56 移動先は地下です1
……ピチャン……ピチャン
水音の聞こえてくる暗い通路を
ディーさんの持つ明かりだけを頼りに歩いて行く。
右手には水路があり、僕たちは幅一メーテ程の通路にいる。
あまり使われないところのせいか地面には
塵が積もっており、足跡が入り口から続いていた。
「水路の向こう側か……」
ディーさんがつぶやく。
水路がT字に分かれており、足跡は途切れている。
どうやら、水路を跳び越えたらしい。
最初にディーさんが跳び、それに僕が続く。
そして、後ろを警戒するネロさんが渡る。
「それにしても複雑ですね。」
「この水路はこの国がまだ王政だった時代に
作られたと聞いたことがあったな。
さっきまでここの存在自体忘れていたが……」
そんな会話をしつつ進んでいく。
そういえば角を曲がるたびに
また、水路を跳び越える前にディーさんが
しゃがんでいるんだけど何してるんだろう?
聞くと、
「後続が来るときと自分達が帰る時のために
印を残しているんだ。」
ディーさんの手には白い石が握られている。
「これが俺ら暁の旅団のマークだ。
この印残しは普通は洞窟とかのダンジョン探索で使うものだ。
これには、自分たちが来た方向を手前にするようにマークを書く。
そして、マークの周りに次に進む方向を矢印で書く。
これで完成だ。こうすれば矢印の向きで後から来た奴らに
移動先を知らせられるし、戻るときにどこから来たか分かるようになる。」
「なるほど。」
これならマークが消えない限りは迷わないだろう。
「坊主、急ぐぞ。」
僕たちは迷路のようなこの水路を駆け足で進むのであった。
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十ミニ後。
「どこ行きやがった。」
舌打ちするディーさん。
僕も周りを見渡すがやはり見つからない。
何がかというと、
足跡がである。
さっきまで順調にたどってきて
途中から足跡が増えた。
中には子供のものだと思われるものもあり、
ディーさんはこれが犯人のものであると確信したようだ。
そうして追跡していたのだがここにきて、
それら全てが忽然と消えてしまったのである。
「ここから水路を泳いでいったのかしら?」
「どうだろう?
わざわざここまで来てか?
足跡も集まっていたし、
ここで消える理由は三つだな。」
そう言って指を立てるディーさん。
「一つ目、ここから泳いでいかないといけない理由がある。
二つ目、ここまでの足跡は全てフェイクで別方向に泳いでいった。
三つ目、この辺りに何か仕掛けがある。
さあ、どれだと思う?」
うーん。
「それ、二つ目だったら手の打ちようが無いんじゃないですか?」
「そうだ、坊主。良い考え方だ。
だから、二つ目の可能性は無視する。
俺が水路の方を調べるから、
坊主とネロさんは通路の方を調べてくれ。」
「わかりました。」
「りょーかい。」
こうして僕たちは周囲の調査をするのであった。




