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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
一章 アヤトは成長中です
20/141

18 騎士は非力です

三人の元へ戻ると、


「なにやら、ふーふでおたのしみでしたね。」


「だれがふうふだっ。」


アレフがからかってきた。

ミリアちゃんは真っ赤になっている。


「さて、じゃああそぶか。」


「あれ?これについてはきかないの?」


僕がミリアちゃんの魔導具を指さして言うと、

ビートが答えた。


「なにか、じじょうがありそうだからな。きくのはやめだ。」


なんだかんだいって、いい奴らである。


「ありがとう。で、あそぶって?」


すると三人組が水鉄砲を取り出した。


「ぼくはもってきてないし、はやしのなかはあぶないとおもうけど。」


「それはビートにもいわれたから、

はんいはあそこのきから、

そっちのきがあるあたりで

このひらけたばしょだけ。

ちょうどそこにおがわもあることだし。

そんで、やるのはいつものじゃねぇ。」


アレフがそう言うと、ギームがリュックから盾を取り出して渡してきた。


???


「ギームのとうさんは、きしだんいんで、ギームもそれになりたいんだと。

とうさんからのプレゼントだったらしいから、こわすなよ。」


ギームって、騎士団に入りたいのか。

で、盾を渡されて何をしようと?


疑問に思っていると、

三人はフッフッフと不気味に笑って言った。


「いまからやるあそびは……」


「「「『ぞく』と『きし』だ!」」」


賊と騎士?

何その、無駄にかっこいい名前。


心の中で突っ込んでいると、ビートがルール説明を始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「だいじょうぶ?ミリアちゃん。」


「……うん。」


「ごめんね、へんなあそびにつきあわせちゃって、っと。」


「きゃっ。……い、いいよ。」


僕は盾を使って、ミリアちゃんを守る。

すると、今度は二方向から弾が飛んできた。

右から飛んできた弾は盾で防ぎ、もう一方は……くっ、盾じゃ間に合わない、

僕はミリアちゃんの手を引っ張って引き寄せる。

シュッ

弾がミリアちゃんの腕をかすめた。

あ…危なかった。

つい、口から言葉が出る。


「このあそび、きつすぎだろ。」


というのも、この遊び、『騎士』である僕が盾を使って、『姫』(ミリアちゃん)を、

水鉄砲を使って襲ってくる『賊』(三人組)から守るというものなのである。

最初は、


「ミリアちゃんをねらうなんてとんでもない。」


と反対し、ミリアちゃんも僕の言葉にコクコク頷いていたが、


アレフが彼女に耳打ちすると


「……アヤトくんが……かならずまもってくれる。

わたし…おひめさま……アヤトくんは…わたしのきしさま……~~」


こんな感じで賛成し出したのである。

僕以外の全員がやりたいというので仕方がなかった。

そして今に至るのである。


こんな戦力比ではすぐに負けてしまうはずだったのだが、

しばらくの間、相手が作戦を考えてこなかったことと、

防衛地点が小川から微妙に離れていることと、

ギームが寝ることによって、

実質 1(+1姫)対 1(+1水汲み中)(+1ギーム)

みたいなことになり、なんとか守り切れているのである。


しかし、相手が連携を始め、絶妙なタイミングでギームが起きて攻撃を仕掛けてくるようになったので、僕たちは徐々に追い詰められる。


制限時間まで、あと二ミニ程なんだが……っ

ギームの弾をさばいていると、アレフとビートが同時に水を打ち出したのが見えた。


「とどけぇっ。」


僕はアレフの弾の軌道に向かって盾を投げ、ミリアちゃんの方に手を伸ばす。


届いた。


そして、ミリアちゃんを引き寄せるが……


ビシャッ


反動で飛び出してしまった僕にビートの弾が当たる。


「くっ、ここまでか。」


「「「おれ(ぼく)たちのしょ~り~」」」


こうして時間が過ぎていくのであった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


しばらく遊び、今は休憩中だ。


「そろそろくらくなってくるから、かえるころあいか?」


「そうだね、アレフ。」


アレフとビートがそんな会話をし、


「……zzz。」


ギームは寝ていて、


「……あれは………。」


ミリアちゃんは何かをみつけたようで、

ひらけた場所の向こう側にある木の方へ歩いて行く。


よく見ると、その木の下には薬草らしきものが生えている。

入荷が減っているっていうあの薬草みたいだ。


ミリアちゃんは、木の根元近くにしゃがんで、

薬草を観察し始めた、そして……



木の後ろから伸びてきた手に捕まった。

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