摸 ⑥
寮の自室のPCの前に座って、僕は
「Jぃ・Kぃ・Jぃ…48ぅ~?」
読み上げるように小さく、そう口に出してから。
目の前の液晶ディスプレイの中に広がる、ちょっとダークな渋い感じのそのサイト上部中央に掲げられた、 “JKJ48” というホワイトシルバーの大きな文字達を…それに続く説明文を、興味深げにゆっくりと目で追い掛け始める。
…。
すると、そこには…。
“みんな、お待たせ!
みんなが待ちに待ったKRZ48の初姉妹ユニット、つ・い・に、誕生!!
プロデューサー春元 易 先生の長年の大構想が…今、実現する!?
KRZ48ファンの人も、そうでない人も、ぜひぜひこの機会に熱いエールをお願い致します!
JKJ48のこれからの躍進は、これを見ている君達一人一人の力強い支えと真摯な協力と共に!!
気になるそのメンバーの一覧と詳細な紹介文は…〈→コ・チ・ラ!〉
KRZ & JKJ48事務局スタッフ一同より ”
…!
…こ、これはぁ!
僕はそのサイトの説明文を一通り目で追い掛け終わると。
興奮で身震いするような感覚を全身に感じながら。
ファンの人も、そうでない人も、って書いてあるけれどぉ…。
頬が紅潮してくるのが、自分でも分かる。
そんなことは…どうでぇもうぃぃ~!!
KRZ48ファンならば…いや、あのKRZ48を産み出した、僕が心の中で密かに師と仰ぐ、春元 易 大先生のプロデュースであるというのならば…。
これは絶対に、確実に、見ておかなければ、仕入れておかなければならない、 “大事な情報源の一つ” でしょぉ~う!
う、ふふふふふふふふ…。
…。
…純粋に、その初姉妹ユニットのメンバー構成や顔ぶれが “見て、みたい” …という気持ちを。
ファンの一人として仕入れておかなければならない “大事な情報源の一つ” …という言葉に勝手に置き換えて、僕は。
PCの前で怪しく一人ニヤつきながら…。
…それに、何と言ってもKRZ48の初姉妹ユニット!!
これはきっと、僕と同じような童顔ポッチャリ体型で、どこか子だぬきポンポコリン(…おそらく、子だぬきのように可愛らしくて愛らしい…という、摸なりの愛情表現だと思われる…が、今一意味は不明である)のような…超可っ愛うぃぃ、春元 易 大先生本人にも負けず劣らずの…いや、それ以上の、もの凄く可っ愛うぃぃ、おNewな女の子アイドル集団に、違いぬぅわぃ!!
…もう、KRZ48ファン(推しメンはみうう)なのか、それとも実は、それをプロデュースしている童顔ポッチャリ、子だぬきポンポコリン、の春元 易 大先生のファンだったのか。
興奮のあまり少し混乱し、訳が分からなくなった僕は。
それでもどうしても、“見て、見たい”…というその誘惑に、やはり打ち勝てずに。
…。
ついさっきまで、 “過去の大切な記憶” …という夢の中で、確かに出逢っていたはずの幼いみううに対して。
…そして今や、全く僕の手の届かない国民的アイドルグループの一員となってしまった、現在進行形、絶賛片想い中、My推しメン、My心の支え、僕と同じ悩み多き思春期のお年頃、今度の選抜総選挙も必ず投票するからね!…の、素敵すぎるくらい素敵に成長してしまったみううに対して、少しの後ろめたさを感じつつも…。
自分の本能の赴くままに僕は、 “〈→コ・チ・ラ!〉” …の、その文字の上にそっとマウスポインタを重ねると、後ろめたさからくる少し震える指で、静かにそれをクリック…した。
僕が、 “〈→コ・チ・ラ!〉” …の文字を、少し震える指で静かにクリックをしたその瞬間。
サイトがスッと切り替わり、一面真っ暗な画面が、目の前に映し出さ…れる。
……………。
…………。
………?
……。
…。
…??
…僕が不思議そうに、その真っ暗な画面を凝視していると。
突然…。
“J” !
…トトトン♪
“K” !
…トトトン♪
“J” !
…トトトントン♪
“…48” !!
ドラムが打ち鳴らす軽快な音を間に挟みつつ、チャラい男性のDJが叫ぶようなそんな声と共に。
真っ暗だった画面の中央からホワイトシルバーの “J” 、 “K” 、 “J” 、 “48” …という特大な文字達が、まるでサイコロを転がすようにこちらに向かって、クルクルと回り飛んでくるような感覚で、僕の目の前で、ディスプレイの画面の中央に順番に、横並びに一文字ずつきれいに並び配置されたかと思うと。
次の瞬間、まるでその先へ誘うかのように、一瞬眩いばかりの光りをその場で解き放ち…。
それからもったいぶるかのように再び、サイトが静かに切り替わり。
…ピンクやスカイブルーなど、明るいパステル調の色彩をふんだんに取り入れたKRZ48のそれとは違い、やはりちょっとダークな渋めな感じの落ち着いた大人な色彩のサイトが、そこには映し出されて…。
…。
僕は逸る気持ちを抑え、その画面を興味津々に見つめたまま。
JKJ48ってぇ、一体何の略なんだろぉう…。
呑気にそう思っていた、次の瞬間。
ピアノの弾き語りのような…落ち着いた、でもどこか昭和ロマン漂う物悲しいメロディーが、液晶ディスプレイの両隣に置いてあったスピーカーから突如、大きめの音で鳴り響き始め…。
「…うぎゃっ!!」
その突如、鳴り響き出した物悲しいメロディーに驚いて僕は、ビクッ!…と全身を波打たせるかのように小さく震わせてから、そんな叫び声を上げると
「…び、びっくりですぅ~」
続けて思わず、そう声に出してから。
鳴り響き続けているそんなスピーカーを一瞬見つめ、気持ちを落ち着かせるためにその場でフゥ~と小さく肩で息を吐き出してから、目の前のディスプレイの中で一体何が起こっているのだろう…と、その画面に視線を戻した、まさにそのとき。
部屋中に鳴り響き続けている昭和ロマン漂う物悲しいそのメロディーに乗せるようにして、何とも言えない甘ったるい、まるで美少女アニメの主人公の声色のような…そんな女の子の声が、目の前に映るJKJ48の…ダークで渋いそのサイトの紹介文を、何の前触れもなしに朗読するかのように読み上げて…僕の耳に届け始めて、くれる…。
“ねぇねぇ、君はまだ、KRZ48…一筋、なの?
ヤングで、ナウ…そんな、周りのみんなと同じような…そのまんまの当たり前の “48” …で、君は本当に…満足、なの?
…さぁ、今すぐ目を覚まして!まだ…間に合うわ!!
時代は、今、見たこともないアイドル達の世界へ…。
激動の時代を乗り越え、日本を影から支えてきた、内助の功。
まさに貞淑な、日本の鏡…達…。
その輝きと反射力は永遠の瞬間が訪れるまで…一秒足りとも色褪せない。
あなたのすべてを…映して、あ・げ・る。
…さぁ、今すぐ一歩を踏み出して!レッツゴー、 トゥギャザー ナウ!!
君をそこで待つのは…48人の選び抜かれた精鋭達!
…まさに!今まで感じたことのない、燻銀の輝き。
…さらに!今まで経験したことのない、極上のアダルティー。
今すぐ君に届け!
誉れ高く、誇り高く、今、ここに…J・K・J・48・参・上!!”
…この、何とも言えない甘ったるい女の子の、でもどこか鬼気迫る音声解説付きの…紹介文が、一通り流れ終わった、後。
再び画面が静かに切り替わり、サイト上部に、 “春元 易プロデュース!” …という大きな文字が現れ。
それと同時に…JKJ48メンバーの顔写真付きの自己紹介文が、一人一人羅列されるように順番に表示されて、いく。
…。
僕は…それを呆然として見つめたまま。
“JKJ48” …というアイドル集団のその存在意義が、コンセプトが…凡人であるがゆえに、今一呑み込めず…というか、まったくもって理解が出来ず…。
…。
ある意味、マニア向けのアイドル集団なのかもぉ…。
そう…心静かに思いながら、次々と表示されていくそのメンバー一覧を、愕然と、でもどこか目が離せずに、硬直したかのように、PCの液晶ディスプレイの前で動けずにそれらを見つめていると。
…。
…あれ?
…ぅん?
…ぅええっ~!?
次の瞬間、僕は、そこに映し出されていたメンバーの内の一人に、ふと目が止まり。
「こ、これはぁ~!!」
硬直から逃れ、悲鳴にも近いそんな声を発しながら。
目に止まった、そのメンバーの顔写真と自己紹介文を急いでクリックし、拡大表示に…してみる。
…。
僕は、その拡大表示された画面を真剣に見つめたまま。
…。
…おそらく、間違い、ない。
名字も名前も同じだし、顔もどことなく似ていて…。
…。
年上の方に、こんなこと言っていいのかは分からないけれど。
歳の割には…超、可っ愛うぃぃ!
…そう呑気に思いながら、ほんの数秒間考えを巡らせた、後。
思い立ったように印刷ボタンをクリックして、拡大表示されたその画面をプリントアウトし始める。
…。
明日学校で、囁聞くんと美沙ちゃんに一応報告しておこ~うぅ。
“ジィ~…カタカタカタカタカタ…”
部屋の中に、プリンターからそのメンバーの顔写真と自己紹介文が、プリントアウトされるそんな音を聞きながら。
KRZ48を、そしてこんな斬新な姉妹ユニット…JKJ48を、自ら創り上げ、世に出そうとしている春元 易 大先生は、やはり凡人には理解出来ない、心の師と仰ぐには畏れ多いくらいの…まさに、雲の上の “神” プロデューサーだったぁ~!
心の中で拝むように、改めて。
そう…強く強く思う、僕なのであった。




