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凛・暗転

……………。

…………。

………。

……。

…。

…どこか薄暗い空間の中で。

瞳を閉じ、まるで赤ちゃんのようにその身体を丸め、両手で優しくそれを抱きしめながら…。

言うことを聞かなくなった…どこか遠くに感じる自分の外側にある変化してしまったもう一つの身体を、それを操る悪鬼を。

何とか雨宮神社へと誘導しようと凛が、その場で独り懸命に念じ続ける中…。


…突然ふいに、その場に渦巻くようにして強い感情が。

まるで激流のようにしては、凛のそんな中に流れ込んで、くる。


…。

凛は…その強い感情に押し流されないように、自分自身を保とうと。

そのままの状態で、唇を小さくキュッと噛み締め…必死にそれに耐える。

そして耐えながらも…渦巻くその強い感情に触れ、それを全身で感じ取ってみれば。


…。

…そこには。

美しく長い黒髪を後ろで一つに束ねた、温和で優しそうな女性の笑顔の画像ビジョンが、一瞬映し出されたかと思うと…。


…。

つう

…お通。

ナゼワレヲ…裏切ッタ…。

ナゼ…我ヲ…。


オ前ガ…。

憎イ…。

我ヲ裏切ッタ、オ前ガ…。


アイツガ…

憎イ…。

オ前ヲ奪イ去ッタ、アノ男ガ…。


聞き慣れた…不気味でしゃがれた、そんな声と共に…。

そしてここで再び、今度はまげ姿の羽振りの良さそうな、おしゃれな紋付もんつきはかまに身を包んだ男性の、見下し勝ち誇ったかのような表情かおの画像が、同じように…そこに一瞬映し出されたかと思うと…。


…。

憎イ…。

憎イ…。

我ヲ裏切ッタ、オ前ガ…。


憎イ…。

憎イ…。

オ前ヲ奪イ去ッタ、アノ男ガ…。


憎イ…。

憎イ…。

潜在下デ、邪魔ヲスル…カ。


憎イ…。

憎イ…。

マダ完全デハナイ、コノ身体ヲ…。


憎イ…。

憎イ…。

雨宮神社ヘ行ッタトコロデ、ドウナルト イウノダ?


憎イ…小癪ナ…。

小娘メ!


憎イ…。

憎イ…。

ソコデ何モ出来ズニ、見テイルガ良イ。


憎イ…。

憎イ…。

アノ老イボレガ、死ニユク ザマヲ。


憎イ…。

憎イ…。

スベテノ人間ガ、苦シミ モガキ、死ニユク ザマヲ。


憎イ…。

憎イ…。

ソコデ独リ、何モ出来ズニ 見テイルガ良イ!


…。

憎イ…。

憎イ…。

我ハ、憎イ…。


憎イ…。

憎イ…。

我ハ、憎イ…。


憎イ…。

ゆるサヌ…。

我ハ、赦サヌ。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

スベテノ幸セヲ。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

スベテノ人間ヲ。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

スベテノ幸セヲ 壊シテ…ヤル。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

スベテノ人間ヲ 殺シテ…ヤル。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

生キトシ生ケル スベテノ モノヲ。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

我ヲ裏切ッタ、人間ヲ。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

スベテノ…モノヲ。


憎イ…。

憎イ…。

我ハ、憎イ…。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

我ハ、赦サヌ。


憎イ…。

憎イ…。

我ハ、憎イ…。


赦サヌ…。

赦サヌ…。

我ハ、赦サヌ。


憎イ…。

憎イ…。

赦サヌ…。

赦サヌ…。

憎イ…。

憎イ…。

赦サヌ…。

赦サヌ…。

欲シイ…。

欲シイ…。

悲シイ…。

寂…シイ…。


憎イ…。

赦サヌ…。

我ハ…我ハタダ…。

タダ…。

…。


…凛が、その先の感情に触れようとした次の瞬間。

全身に、弱い電流のようなビリビリッ…とした衝撃が走ったかと思うと。

金縛りに掛かったかのように、すべての感覚が麻痺し。


“グオッ~~~!!”


…という獣の咆哮にも似たような、そんな叫び声と共に。


“凛よ…すまぬ…”


囁くように悲痛な声が…大好きで慣れ親しんだその声が。

…どこか遠くのほうでしたかと思うと。

まるで…テレビの電源ボタンをオフにするように意識が遠のき、そこで途切れ。

凛は…何も見えない暗闇の中に、そのままゆっくりと堕ちて行った…。

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