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 私は玖雅明の何も知らない。だからこそ、インタビューにも新鮮さを表現出来るだろうと、私自身も考えていた。ここからは王覇師団の師団長である彼の姿は置いておいて、彼の日常や生き様などを紹介していきたいと思う。


 ――私は仕事上の貴方しか知りません。そのサングラスの下に秘められた日常を教えてください。


「ちょっと大げさじゃないか。僕だって、仕事を抜きに考えると普通のオジサンだよ。特別不思議な事はしていないね。朝の三時に起きて、夜の二十二時に寝るという至って普通の生活だ」


 随分早寝早起きだと私は思った。成功している者は例外なく早寝早起きしているため、ある程度の早寝早起きは予想していたが、玖雅明という人物は思ったよりも素晴らしい生活を過ごしているようだ。


 ――早いですね。起きるのも寝るのも。


「早寝早起きは自分の芯を作る上で必要な事だ。早寝早起きをおこたり、昼夜逆転の生活を過ごしている者に幸福な未来は訪れない。今は大丈夫かも知れないが、必ずボロが出る」


 玖雅明の言葉に、私は激しく頷く。早寝早起きの反対に、遅寝遅起きをしている者は人生の階段を転げ落ち、最後には自律神経が崩壊してしまう。正常な言葉使いが出来なくなり、見た目も生気を失った幽霊そのものとなってしまう。昔、会社の経営者で不規則な生活を送っている者がいたが、彼の会社は間もなく倒産した。二十年以上続く通信販売の会社だったが、彼は自分のスケジュールも管理出来なかった故に、会社全体のスケジュールも把握する事が出来なくなってしまっていたのだ。それに比べ、早寝早起きをしている者は順調に成功への道を歩んでいる。大自然の流れに乗るか乗らないかで、ここまで差が開いてしまう。そのことを、私は長年の記者生活で身に染みて感じていたが、どうやら玖雅明は無意識のうちに早寝早起きが成功への道だという事を、自然体に感じていたようだ。


 ――確かに、早寝早起きは大切ですね。私は記者という不規則で不衛生な仕事をしていますが、それでも朝早く起きるようにしています。寝る時間がどんなに遅くなってもです。


「その心構えは肝心だ。僕の組織にも遅寝遅起きをしている者はいるけど、その者は出世していないからな。師団長自らが、何度も早寝早起きを勧めているのに、当の本人は早寝早起きの効果を疑っている」


 そう、彼の言う通りだった。不規則な生活を送っていると、体力が落ちて目も落ち窪み、視野が狭くなる。そんな状態では出世できなくても当たり前だろう。


 ――二十二時に寝て三時に起きるという事は、睡眠時間は五時間ですか?


「僕はショートスリーパーだからね。その点は早寝早起きに有利で良かったよ」


 ――私は本来ロングスリーパーなのですが、記者の仕事は忙しく、海外出張も当たり前なので、短時間しか眠れません。玖雅明さんが羨ましいです。


「そうは言っても、僕も眠れなくて一時間程度の睡眠時間しか確保できない時もある。その日一日は頭が割れそうで、本来の自分とはかけ離れていて、短気で血の気が多い。社会性も考慮して何とか耐えているが、やはり睡眠不足は辛い」


 いかに、魔法界に名をはせるスーパースターであっても、睡眠不足には勝てないようだ。私は彼が普通の人間であることを再認識して、ある意味ホッとしている。今までは彼の人間離れした功績に、何処か次元の違う存在だと思い込んでいたが、彼は普通に笑い、普通に愚痴をこぼす。彼の言葉を借りると、確かに普通のオジサンだ。


 ――睡眠不足時の自分と普段の自分とは違いますよね。


「だからこそだな。早寝早起きで自分の生活リズムを作らないと大変な事になる。これは僕だけではなく、人類全体に言える事かもしれない」


 彼の言葉を一言一句漏らさずに書き留める私だった。



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