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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
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38 公都の中を散策です3

「よし全員集まったな。」


ここは広場から西へ通りを通ってきて五ミニ程したところ。

目の前には大きな劇場が建っていた。

公都の西よりは芸術関係の建物が多く、

他にも小さな劇場があったり、

博物館や美術館、個展を行うためのギャラリーなどの建物が並んでいる。


「はい、これがチケットな……落とすんじゃないぞ。」


父が入場券を渡しつつそう言ってくる。

それはフリかな?

とまあ冗談はさておき、今日の夕方は

ここベルバリア国立劇場でとある劇を見ることになっていた。

格式高いこの劇場では多くの有名な実力のある劇団により

様々な劇が公演されているのであった。

ここの劇を見るためだけに来る人も多く、

舞台役者を目指す人の中には

ここで演じるのが目標という人も多いという。

今日僕たちが見るのは、「双盾使いのお姫様」という物語である。


そんな解説を父から聞きながら建物に入っていく。

そして、案内された席は……


「テ…テラス席……」


「フーシアがいるからな、他のお客さんに迷惑が掛からんようにだな。

それと、座席の値段は普通のところと変わらんから気にするなよ。」


「なるほど。」


父もちゃんと考えてるんだな。いつもは抜けているのに。

はっきり言って変人なのに。


「アヤト、失礼なことを考えなかったか?」


「イヤダナア、ベツニソンナコト、カンガエテマセンヨ。」


そんな話をしつつ席に着くと、開演のブザーが鳴った。




昔々とある国にお姫様がいました。

そのお姫様は、城で勉強や護身術を習いながら、

すくすくと成長していきました。

しかし、十五歳になり成人したその日、

隣の国の強欲な王様が攻めてきて

お姫様の国を滅ぼしてしまいました。

命からがら逃げ延びたお姫様は、

護身術として習った盾術を磨きながら、

国の再興を目指して冒険者としての旅を始めました。

国が滅びたときに大陸の各地へと散ってしまった実力者達を集めるため、

国を建てる方法を学ぶために。

そして、お姫様は両手に盾を持ち、今日も歩いて行く。


そんな物語を時に歌を、踊りを、

さらには二つの盾を使った殺陣(たて)をも交えながら

……洒落(しゃれ)じゃないぞ。

紡いでいく劇に僕たちは時間を忘れるほど引き込まれていた。




「おもしろかったっ。」


劇を見終わった僕たちはレストランで食事をしていた。

そこで母に感想を聞かれたのだが、

言いたいことが多すぎて結局そのように答えるしかなかった。

隣ではミリアちゃんがコクコク頷いている。


「そうか、楽しめたなら何よりだ。

今日のやつ、来年から続編をやるようだが、

また来年来ようか。」


「そうですね。来年も来ますかね。」


「うちも来ようか、ミレナ。」


「そうですね。」


そんな話をしながら、

公都の料理に舌鼓を打つ。

パン一つとってもいつも食べているものよりも

はるかにおいしい。


そして、食べ終わって宿に戻った僕たちは

明日のことも考えて早めに就寝するのであった。

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