107 今日は謹慎です2
父に近づいていくと、彼は本を開いている。
あれ?あの表紙はどこか見覚えがあるぞ。
注視していると、父はふと顔を上げてこちらをみた。
「やっぱりアヤトか。勉強は終わったのか?」
「うん、簡単すぎてつまらなかった。」
気付かれていないと勘違いしていたことに苦笑を浮かべながら答える。
「そうか。で、何の用なんだ?」
「本を読もうとしてたらお父さんがここに入っていくのが見えて、
どうしたんだろうと思ってつけてきてみた。」
へぇ、と言って笑みを浮かべる父。
「で、俺が何をしているか分かったのか?」
「本を読んでる……ことしか分からなかった。
その本の表紙もどこかで見たことがあるような気がするんだけど……」
そう答えると、父は目を丸くしている。
「覚えているのか。
あんなに小さい頃だったっていうのに。」
「小さい頃?」
「ああ、今みたいにこの本の研究を居間でやってたんだが、
ちょっと席を外していた間におまえがこの本を見つけて
手を伸ばしていたってメアリーが言ってたぞ。」
……
ああっ、あの時の本か。
初めての探索の時の。
結局中身は見てないけど。
「その本って何なの?」
「おまえから見るとひいお爺さんにあたるな。
ベル爺さんの書いた本だ。」
「魔法を生み出したっていう?」
「そうだ。それで、魔法の基本のこととかいろいろ書いてあるんだが……
大事なところが読めなくなっていたり、謎の模様が描いてあったりする。
例えば、」
そう言って父は本の一ページを開いて見せる。
「魔力特性についての記述なんだが……」
そこにはこう書いてあった。
先ほどの項までで個人個人が持つ――の特性――ぞれ違うことは説明した。
――を使って意図した――を得るためにはその――を調べる必要がある。
そこで、――を発見した時の――から――を使って測定器を作ることにした。
この測定器は――の使用と回路設計により、その――を発光色と数値で表す。
これによって、理論上は全ての人が――を使える事になる。
そして、測定結果の――色を魔力色、数値を――数値と呼ぶことにする。
この仕組みから、この世界で最強の――――の――色は――と予測する。
ところどころ黒ずみが出来ていたり、
インクがにじんだりしていて読めない。
いくらか予測できるところもあるが……
「どこまで分かってるの?」
「最後の行以外は予測で埋めれたんだが、
最後、魔力色が何と予測されているのかだけは分からん。
今までの計測結果とかからすると、多分、紫色なんだろうがな。」
「へぇー。」
「俺はそろそろ戻るが、おまえはどうする?
これ読んでってみるか?」
「うーん、読んでいこうかな。面白そうだし。
そういえば、さっき読めないところ以外に謎の模様がとか言ってたけど
どこにあるの?」
「一部のページの縁とか、最後のページにあったぞ。」
そう言って、本を手渡す父。
「読み終わったら俺のところに持ってこい。
……くれぐれも、汚すなよ。」




