14 ミリアちゃんは鬼です
「おっと、もうそろそろ仕事の時間だな。
……ま、頑張れよ。」
そうして、やっと僕はフリッツさんから解放されたのだが……
なにを応援されたんだろう?
疑問に思いつつ
居間に戻ると、
「き…きのうの、……み…せて。」
今度はミリアちゃんに手をつかまれて、連行された。
フリッツさーん、恥ずかしがり屋じゃなかったの?この子。
「きのうの?」
彼女はこくりと頷く。
身体強化の練習のことか。
結構きついのにな、あれ。
ミリアちゃんを見ると……
めちゃくちゃワクワクしてるじゃないか。
一セットぐらいならまあいいかな。
僕は目を閉じて、右手に魔力を集める。
……
次は、左手に集めるが、途中で気になってミリアちゃんを見てみた。
紅い瞳が魔力の流れを追うようにして、左手の方に向いていく。
そして、ミリアちゃんの顔が曇った。
どうしたんだ?
と思って意識を左手に戻すと……
全然魔力が集まってない。
どうやら目を開けるだけで魔力のコントロールが途切れたらしい。
やっぱり、難しいな。
それにしても、ミリアちゃん本当に見えてるんだ。
もう一度目を閉じて、左手に魔力を集める。
そうして、続けて一セットを終える。
「……もっかい。」
へっ?
……も、もう一回ですと………
「もっかい。」
くっ、二セット目。
……
「もっかい。」
また!?さ、三セット目。
……
「もっかい。」
ヨンセットメ
……
「もっかい。」
ご……
……
十セットぐらいして、
ようやく彼女は満足したようである。
頑張れよって言われたのはこれのことか。
そして、ミリアちゃんは
「これ…は、なに?どう…やるの?」
と尋ねてきた。
どうしよう?教えてもいいのか?
というかそもそも教えられるレベルに達してない。
……よし、こういうときは、
「きみのおとうさんにきいてみたら?しってるみたいだし。」
「おとーさん?」
必殺、『助けて~、フリえも~ん』作戦。
「……というわけで――」
「俺を巻き込むんじゃねぇっ。」
「おとーさん、……ダメ?」
「「うっ。」」
ミリアちゃんの涙目攻撃。
効果はばつぐんだ!
こうして、二日目の午後はフリッツさんに教えてもらいながら
ミリアちゃんと身体強化の練習をすることになったのであった。
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午後、店番を奥さんであるミレナさんにまかせたフリッツさんは、
早速講義を始めた。
草原で父から聞いた話とほとんど同じだったので割愛する。
やり方を教わったミリアちゃんとともに、練習を始めた。
なんとか十セットぐらいこなしたところでフリッツさんは言った。
「なあ、どうしてそんなに疲れているんだ?」




