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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
35/141

33 今年の生徒は二人です2

まずは魔力を右手に集める。

そして、目の前の岩に向かって手のひらを向けて……


撃ち出せないっ。


横を見ると、ミリアちゃんも難しそうな顔でうなっている。


「やっぱりそうなるか。」


「オスカー、そりゃそうなるだろ。」


父とフリッツさんがなにやら話しているが、

気にする余裕が無い。

二人で試行錯誤していると、

肩に手を置かれた。


「はーい、ふたりとも、そんな肩肘張らないで、リラックスリラックス。

魔力は意思の力で動かすんだから、イメージが大事なのよ。」


「イメージしてるのに飛んでいかないんだから、

そんなこと言われても……」


「じゃあ、手のひらを前に向けているのはどうして?」


「お父さんがさっきそうやってたから。」


「そこね。お父さんは慣れてるからああいう形でも出来るの。

でも最初は、物を飛ばす道具の形をまねるとか、

ボールを投げるみたいな動作をしてみるとか、

とにかく、魔力を飛ばすイメージのきっかけを作らないと、

いつまでもイメージなんて掴めないままになるわよ。」


なるほど、手の形とか動作とかか、そこは盲点だった。

そういえば去年は父も右手を突き出す動作をしていたな。

あんな感じでやっていくのか?

でも、何かが違う感じがするな。

もっと、何かを飛ばすのに適した形か動作があるような……


考えていたが、何も思い浮かばないため、

しょうが無いから父のようにやるかな~、

と半ば考えるのを放棄しつつ空を見上げると、

鳥の群れが飛んでいた。


あの鳥は何だろな、とか

魔力放出を覚えたら、あんな高いところまで撃ったり出来るのかな?

とかとりとめの無いことを考えていると、ふと思いついた。


飛んでいる鳥の群れを撃つ?

そんな道具が向こうの世界にあったじゃないか、と。


早速実行しようと、岩に向き直る。

ちらりと横を見ると、ミリアちゃんもなにか思いついたようで、

やる気に満ちあふれた顔をしている。


「二人とも準備は出来たようね。

見ていてあげるからやってみなさい。」


言われて、僕は視線を前に戻す。

そして、

腕を前に突き出し、手をギュッと握る。そして、拳を縦にする。

そこから、中指から小指の三本は動かさないまま

人差し指と親指をそろえて真っ直ぐ前に伸ばす。

そして、魔力を右手に集めつつ、親指を上向きに立てる。

ここまで来れば何の形か分かるだろう。

最後に、親指を前に倒しつつ、魔力を……


できたっ。


岩をみると、ほんの少しだが欠け落ちている。


ミリアちゃんの方も成功したようで、目を輝かせている。

そして……

岩に向かって、乱射を始めた。


ミリアちゃんのイメージは何なんだろう。

両手を握って前に突き出している。

バイクのハンドルを握るみたいな……

でも、両手の間は拳二つ分ぐらいだし、腕もピンと伸びている。

何なんだろう?

母の方を見ると、思い当たる節があるのか、


「まさか、フリッツさん……」


とつぶやいた。

なんか、顔が怖いぞー。

って、ミリアちゃん、ストップストップ。乱射は危ないっ。


僕と母の二人で、暴走してしまったミリアちゃんを止めるのだった。

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