3 魔法の使用はおあずけです
ようやく魔法が出てきます。
フリッツさんの店に入った僕の目に飛び込んできたのは……
よく分からない大量の金属製の箱のようなものであった。
箱は両手の大きさぐらいのものから一メーテ立法(どうやら メートル→メーテ センチメートル→サントメーテ グラム→グロン キログラム→キログロンみたいになっているらしい)ぐらいのものまで。それぞれの箱の形は少しずつ違うようだがどの箱にもついているものが五つ、いや四つ?なんか前の世界で見たような電気回路の端子みたいなものが二つ(二つで一対なのか?)。IHヒーターのような丸いパネルが一つ。箱の上部には太陽電池のようなパネルが一つ。ダイヤルとメーターみたいなもののセットが一つ。
一体これは何なんだろう?僕が箱を見つめつつ首をかしげていると、フリッツさんは言う。
「聞いて驚け。これが魔法を使うための道具、魔導具だ」
えぇ~~~~~
……地味だ。
なんか魔石とか宝石みたいなものがくっついていたり、幾何学的な模様が刻んであったり、もっとかっこいいものだと思ってたのに。でも、これが魔導具か。
「どんなふうにつかうのですか?」
「反応が薄いなぁ。えーっと、使い方を簡単に言うとこの二つの突起に手を当てて魔力を流すのだが」
「まりょくをながすですか」
「まあ、みてな」
そう言うと、フリッツさんは箱の突起に手を当てて――
うわっ、火が出た。IHみたいなところに火が起きてる。これが魔法か。使ってみたいなぁ。
僕が目を輝かせているとフリッツさんが誘ってくる。
「坊ちゃんもつかってみるかい?」
「うん」
フリッツさんに言われるがままに突起に手を当てようとすると、
「ちょっと、ストーップ」
母に止められた。
「フリッツさん。さすがにそれはだめでしょ。まだこの子の魔力波特性も測って無いんだから」
「おっと、そうだった。すまんなアヤト君。魔法は危ないものもあるからな、五歳になって魔力を測ってからじゃないと使っちゃだめという決まりがあるんだよ」
「でも、子供って魔法を知ったら興味を持っちゃうから少なくとも三歳までは魔法があることを教えてはいけないという決まりもあるのよ。アヤトは賢い子だからあと二年我慢できるわよね」
早く魔法を使いたい僕にとってはものすごく残酷な事実を言われた。あと二年も……。
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その日の夕食時。
「ほら、そんなに暗い顔しないの」
「しょうがないだろう。魔法があと二年も使えないと聞かされたんだ。魔法ほど興味深いものもなかなかないのに」
「オスカーさん、そんなこと言ったら」
僕はさらにうつむく。
「はぁ。アヤト、おまえは魔法を使いたいのだな」
「うん」
「おまえは魔法で人を傷つけたりしない、魔法を私利私欲のために使わないと誓えるか?」
「うん」
僕が顔を上げると、父はびしっと僕を指さした。
「よし、いいだろう。俺がアヤトに魔法を教えてやろう」
「オスカーさん、まさか」
「ああそうだ、あれなら一応条例違反にもならないし、アヤトにはちょうどいいだろう。アヤト、明日はみんなで出かけるぞ」
「はい」
僕は大きな声で返事した。
母は何か小声で言っているが……。なになに?明後日の学会用の資料は完成してるのかしら?




