13 フリッツさんは親バカです
フリッツ家二日目
昨日の夜は穏やかで何もなかったはずだ。
何かあったらさすがに覚えているだろう。
でも僕は何も覚えていない、
つまり、お風呂イベントも、夜這いイベントもなかったはずだ。
ちょっと残念に思った君、そもそもミリアちゃんはまだ3歳だぞ。
そんなこと起こるはずもないし、
もし起こったとしても僕がモノローグで語ってしまうほど動揺するわけが……
するわけが……
わけ…が………
あるかもしれない。
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フリッツ家と四人で朝ご飯を食べ、
男二人が食べ終わったところで
「おい坊主。」
フリッツさんが不機嫌そうに言う。
「はい、なんでしょう?」
フリッツさんって僕をそんな風に呼んでたっけ?
「昨日はよくもミリアにあんな物見せてくれやがったな。」
あんな物?あんな物ってなんだ?
えっ、自分からなにかとんでもないイベント起こしてたの?
僕、いつの間にかヤバい人になってたりする?
ミリアちゃんの方をそっと窺うと、
彼女は顔を紅潮させながら興奮した様子で、こちらを見ていた。
なんか、凄く目がキラキラしている。
一体僕はなにをしたんだあああぁぁぁーー
「ちょっと、こっちへ来い。」
僕はフリッツさんに連行されていくのであった。
「おまえ、昨日身体強化の練習をよりにもよって、ミリアの前でしやがっただろう。」
「しんたいきょーかっ、しってるんですかっ?」
僕は前のめりになって聞く。
「あ…ああ、ったく、話の途中だってのに。こういうところはあいつに似てるんだな。」
「あいつ?」
「オスカーだよ、オスカー。」
父のことか。
「話を戻すが、あれはオスカーに教わったんだろ。」
「しんたいきょうかのないようは、ちちに。れんしゅうほうほうは、ははに。」
「周りにだれもいないときに練習しろと言われては?」
「ない。」
「あんの夫婦は~。」
はぁぁぁ~、とフリッツさんは深いため息をつく。
「いいか、今後はそれ人前で練習するなよ。」
と注意された。
「なんで?」
「あのなぁ。もし、人に魔力の動きでも見られてみろ、
なにをやっているか興味持った奴らに質問攻めにされるぞ。
質問攻め程度ならまだいいが、その魔力の動きの意味知ってる奴らからは
……言いたくもねぇ。」
………うん。人前ではやらないように肝に銘じておこう。
「まあ今のおまえが動かせる魔力量だったら、普通のやつは気付かんだろうがな。」
「え?じゃあ、ミリアちゃんのあれは?」
「うちの商売が商売だからな。昔からあいつは俺の仕事よく見てたんだよ。
でも、まあこんな少ない魔力の流れが見えたもんだ。」
ここでフリッツさんの顔がにやけ始める
「俺だってこれぐらいのが見えるようになったのは15、6ぐらいの頃だったのになぁ。
いや~さすが俺の娘。将来が楽しみだな。な、な。」
う……フリッツさんがうざったく思えてきた。
「ミリアは、可愛いだろ。」
そこは同意する。
「でな、この前なんか……」
うんうん、
「……あいつもなかなか頑固なところもあって………」
アー、ハイハイ。
「……そん時ミリアがな………」
ヘー。
……
このあと、フリッツさんの娘自慢?親バカ発言?は二十ミニ程続くのであった。




