45 公都の中を散策です9
見渡す限り、本の壁。
これが第一印象であった。
さて、公都に来て二日目の午後。
僕たちは公都北区の図書館に来ていた。
入り口から入ってすぐ、
貸し出しカウンターの前で父が話し出す。
「これが公都立図書館だが、どうだ?」
「本が……すごく……たくさん。」
ただただ圧倒されてこんな陳腐な感想しか言えない。
一階だけでもこれなのに、二階と三階にも同じように開架があり、
地下一階~地下三階まで閉架書庫が広がっているらしい。
あ、そうだ……
「お父さん、魔法について書いてある本とかってあるの?」
「おお、あるぞ。ただ、魔法の専門書はもちろん
入門書まで閉架書庫のほうにあるから、
カウンターで頼まないと読めないぞ。
頼んだとき一応年齢確認されるからな。」
へぇ~、やっぱりこういう公的施設とかだと
ちゃんと条例を守ろうとしているんだな。
「アヤトは他に気になる本とかあるか?」
「う~ん、特には無いかな。」
「そうか。」
「そういえば、この図書館の本って
どこにどの本があるかの分類ってされてるの?」
日本では十進分類法とか使われてたはずだけど、
こっちではどうなってるんだろう。
「一応分けられてるな。
例えば、右にあるあの棚から先は文学系だな。
それで、あっちの奥にあるのは歴史書だ。」
「なるほど。」
「ミリアちゃんが読んだっていう、
『双盾のお姫様』は文学の棚だな。
……読むか?」
「いやべつにいい。」
「うちのミリアが読んでたものを読めないだと。」
フリッツさん、ささいな事で突っかかってこないでいただきたい。
さすがに図書館の中だということもあって、
そのあとは特に何も言ってこなかったが。
「お父さん、本って借りられるんだよね。」
「ああ。だけど、最初に利用者登録をしなくちゃいけなくて、
これがまた時間がかかるんだ。ひどいときには二アワ以上かかる。」
「なんでそんなに時間が?」
「身元がわかってないといろいろ不都合が起きるからな、
登録のときにはギルド登録とか学籍とかそういうもので
身元の照会をしているんだ。これに時間が掛かってるんだな。」
「なるほど。」
「もうそろそろ、次に行ってもいいか?」
そして三人でまた北区の路地に出るのであった。
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「ここら辺から大学だな。」
「えっ?ここが?」
まわりを見ても門も無ければ
柵とかの仕切りも無い。
変わった形の建物はちらほら見えるけど……
「ここ、公国立ベルバリア大学はその敷地と路地が一体化してるんだよ。
あの白い建物は経済学部棟だし、あっちの茶色いのは戦闘戦術学部二番棟だな。
ちなみに、研究棟は地下にあったりする。」
「へぇ~。……それって迷ったりしない?」
「新入生が迷子になるのはよく聞くな。
俺も大学に入ったときなったぞ。
フリッツもな。」
「ああ、うちの伝統だからな。」
伝統なのかよっ。
思わず突っ込んでしまう僕であった。




