59 移動先は地下です4
「生き残ることに関して右に出る奴はいない?
はははっ、なんだそれ。アホじゃねえの。」
援軍を待つ僕たちの耳に男の声が入ってくる。
正直言ってこんな中で待っているのは
精神衛生上悪すぎると思う。
そう考えていると、ネロさんが急に立ち上がった。
そして、手ぬぐいを取り出して男の方に向かっている。
何を……
「ひぇ。」
ついそんな声が漏れてしまった。
なぜならネロさんの顔を見ると、口元が引きつっていたのだ。
も…ものすごく怒ってらっしゃる。
「おうおう、なんだ?
縄を解くつもりに――」
「だまれ。」
そう言って、男の口に布を巻くネロさん。
それで諦めたのかようやく男は静かになる。
「はぁ、本当は待ってる間にいろいろと
聞き出すつもりだったんだけどね。」
「そうなんですか。」
「ええ、うまく聞き出せたら、
今後の対応とかいろいろ役に立つからね。
時間のあるここでやろうと思っていたんだけどねぇ。」
そう言って、男の方を見るネロさん。
まあ、あんな態度の男に聞いても意味は無かったと思う。
今後の動きを考え、話し合って、
援軍を待つのであった。
「おまたせ。隊長は?
なんでこんなところで待ってるの?
それと、そこの男は?」
「……待たせた。」
しばらくして、チェルミナさんとウォーレルさん、そして母が合流した。
他の人はまだギルドにおらず、この三人が第一陣として出発したようだ。
「ここに犯人のアジトがあるから、ここで待ってたの。
この男はアジトの入り口にいた。
ディーは先行偵察に行った。」
ちょうどその時、隠し扉が開く。
全員が武器を構えるが、出てきたのはディーさんだった。
「おう、来たか。」
「はい、隊長。」
「他にはいないのか。」
「とりあえず私たちが一陣として来ました。
この後に、さらに集まった人を送るとの事だったけど、
ギルドの人は、先に行動を開始してくれって言ってたよ。」
「了解。こっちは見ての通り偵察が終わったところだ。
連れ去られた女の子と特徴が一致する子も見つけた。
途中で見張りも一部排除する必要があったからしたが、
それで警戒されてるかもしれん。」
ここでディーさんは縛られている男をチラッと見る。
「そこの男は……第二陣に任せればいいか。」
そう言って、ディーさんは全員を見回す。
「これから救出作戦を開始する。
二班に分けるぞ。
一班は俺とメアリーさん。
二班はネロさんにウォーレル、チェルミナだ。
坊主はとりあえず二班についていけ。
俺たち一班は急襲。
二班は後方警戒と退路確保を担当してくれ。」
全員が頷く。
そして、ディーさんは仕掛けを操作して
アジトの扉を開く。
「みんな無理だけはするなよ。
それじゃあ、行くぞっ。」




