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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
二章 アヤトは学生です
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134 店の奥では情報交換です2

 リベルトが話し終え、次に手を挙げたのはネロだ。


「さっきのリベルトの話にも関係するけど、もう既にこの街にも入り込んでるよ。しっかりした数は出せないけど少なくとも三国。長期間滞在するつもりじゃない奴らはもっといるだろうけどね」


 ネロの言葉にこの場に居る全員が険しい表情となる。


「ネロ、その三国っていうのは全部カルバディア連合帝国内の国からか?」


「いや、ひとつは西の海の向こうからだよ」


「あっちからもかよ。こんの忙しい時期に」


 ハァとため息をつくリベルト。


「まあいいか。とりあえずそっちは置いておく。どうせいつものようにうちの大臣たちにちょっかい掛けに来ているんだろう。そんなのに引っかかる阿保どもをあぶりだすのに役立ってるし、放置だ放置。それで、早急に対処が必要なのは残りの二つだよな」


「ええ、残りの二つは西カルバディアと中央カルバディアよ」


 カルバディア連合帝国。その真ん中に位置する中央カルバディア国には、連合帝国を取りまとめる帝国政府がある。そんな中央カルバディアは今までヴァリア公国に対して不干渉だったのだが。


「ついに動き出したってことか」


「ええ、今回の西の軍備も恐らくそういうことでしょうね」


「そうなるとこっちも相当な準備がいるな。警戒レベルをもっと上げるように具申しておくか」


「それがいいと思うわ。それじゃあ、スパイの対策について話し合いましょう」


「あの、ちょっといい?」


 手を挙げたのはルーシェだ。彼女はネロに鋭い視線を向けている。


「ネロさんは情報屋なのよね。でも他国のスパイの情報とかどうやって仕入れているの? どう考えても普通の情報屋には荷が勝つわよ」


「ああ、それは、魔導具技師という立場を利用しているのさ」


 ネロが言うには、たいてい諜報員は他国の商隊に紛れてやってくるとのこと。カルバディアやその他の国とヴァリア公国の国交は断絶していないため出来ることである。商人に偽装したり、荷物に隠れたりしてくる諜報員だが、もちろんヴァリア公国も国境や街の入り口で検問を行っている。しかし、検問でも漏れてしまうことはあり、また商人へのなりすましは見破りようがほとんどない。

 そこでネロは魔導具の修理などを対価に、商隊の人数や荷物などの情報をまとめてもらっているそうだ。本来グレーなことではあるが、騎士団の上の方とは話が通っているらしい。そして、集めた情報と怪しい数値の実地調査を行っている。実地調査についても、荷物についてはこれまた魔導具関連を対価にお店の人と交渉し、倉庫のチェックなどをしているとのこと。

 こうして他国の諜報員の情報をピックアップしているのだ。まあ、商隊以外の方法で入り込む諜報員については分からないのだが……


「かかる労力が少ないからかね。大体この方法で入ってくるんだよ。全く、ばれてないとでも思っているのかね……」


「……そうやって、本命から目をそらすっていう可能性は?」


 ミリアの指摘にネロは笑って応える。


「大丈夫だよ。一応、今言った方法以外でも監視してるからね。……っとさて、話がそれちゃったけどカルバディアの諜報員への対策について話さないかい?」


 テーブルを囲む全員が頷く。


「今回の奴らも、商隊の方で引っかかった。どこかの倉庫を根城にしている可能性は高いけど、そこに引きこもって何もせず捕まるような馬鹿ではないだろう。だから――」


「学会週間を利用する」


 ネロの言葉をリベルトが引きつぐ。


「奴らにとって狙い目の時期だ。そこで動き出したところを捕まえる。そして、この役目は本来三師団が担うが、西カルバディアが動いていることもあって出来れば人は割きたくない。だから、維持隊の方に頼もうと思う」


「維持隊に……ですか」


「最悪戦闘にならないかしら?」


「……練度が足りないと思う」


「まあ、言いたいことはわかる。だから、大丈夫そうじゃない奴らは通常の見回りの方に行ってもらえ。そんでお前ら六人と、実力のある奴らに諜報員の調査をやってもらう。まあ、維持隊の運用テストも兼ねてるしな」

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