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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
38/141

36 公都の中を散策です1

「それじゃあ、俺は準備があるから。」


宿に着いて、一息つくと父はそう言って

出かけていった。


「さて坊主、俺たちも出かけるか。」


同室のフリッツさんがそう言う。

部屋割りは、こちらは僕と父とフリッツさん。

もう一部屋に母とミレナさん、それからミリアちゃんとフーシア、と男女別になっていた。

それと、どうやらフリッツさんが僕を呼ぶときの言い方は坊主に定まったらしい。

坊っちゃんと呼んでいたあの頃のフリッツさんは居なくなったのだ。




少しして、宿のロビーに集まった僕たちは町に繰り出した。

宿を出ると、そこは広場から南東に伸びた白い石畳の大通りで、

横には様々な店が並んでいる。

公都の外から見えた色とりどりの屋根は、

この店々だったのだろう。

右を見れば、服飾店に雑貨屋。

左を見れば、鍛冶屋に飲食店。

そして、店と店の間に露店が所狭しとたち並ぶ。

そんな店から、いい匂いが漂ってきて……


グゥゥゥ~~


と僕のおなかが鳴る。


「ちょうどお昼ですし、なにか買って食べましょうか。」


僕たちは露店を回って腹ごしらえをしながら広場に向かった。

ちょっと辛めな肉の串焼きや

野菜をふんだんに使った焼きそばのようなもの、

変わった味の煮物まであったが、

総じておいしいの一言に尽きた。

他のみんなもそう感じているようで、

特にミリアちゃんなんかは口に入れると

目を見開き、手をパタパタ動かしていた。


そうしてはじめて食べる料理に舌鼓をうっていると、

広場に到着した。

広場の真ん中には円形のステージのような物がある。

あれは何だろうと母に聞くと、


「元は議員さんの演説用の舞台なのだけれど、

今日は違うわね。」


母がそう言うと、舞台に十人ぐらいの人がのぼり始めた。

それぞれ木や金属で出来た道具と椅子を持っている。

全員がそれぞれの位置につき、座って道具を構える。

そのあと何もしないので、何だ?と思っていると……

舞台の下の群衆の中から右手に棒を持った男が飛び出して、

舞台に飛び乗った。

そして、右手を振り上げると……


ジャンジャンジャジャジャジャン――――――


大迫力の演奏が始まったのである。




――ダダダンッ


弦楽器や打楽器、木管楽器。

さらにそれをまとめる指揮者の

圧倒的なパフォーマンスが終わり、

舞台から降りどこかへ去って行く楽団を

盛大な拍手を送りつつ見送った僕たちは、

感想を交換していた。

そして、次に行く場所を決めようとしたところで……

問題が起こった。


「さて、次は何処に行きましょうか?

行きたいところがあったら言ってください。」


そんな母の言葉に対し……


「かいぎじょう。」


「魔導具店だな。」


「と…としょかんが……いいです。」


「大市場に行きたいですね。」


と見事にばらけたのである。

そうなるともちろん、


「なんでここまで来て市場なんて

何処にでもあるところなんぞ回らなあかんのだ。」


「魔導具店だってうちの村にもあるじゃない。

そもそもうちだし。」


「だからだよ。公都の同業はどんなものを扱ってるか見てみないと。」


「あ…あの…としょかんは。」


「ごめんね、ミリアちゃん。貸し出し用登録には時間がかかるし、

今からだと本を読んだりする時間は無いから図書館は行けないのよ。

それと、アヤト。会議場は関係者以外は入れないのよ。」


「ええ~。」


「坊主、入れない物は入れんのだ。

ここは諦めておとなしく魔導具店に……」


「「条例の年齢制限忘れている人は黙っててくださいっ。」」


母とミレナさんから突っ込みがはいる。


「ウー、ギャァァァ――」


フーシアも泣き出して状況がさらにカオスになっていく。

そんな時、


「おや、皆さんお久しぶ……大丈夫ですか?」


と声がかけられるのであった。

明日はメンテナンスがあるとのことで、更新を休ませていただきます。

明後日金曜日からまた更新を再開する予定ですので、今後ともよろしくお願いします。。

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