46 公都の中を散策です10
施設を見学しながら、
大学の建物が並ぶ路地を西に歩いて行く。
「実は、学会はこの大学の大講堂で行われてるんだ。
年齢が年齢だからアヤトは入れないがな。」
「残念。」
木造の古い建物を右に、
レンガでできた新しい建物を左に見ながら進んでいく。
歩いていると、学生だろうか若い男女とすれ違ったりする。
時々、そのうちの何人かが父に話しかけたりしている。
へぇー、父って人気なんだな。
そんな大学の敷地を抜けて数ミニ、
父が立ち止まる。
「ここだ。」
目の前には塀、その向こうにグラウンド
さらに大きめの校舎がある。
「あれが高等学校だ。あと六年ちょっとしたら
アヤトもここに通うことになるだろう。」
「通う?」
「そうだ。この近くに寮があるからな、
そこから通うことになる。」
「ミリアもこっちに来ることになるのか。
はぁ~。……俺もこっちに住むか?」
あなたの店はどうするんですかっ、フリッツさん。
それに気が早すぎますよー。六年後なんですよー。
「そろそろ広場に戻るか。」
空を見ればだいぶ陽が傾いてきている。
見て回るのに結構時間がかかってたんだな。
父の後ろについて、路地を右に折れ左に折れ
時には地下を通って、僕たちは広場に戻ってきた。
「待ち合わせの時間まであと少しだが、
もう二つだけ紹介したい施設がある。」
「どこ?」
「どっちもすぐそこにある。」
父が指さす方を見る。
片方は広場の西北西側に面している大きめの年季の入った建物、
もう一つは、広場の南側に面している三階建ての新しい建物のようである。
「そっちの大きい建物が騎士団本部だな。
で、こっちの新しいのがギルド本部だ。
両方とも裏手には訓練場…ギルドのほうは練習場っていってるんだったか?
とりあえず、そういう施設が併設されてるんだ。
まあ、さすがに騎士団のほうが規模は大きいんだが。」
ギルドの前で説明する父。
するとちょうどギルドの中から五人の人が出てきた。
男三人に女二人の組なのだが、
そのうちの男二人に見覚えがある気が……
「おっ、オスカーじゃねえか。」
「おう、ディー。」
こちらに歩いてきた五人組は、一年前ワーウルフ相手に共闘した
『暁の旅団』のパーティーであった。
僕の意識が戻らないうちに、公都に移送されたらしいので、
ディーさんとレンさん以外は初対面である。
赤い髪の少女が話しかけてくる。
「君がアヤト君ね。一年前はごめんなさい。
それと、隊長を助けてくれてありがとー。」
「いえ、こちらこそありがとうございます。
ディーさん達には助けていただいたので。」
銀髪の女の人がそれに続く。
「私たちが動けなかったせいでご迷惑をおかけしました。」
「いえ。」
「……迷惑をかけた。
……すまんかった。」
大柄のこの男の人はなかなかに寡黙な人であるようだ。
「いいですって。みんな無事だったんだし。」
雰囲気が微妙になりそうだったので話を打ち切る。
それに合わせてレンさんが聞いてくる。
「アヤト君達はどうして公都に?」
「お父さんに連れられて、観光に。」
「そうなんですか。
どうですか?公都は。」
「いい町ですね。」
「そう言ってもらえるんなら良かった。
ギルド本部の中はもう見たかな?」
「いえ、まだです。」
「そうですか。なんだったら案内しましょうか?」
「おっ、それはいい案だな。」
父となにか話していたディーさんがそう言う。
父もやってくる。
「ちょうど俺は明日発表があって一緒にはいられないからな、
お願いしていいか?ディー。」
「俺らはかまわないよな?」
そうディーさんが聞くと、暁の旅団の皆さんは全員が賛成した。
「俺らはいいんだが、坊主はそれでいいのか?」
「はい、ぜひお願いします。」
ディーさんたちと明日の予定について調整した後
別れた僕たちは、広場でミリアちゃん達と合流。
その後、夕食をとり宿屋に戻って
公都観光二日目の夜が過ぎていくのであった。




