美沙 ③
「おぉ~、美玖ちゃん!やっと見つけたよ~、誕生日おめでとう!そして今夜はお招き頂いて、本当にありがとう!!」
お母様の遠縁だという見たこともないおじさんが、左脇に抱えていたピンクのリボンのついた大きなプレゼントの箱を美玖に差し出しながら…とびきりの笑顔で、でもどこか浮かれすぎの足取りで、そう言う。
美玖とあたしは、お揃いの黒いドレスだけれど、その区別がちゃんとつくように、あたしは黒く長いストレートの髪に、簡単に櫛を入れただけで…。
それに比べて美玖のほうはといえば、豪勢にその長い髪をアップにして、さらにその上には可愛いらしい黄色リボンを乗せるようにしては、飾りつけて、いる。
…そう、どこからどう見ても今日の誕生会の主役は、同じ双子だといっても、一目で美玖のほうだと分かるようになっているのだ。
おじさんが差し出したその箱を、美玖は抱え込むようにして両手で受け取りながら
「ありがとうございます。楽しんでいって下さいね」
…そう言って、可愛らしく微笑む。
美玖のその言葉に、おじさんは嬉しそうに
「いやぁ~…名門 黒川家の跡取り候補の美玖ちゃんの誕生会に呼ばれるなんて…遠縁といっても弱小魔術家のうちとしては、本当にありがたいことなんだよ~!」
そう陽気に言ってから、どこか危なげなふらふらとした足取りで…美玖の横顔に、その左耳に、自分の顔を素早くそっと近づけては
「美玖ちゃんが跡を継いだ暁には…うちのことも、ぜひ…」
そう…囁いて、いる。
美玖はその囁きに対して、肯定も否定もせずにただ微笑んで見せると…そのおじさんに向かって小さく会釈をしてから
「…姉が、退屈していますので」
そう言うが早いか、あたしの左手を取り、そのまま強引にそれを引いて…パーティールームの隅にあるドリンクコーナーへ…人混みをかき分けながら、ズンズンと向かって…行く。
…。
美玖に強引に手を引っ張られてドリンクコーナーへと着いたあたしは、繋いでいたその手をそっと離すと…真っ白なクロスの掛かった大きなテーブルの上に並ぶようにしては置いてある、たくさんのドリンク類の中から、オレンジジュースのグラスを手に取っては
「確かに退屈はしてるけど…あたしをダシに会話を切り上げるのは、やめてくれる?」
不満そうにそう言ってから、手にしたオレンジジュースのグラスをそっと口に運ぶ。
美玖はそんなあたしに向かって
「だって…みえみえなんだもの。あたしが黒川家の主に納まったら、自分の家を黒魔術協会の役員家として、推薦して欲しい…ってことでしょ?」
そう言って小さく溜息をついてから
「…せっかくの十三歳の誕生日なのに、声を掛けてくるのはあんなのばっかりよ?しかも…さっきのおじさんなんか、既に出来上がっていて…ふらふらしてる上にお酒臭いったらもう…」
美玖は少し表情を歪めながらそう言うと…。
遠くのほうで…たくさんの人に囲まれて談笑している両親の姿を、賑わいと欲望が同時に渦巻いているこのパーティールーム全体を、軽く見回してから…。
…そのおじさんから貰ったピンクのリボンがついている大きなプレゼントの箱を、それをあたしに向かって放りつけるようにしては、投げ渡す。
あたしはそれを落とさないように、慌てて胸全体で受け止めるようにしながらキャッチをすると
「…まぁ、しょうがないわよ。うちは協会でも色々と大きな決定権を持っているんだし。それに…役員家に選ばれれば、 “黒魔術 研究補助費” として、お金もたくさん手に入るんだから」
そう言って、プレゼントの箱を受け取ったときの勢いで、グラスの中で踊るオレンジジュースを…一口しか飲んでいないそれを…廃棄用のテーブルの上に置いてから、少しでも美玖にとって、この誕生会のパーティーが楽しい時間になればと思い、優しく微笑んで…見せた。
美玖はそんなあたしの微笑みに、釣られるようにして微笑むと
「そうよ…ね、分かってはいるんだけど…。でも…まだあたしが跡取りになるかどうかなんて分からないんだし、それに…」
美玖がそう口を開いている最中に…。
…それを遮るかのようにして、突然
「美玖ちゃ~ん!おじさんのプレゼントは気に入らなかったのか~い?」
…さっきのおじさんが、ふらふらとした足取りで、再びあたし達二人の前に、現れ…た。




