110 入学は祝うべきことです
「それでは、三人の入学を祝って。乾杯。」
かんぱーい。その声をあげるのはフォンターニュ家とカルティーユ家、そして暁の旅団だ。
昨日のことですっかり頭から抜けていたが、今日は入学祝いをする日だった。
なぜ、今日なのかといえば、入学式当日とその次の日はフリッツさんが魔力測定の結果をまとめて公都に送らなければならず手が空いていなかったのと、その後は暁の旅団さんが忙しかったのだ。
正直に言えば、早く曽祖父の実験室というものを見てみたかったのだが、すでに決まっていた予定だったししょうがない。父にあの本を返してしまったのでまた今度借りないといけないな。
「そういえば、今日学校に行ったら高学年の教室がごっそりなくなってたけど何があったのかしら。
先生は理由を教えてくれなかったし、アヤトは何か知ってる?
まさかアヤトが今日休んだのと関係ある?」
わいわいとしゃべりながら食事をしていると、ルーシェちゃんがそんなことをいう。
す……鋭い。絶対に事実は伏せておくようにと言われているので、どう答えればいいのやら。
僕が悩んでいると父が口を開く。
「アヤトは昨日俺との約束を破ったから謹慎させていたんだ。学校の件とは関係ないぞ。」
「そうね。あんなのできるのはかなり強い魔獣ぐらいしかいないわよね。もし人がやったっていうのなら怪物ね。万一アヤトだったらって思ったけど杞憂だったわ。」
ははは……。僕は乾いた笑いをあげることしかできない。
その向こうでディーさんが難しい顔をしている。
「魔獣か……。もしこの辺りに強い奴がいるのなら早めに対処しないとな。どれぐらいの規模の討伐隊がいるのか目安を出すから被害状況を知ってる人は教えてほしい。というか今から学校に行ってきていいか?」
まずいまずい、話が大きくなってきてる。
「ディー、行かなくてもいい。俺が対処することになってるからな。」
「そうか、オスカーがやるのか。ならひとまず安心だな。だが気をつけろよ。」
「ああ。……なんか微妙な空気になっちまったな。うーん、フリッツ、なんかして盛り上げろ。」
「俺っ?」
目を白黒させるフリッツさんに、みんなから笑い声が起きる。
そのあと、フリッツさんが面白い話をしようとして盛大に滑ったり、庭でディーさんと父の模擬戦を観たり、母が魔道具を使って氷の彫像を作って見せたりといろいろなことがあって、楽しい半日を過ごしたのであった。




