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校門前 ~再集結~

To:囁聞くん,美沙ちゃん

件名:凛ちゃんに動きあり!です

本文:今からすぐに校門前に集合ぅ~!

From:みうう推し 摸


夜中の0時、摸から突然届いたこのメールに。

俺が寮の自分の部屋から急いで飛び出して、神楽坂学園の校門前まで走って行くと。

…そこには、美沙と摸の二人が既に待っていて。


「囁聞くぅ~ん!ここですぅ~!」


いつものように摸が、脳天気な声でそう叫びながら…軽く手を振って、遅れてやって来たそんな俺のことを迎え入れてくれる。

少し息を切らせて、二人に駆け寄った俺が


「…悪りぃ、待たせちまって…」


ボソボソッとそう言うと。

…美沙は、緊張した面持ちで腕を組んだまま、そんな俺のほうをチラッと見てから、すぐにその視線を警戒するように校門の中、真っ暗な学園のほうへと向けてしまい…。

一方、摸はといえば


「美沙ちゃんがぁ、一番乗りでぇ…僕もついさっきぃ、来たところですぅ~」


そうのんびりと言ってから。

校門前にポツリと一本だけ立つ、薄暗い外灯の下。

何かに気がついたように俺の顔をまじまじと見つめて


「あれぇ~?囁聞くぅ~ん、目の周りが腫れていませんかぁ??」


不思議そうに、そう言う。


…。

夢を見ながら、涙を…流した。

ついさっきまでいた寮の自室のベッドの上で…。

そのときのことを思い出しながらも俺は、咄嗟に


「…そ、そうか?ね、寝起きだから…かな?」


摸から軽く視線を外しながらそう言うと、続けて


「…で?…雨宮…は?」


“凛ちゃん” …そう呼ぶことを心のどこかで半ば諦めた俺が、自身の目の周りが腫れている…というその話から話題を逸らすように、名字であるその名をボソボソッと呼び、現況を尋ねる。


「美沙ちゃんにはぁ、もう言ったんですけどぉ~、凛ちゃんはぁ…学園の中、こっちにいますぅ~!」


摸は得意気にそう言って。

左右に大きな石の門が立ち並ぶ、その右側の方の門に “神楽坂学園” …そう、青銅色に変色してしまっているプレートが…おそらく、キレイに磨き掃除すれば立派に光り輝けるであろうそれが、掲げられている…大きな二つの門の間を、普段登下校するときに、何気なく通り抜けている正門であるその間を通り抜けて。

学園の中へ足を踏み入れようとした、まさにそのとき…。


「ちょっと待って!」


それまで無言だった美沙が、やはり緊張した面持ちで、声で、摸を、そしてさらにその後に続こうとした俺を、引き止めるように口を開いては


「風谷くん、土屋くん、あたし達やっぱり…間違ってない…かな?」


真剣な眼差しでそう言って


…??

そんな美沙のことを、俺と摸が、不思議そうな眼差しで見つめ返したのを、まるで確認でもするかのように


「…これから、凛さんに会ったとして、夕方に会った凛さんと同じならいいけど…。でも、もし、凛さんが…既に、異形の者に、悪鬼に、その身体を乗っ取られてしまっているとしたら…」


組んでいたその腕を解きながら…


「やっぱり危険過ぎるわ。凛さんのおじいさまか、依田先生に連絡をしたほうが…」


続けてそう言うと


「…あれから学園の図書室で、凛さんの胎内から悪鬼を追い出す方法を…その身体と分離させる方法がないのかを…何か、あたし達の切り札になればと思って、その解決策を調べていたんだけれど…」


そう言ってから小さく俯いて、そのまま黙り込んでしまう。


…。

…そう、だったのか。

だから美沙は、寮には戻らず学園の図書室に一人で…。

でもその様子からすると…残念ながら、その方法が見つからなかった…という訳なんだな。

…。


俺はそんな美沙を見つめながら、何の策もなく考えも持たず、摸の後について、雨宮のいる場所へ安易に向かおうとしてしまった自分に…。

…そして、今更ながら誰か大人に連絡するという美沙のその意見が、あまりにも的を得ていて、三人でモクドナルドで話し合ったことが再び思い起こされ…どこか悩み躊躇するように、 “迷い” という気持ちが…心の中でふらふらと、小さく生じ始め…る。


「…」


「…」


俯いたままの美沙と、そんなことを考え始めた俺が無言となり…。

いつの間にか目に見えない “迷い” …という名のモヤモヤとした霧が、俺達三人の周囲に立ち込めるようにして湧き出してきた、まさにそんな空気の、中…


「でもぉ~!僕は凛ちゃんにぃ、会うだけ会ってみてもぉ…全然いいと思うよぅ~?凛ちゃんにぃ、会いたい人ぉ~!…はぁ~い!!」


…そんな霧も、空気も…まったく、全然、見えませ~ん…いや、存在すらしてませ~ん…というように、相変わらずの空気の読めなさで…摸が、一人脳天気に挙手をしながら…俯いたままの美沙と、迷いという霧の中で今更ながら彷徨い始めた、そんな俺の顔を交互に見つつ、そう言葉を投げ掛け、朗らかに同意の挙手を…求める。


「…」


「…」


そんな摸の言葉に、小さく俯いて黙ったままの美沙と。

ことがことなだけに、そう易々と挙手が出来ない俺が、無言のまま…一人脳天気に手を上げ続ける摸に、何と言っていいのか…同意も出来ず、さらには視線も向けられずにいると。

…そんな俺達二人のことを摸はやはり交互に見ながら、挙手していたその手を静かに下ろして


「…。僕ぅ…思うんだぁ…。僕にはぁ、何も出来ないけれどぉ…。辛い時だからこそぉ、何も考えずにぃ…せめて少しでもぉ…凛ちゃんの側にぃ、一緒にいてぇあげたいんだぁ…。…例えそれがぁ、無謀なことでもぉ…間違っていたとしてもぉ…僕に出来る限りでぇ力になってぇ、あげたいんだぁ…」


どこか…自分自身に言い聞かせるようにのんびりとそう言ってから、ふいにまだら模様の曇り空をゆっくりと見上げて


「だってぇ…いじめられっ子だった僕にぃ信頼出来る友達がぁ、二人も出来たぁ~!そして今ぁ…縁あって出逢えたもう一人の友達がぁ、クラスメイトで同じ能力を持った仲間がぁ、悩み苦しんでいるぅ…。…だからぁ、僕はぁ…今、凛ちゃんに逢いたいんだぁ~、きっとぉ、 “今” …今じゃないとぉ、ダメなような気がするからぁ…」


やはりのんびりと、でもとてもしっかりとした口調でそう言うと。

再び俺と、いつの間にか顔を上げてそんな摸を見つめていた美沙のほうに顔を向けて、そのポッチャリとした顔で優しく静かに微笑んだ。

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