表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/71

メール内容

KRZ48のファンつながりということで…、盛り上がっているじいさんと摸には大変申し訳ないのだが…。

俺達がここに来た理由を考えてみると、じいさんが依田先生から受け取ったらしいというそのメール内容は、情報収集の一環としても見ておいたほうがいいに違いない。

KRZ48内メンバーうつり浮気論…で真剣に、ときには楽しそうに、そして最後には結局…、自分のお気に入りのメンバーに謝罪をしているじいさんと摸の間に割り込むようにして、俺が口を開こうとした、その瞬間…


「KRZ48のことは、ひとまず置いといて。その受信したというメールを見せてもらえませんか?」


美沙が淡々と、そう切り出した。


美沙のその言葉にじいさんはハッとし、摸も自分がここへやって来た理由を思い出したのか、美沙のほうをチラッと見てから、静かに口を閉じた。


「…うむ。そうであった…そうであったのぅ」


じいさんは小さく頷きながらそう言うと、携帯のボタンを器用に操作して、再び俺達の前に、やはり水戸黄門の格さんが印籠をかざすような仕草をしながら、携帯電話の画面を差し出した。


俺達三人は再び顔を寄せ合って、その差し出された携帯画面を見てみる。

すると…そこには…


To:りんすけちゃま

件名:下記参照で~す!

添付ファイル1個 2.0KB


本文:先日は貴重なKRZ48のチケットなんぞを頂いてしまい、誠にサンク~スでした!

夢にまで見た私の推しメン!秋素あきもと さあや ちゃんを…。

直に!生で!KRZ48の聖地!神楽坂劇場にて。

この目にしかと焼きつけて参りたいと思っておりま~す!

今から胸がドキドキとして壊れそうなので~す!

…ところで、凛さんの件についてなのですが、私の代理として添付ファイルの者達を遣わせちゃいま~す!

まだまだ荒削りながら…、それでも一番大切な…そぉう!相手ひとの心の痛みが分かる私の信頼出来る生徒達なので~す!

彼らもまた、凛之助ちゃまや凛さんと同じのうりょくしゃゆえ、ご心配なさりませぬように。

彼らのチカは、やはり添付したファイルにて、ご確認下さ~い!


From:ハイハイ!ハ~イ!

     たの・Y


「…」


「…」


「…」


…俺達三人は軽く硬直したまま無言で、その受信メールを読み終え…た。


…分かっていたこととはいえ、 “ハイハイ!ハ~イ!” の口癖に、最後の “Y” の文字…。

依田先生の下の名前は “頼務” 。

…そう、フルネームは “依田よだ たの” だ…。


…ということはやはり、じいさんに俺達の個人情報を漏らしたのは、依田先生だったのか。

…まぁ、俺達の能力を知っているという時点で、依田先生しかあり得ないといえばあり得ない訳だが…。

それでもこうやってはっきりと確認出来たことは、精神衛生上おそらく良かったはず…だ。


…それにしても、ツッコミどころ満載のメール内容な訳だが、話しを早く進めるためにも敢えてここでは深く追求はすまい…。

例えば…依田先生がKRZ48のファンだった…ということや。

その中での推しメンが秋素 さあやちゃんだった…ということ。

そしてさらには、彼女を生で見たいがために、じいさんが持っていたKRZ48の劇場チケットと…それと引換えに俺達三人に自分の代理として、このミッションをてがった可能性がある、ということなど…。


…携帯画面を見つめたまま、身動きしない俺達三人のその向こう側で


「…という訳じゃ!ちなみに添付ファイルの内容は、純粋にお主らの紹介と能力だけについて書かれておったぞ!じゃからそれ以外の感想は、わしの独断と偏見なのじゃ!」


そう明るくじいさんは言うと、神主服の懐に携帯をしまい込みながら、今度は一転、トーンを落とした真剣な口調で


「わしは、依田先生のことを信じておる…。じゃから依田先生が信じておるお主らのことも信じたいと思う…」


そう言って、俺達三人の顔を瞳を順番にゆっくりと見つめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ