44 公都の中を散策です8
白い壁の大きな建物を見る。
これがこの国で一番大きい図書館か。
蔵書数もかなり多く、研究論文から
童話の類まで様々な種類があるそうだ。
そういえば昨日ミリアちゃんが来たいと言っていたような……
そんなことを考えていたからか
入り口からミリアちゃん、ミレナさん、フーシアを抱いた母が歩いてくる。
「ミリア~。」
フリッツさんが突撃していくが、
咄嗟にミレナさんの後ろに隠れるミリアちゃん。
そして落ち込むフリッツさん。
うん……お疲れ様です、フリッツさん。
「ミリアちゃんは楽しめたか?」
「うん。」
「うちの子かなり集中して読んでたのよ。」
「へぇ~、何を?」
「昨日見た『双盾のお姫様』の童話版よ。」
「そんなのあるんだ。」
「そうなの。でね、ミリアったら読んでる最中にね――」
「~~だめー」
ここでミリアちゃんが精一杯手を伸ばして
ミレナさんの口をふさごうとする。
全く届いていないが、ミレナさんもミリアちゃんが
嫌がることはするつもりがないようで、
あっさりやめて別の話に移る。
「それでフリッツ、あなたたちはどこを?」
「職人街に行って、それから、ま……」
「ま?」
「「……」」
フリッツさんがフリーズしてしまった。
助けを求めて父を見ると、父も凍っていた。
ミレナさんと母が訝しげなまなざしを送ってきている。
ふぅ、仕方ない。
「職人街でいろんな店を見て回ったあと、
『まあそろそろ昼だ』ということで南のしょくどうに行ったんですよ。」
「そうそう、『まあそろそろ昼だ』ってな。」
「そうだな。」
「「ハッハッハ。」」
父とフリッツさんがここぞとばかりに乗ってくる。
これには僕も含めて白い目を向けてしまったが、
とりあえずミレナさんからの追究はなくなった。
「それでは、私たちも南地区に行ってきます。」
「おう、それじゃまた後でな。」
「オスカーさん達は、これから北地区ですか?
迷わないでくださいね。」
「ははっ、十年以上使ってるここで迷うわけ無いだろ。
また、後でな。」
「はい、それでは。」
女性陣が歩いて行く。
ミリアちゃんがちらっと振り返って小さく手を振っている。
可愛いなぁ~。
こちらも手を振って、笑みを送ると、
ミリアちゃんはバッと前に向き直った。
……嫌われたりしてないよね?
そんな風にちょっと不安になってしまう僕なのであった。




