言う。


「無理に動かなくても大丈夫そうだ。

もう、崩落の仕掛けも動いてなさそうだしな。」


そう言われて耳を澄ますと

定期的に聞こえていた地響きが聞こえなくなっている。

少し安心して

息を吐き出した僕は周りを見回すのであった。

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