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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
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40 公都の中を散策です5

形状は円形や紡錘(ぼうすい)形、そして菱形、

さらにはルーローの三角形みたいな形のまで、

材質は銅材や鉄材、そして鋼材、

どうやって加工したのか圧縮木材まで。


さて僕たちがどこにいるのかというと……

職人街の盾屋である。


なぜに盾?って?

昨日あんな劇を見たんだからしょうがないじゃないか。

しかも、去年のあの事件で僕たちが生き残れた一因は、

ギームが盾を使って前衛を務めたこともあるんだぞ。

これで盾に興味を持たない方がおかしいと思うなー。


両手で持つタワーシールドに、

片手持ちの通常の盾、

少し小さめで腕につけるシールドなど、

数々の盾を見ていると、


「嬢ちゃん……いや坊ちゃんか?

なにか気に入ったのはあったかい?」


と声をかけられる。

まだ、四歳で顔も丸めなので、今日みたいに髪が伸びていると

たまに女の子と間違えられるのだ。

成長したらもっと男らしくなると信じたい……


「僕は男です。

ええっと、あの表面に金属のラインが入った木製の盾は?」


「ちょっと待ってな。

えーと、親御さん?この子は何歳だ?」


父が答える。


「四歳だ、店主。」


「俺が店主ってわけでもないがな、そうか四歳か……」


そうつぶやいて店の男は向き直り、


「坊ちゃん、この盾は木工職人が作ったあとに、

とある金属を扱う職人が模様を(ほどこ)した物だ。

この模様には盾の強度を上げる目的もあるんだぞ。」


そう答えてくれるが、目がこちらを見ていない。

何だろう?

たまに男の目が父の方を向くので見ると、

父とフリッツさんは事あり顔で頷いている。

まあいいか、後で問い詰めてみれば。


「おっちゃん、ありがとう。」


そう言って、僕は盾のお店を後にした。




続いて、剣のお店に行ってみる。

普通の片手剣から、両手剣、

刀のような鋭い剣、脇差し、

そんな多くの種類の剣を見ていると、

やはりここにも先ほどの盾のように、

不思議な模様の入った剣があった。

模様のところは剣本体に使われている金属とは

違う輝きを放っている。


さらに、槍屋、杖棒屋(昨日のトンファーはここで売っていた)、

鎧屋などと回ってみるが、その全てで例の模様が入った作品を見かけた。

ブームなのかな?


職人街を回っていると、なにやらフリッツさんがソワソワしだした。

彼は、右の道を見つめている。

ところで、皆さんはお気づきだろうか。

ここが職人街という道具を作る技術者が集まるところであるということに。

そして、魔導具もまた制作にある種の技術が必要な道具であるということに。


そう……


「いらっしゃい……フリッツじゃん。久しぶり。」


「おう、久しぶり、ネロ。」


「オスカー教授もいつもお世話になってます。」


「そんなこと言うなって。世話になってるのは俺のほうだ。」


「で、そっちの坊ちゃんはオスカーの?」


「ああ、そうだ。いつも話しているとおり、俺の息子でアヤトだ。

今年で、よ………ご、五歳…に。」


「はいはい、ごまかさなくてもいいんだよ。

四歳なんだろ。話聞いてるんだから知ってるって。

まあ、見逃してやるよ。」


そうして父達は雑談を始める。

僕たちは職人街の本通りから少し外れたところにある

魔導具店に来ていた。

どうやらこの魔導具店の店主であるネロさんという女性は、

フリッツさんとは同業のよしみか古いつきあいで、

父とは大学の研究で使う部品をここで調達したりする関係上

よくしゃべるらしい。


けれど、父もフリッツさんも冷や汗をかいて怯えているのは……

うん、見なかったことにしておこう。

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