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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
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65 アジトは地下です6

少しわかりにくかったので前話の最後に表現を追加しました。

気になる方はご確認ください。

「ディーさん危ないっ。」


僕は叫びつつ、女の子を止めるために駆け出す。

敵がサインを送っている段階で気付いたため、

初動を早くでき、あと半歩で追いつける。

しかし、その半歩が遠い。

ディーさんまで残り五歩のところで

女の子は腰の後ろ、服の中に左手を伸ばし、

そこからナイフを引き抜く。

その鞘からなにか液体が飛び散るのを僕は見た。

男とのつばぜり合いで動けないでいるディーさんは

こちらに顔を向けると、目を()く。

そのタイミングで剣に渾身の力を入れる男。

そのせいで、バランスを崩されて対応出来ないディーさん。


このままじゃ間に合わないっ。

もう一歩。もう一歩分だけ詰められればっ。


ディーさんまであと二歩。

女の子は左手を後ろに引く。

ここで、僕は身体強化に賭けることにした。

今前に出ている脚、次の蹴り脚となる右足に魔力を集める。


残り一歩。

後は踏み込んで武器を突き出すだけの間合い。

ディーさんを鋭く睨み、狙いを定める女の子。

僕は右足に力を込めつつ、その腕に手を伸ばす。


届けっ。


残り零歩。

踏み込みとともに一切の容赦もなく突き出されるナイフ。

だが……


バシッ


僕の右手はナイフを持つ左手を掴んでいた。

そして、その軌道を曲げる。

ディーさんの右脇を抜けていくナイフ。

僕は掴みながらなんとか右手を引き戻しつつ

後ろに身を引く。

その場を離脱しつつ、ステップの勢いで女の子の体勢を崩して倒し

地面に押さえつける。


「やぁってくれましたぁねぇぇぇ。」


今までつかみ所が無かった男が怒りを露わにする。

ということは、この子の存在が切り札だったというわけだ。

苛烈な攻撃を、窮地を脱したディーさんは冷静に捌いていく。


さっきまで一切攻撃を仕掛けてこなかった敵も、

僕の方に向かってくる。

それを見た母が弾幕の一部をその敵に向ける。

すると、そいつのフードがめくれた。


「依頼人さん?」


母がつぶやく。


「あの人依頼人なの?」


「多分ね。応援第一陣として出発する前に、特徴を聞いたの。

依頼人さんは昼にギルドから出て行ったきり、戻って来てなかったらしいのよ。

おそらく、公都の中を捜索し続けているから、

もしここに来る途中にでも見かけたら一旦ギルドに戻るように伝えて欲しいと

職員さんに頼まれたのよ。

そこで聞いた特徴と、あの女の人の特徴は完全に一致しているの。」


「じゃあ、ネロさんが尾行していたフードの人って……」


ローブ着た女に目を向ける。


「あーあーあー。これだから察しの良い奴らは嫌いなんだよ。

やりにくいったらありゃしない。」


女は吐き捨てるように言った。


「それじゃあ……」


「ああ、そうだよ。誘拐事件から自作自演だよ。

ここまでたどり着けるような実力者を始末するためのな。

おまえのせいで台無しになったけどな。」


そう言って僕を指差す女。

そして、さらに言葉を続ける。


「ルーシェ、ここまで鍛えてやったのになんだそのざまは

そんなガキごときに邪魔されるなどとは……」


僕が押さえ込んでいる女の子がビクッと震える。


「ちっ、もうあんたは要らないな。」


そう言ってから長髪の男のそばへ移動する女。

ディーさんと男の間に炎の壁を作り出して

無理矢理戦いを中断させると言った。


「作戦を繰り上げて最終段階にいくよ。」


「早すぎぃでぇぇぇす。

まだ、いけるでぇす。」


「文句を言うな。あたいは今腹が立っている。

次言ったらあんたの首が飛ぶぞ。」


そして、男と女は壁際に移動する。

このまま何かさせてはまずいと思い

駆け寄ろうとするが、間に合わない。


「じゃあ、さよーなら。」


そう言って女は壁のレンガを押し込んだ。

総アクセス数が30000に到達しました。

読んでいただきありがとうございます。

投稿開始から丁度二ヶ月でここまで来られたこと、嬉しく思います。

これからも精進していきますので、よろしくお願いします。

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