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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
二章 アヤトは学生です
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126 翌日には訓練開始です

「それじゃあ訓練を始める。今年ももう少ししたら『あれ』が始まるからな。俺らにもいつも通り依頼が来るはずだ。しっかり鍛えていくぞ。特に昨日ふがいなかった上級生。厳しくいくから覚悟しろよ」


 顔合わせの翌日。授業が終わってから修練場に集合したアヤトたち維持隊員。整列した彼らの前で隊長が腕を組んでいた。


「ねえ、アデク。『あれ』って何?」


「ああ、それは――」


「そこぉっ。私語をするなっ」


 アヤトが隣のアデクに聞こうとしたとき隊長から鋭い声が飛んでくる。


「何か言いたいことがある奴は手を挙げてから言え」


 学生の団体ということで少し気を抜いてしまっていたアヤトも、その言葉でこの隊が事実上騎士団の下部組織のような形になっていることを思い出し、気を引き締め直す。そしてスッと手を挙げ言った。


「隊長」


「なんだアヤト」


「先ほど言った『あれ』とは何でしょうか?」


「そうか、説明しないとな。『あれ』ってのは、学会週間のことだ」


 学会週間。それは毎年春にベルバリア大学にて行われる。その名の通りこの期間のうちにいくつもの学部、分野においての学会が開かれる。他国の研究者も招致し発表しない研究者にも見学を認めているため

、この時期には外国人が増える。そうなればもちろんそこにスパイや工作員なども紛れ込むわけで――


「騎士団も警備に警護、見回りと手が足りなくなるかもしれない。実際に六年前だったかには事件が起きている。それで俺たちに依頼が来るんだ。俺たちぐらいの年齢だったら敵の警戒も緩む可能性が高いしな」


 なるほど、と頷くアヤトたち。理解した様子の彼らを見て隊長も頷き話を進める。


「よし、じゃあ走り込みからだな。お前ら気ぃ抜くんじゃねえぞ」


 隊長がそういうと同時に、副隊長が何本か線の入った地図を広げた。


「今日はこの三つのコースで。三セットですね」


「うげっ」

「重いコース、トップスリーじゃん」


「つべこべ言うな。コーチが認めるような相手だったから仕方ないとはいえ、下級生相手にぼろ負けしたんだぞ。お前らに見返してやるという気概はないのか」


 地図を見てガヤガヤ言っていた隊員たちも根はやはり真面目なのか隊長の言葉に表情を引き締めた。


「班分けは、今まで通り。そこにこいつらを三人ずつ追加する。十五ミニ後に校庭集合だ。怪我したら意味ねえから準備運動はしっかりしとけよ」


 隊長は気合が入った様子の隊員たちを見回し、号令をかける。


「では、準備開始っ」

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