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魔法使いは理系です  作者: 山石竜史
間章 アヤトは新入生です……?
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115 話し相手は赤い男です

 目の前に不機嫌そうな赤い男がいる。


 昼過ぎに今度は家族と一緒でギルドに集まった僕たち。連れて行かれた部屋で待っていると、現れたのは赤い鎧を着た男だった。その男は目の前の椅子にどかっと腰掛けると、僕たちを流し見て「ふんっ」と鼻を鳴らした。そんな男の態度にルーシェちゃんの家族枠で来ていたディーさんが青筋を立てる。他の男性陣、アレフも含めて、多少なりともイラッとしている様子だった。こんな険悪な雰囲気の中爆睡しているギームとうちの妹フーシアは大物かもしれない。


「んで、なんで部外者がいるんだ。代理は認めんぞ。」


 男の発言に全員が首をかしげる。ビートがおそるおそる手を挙げる。


「呼ばれた人とその家族しかここには居ないと思うの――」


「あ゛あ゛?」


「ひえっ、すみません」


 言葉の途中で差し込まれた迫力のある声にビートは引き下がる。迫力がありすぎてミリアちゃんなんかはもう涙目だ。ワーウルフの時ですら気丈に耐えていたというのに。


「早く名乗り出ろよ部外者。書類では、男四人に女二人って書いてあるんだぞ。んでここには男三人に女三人。女の中に居るんだな、代理なんてアホなことやってる奴は」


 女三人?僕の疑問をよそに、男は「おまえか?」と言いながら、ミリアちゃんを睨む。ミリアちゃんはビクッと体を震わせる。次にルーシェちゃんを睨む。ルーシェちゃんは鋭くにらみ返す。その反応に男が唇の端を少し上げるのが見えた。そして、三人目。僕を睨む。


「へ?僕?」


「そうだおまえだ。まさか自分が疑われるなんてあり得ないとでも言いたげだな。その態度怪しい。そうか、おまえが部外者なんだな」


「ちょっと待ってください」


「なんだ?いいわけなら聞かんぞ。こっちへ来い」


 そう言って部屋から連れ出そうとする男に僕は言う。


「あの、僕、男なんですけど」


 男は固まった。


「まじで?」


 そんな男の再確認に「やっぱり勘違いされていたのか。そんなに女っぽいかな」と膝を折り床に手をつく僕。周りには、ああなるほど、と納得の雰囲気。

 納得されるのもなんか傷つくんですが……


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「気を取り直していこうか。まだ名乗って無かったな。俺はヴァリア公国騎士団第三師団所属のリベルトだ。家名については勘弁してくれ。それと所属のほうは口外禁止な」


「秘密もなにも、第三師団なんて聞いたことがないんだけど」


 僕もアレフに同意だ。公国騎士団には、第一、第二師団と第一から第三までの警邏団が存在していて、師団の方は軍のようなもの、警邏団の方は警察のような役目を持っている。

 第一師団は剣や槍、弓矢などの通常武器を主に使う主力部隊。第二師団は攻城兵器などの特殊武装や、特に魔法運用を得意とする支援、高火力部隊。

 警邏団の方は、第一が町に常駐していて、町を守るのが主な仕事。師団は訓練時、非常時以外はこの第一警邏団とともに動いている。第二警邏団は、実際に起こった事件の捜査を担当。第三警邏団は、広域捜査権を持ち凶悪犯罪者の逮捕など重要度の高い任務を負っている異世界版FBIみたいなものだ。

 僕の知識にはここまでしかなく、第三師団などというものには聞き覚えがない。どうやらみんなも同じようで頭の上に疑問符を浮かべていた。そんな僕たちを見てリベルトさんが口を開く。


「坊主達、勉強不足だな。……と言ってみたいところだが、秘密部隊だから知られてたら逆にまずいんだよな」


「秘密部隊ですか」


「ああそうだ。女みたいな坊主」


「やめてください、その呼び方。それで、その第三師団さんとやらがなんの用なんですか?」


 ああ、それはな――

 リベルトさんはテーブルに肘をついて両手を重ね、その上にあごを乗せて言う。


「おまえらの勧誘に来たんだ」

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