石段
単位取得のことも含めて、ミッション遂行のため善は急げと、俺達三人は部室から飛び出し、依田先生の指示通り学園近くの雨宮神社へ向かうため、その長い石段を一段一段登っていた。
俺の前を行く先頭の美沙は、軽々と石段を登って行くが、俺の後ろ…最後尾の摸は、そのポッチャリ体型のせいか、肩で小さくハァハァ息をしていてとても辛そうだ…。
そんな状況の中…。
三人とも無言で、まるで登山家にでもなったような気分でモクモクと長い石段を登っていたのだが…。
…ついに
「…ハァハァ、二人ともぉ~、待って下さいよぉ~」
そんな情けない摸の声が、後ろのほうから微かに聞こえてきた。
…いつの間にか石段を登り切った美沙は、そんな摸を見下ろすように
「これくらいの石段で…情けないわねぇ…。そんなんじゃ日が暮れちゃうでしょ?さっさと登って来なさいよ!」
そう厳しい口調で、叱咤激励?している…。
…その間に、俺もやっと最後の石段を登り切ると、そこにそびえ立つ苔のむした立派な石の鳥居を見上げて
「 “雨宮神社” …か」
…と、その鳥居の中央部に掲げられている、細長い瓦のようなプレートに書かれていた文字を口に出して読んだ。
「…108段」
隣で美沙が、ボソッと呟くように言う。
俺が視線を投げかけると
「…この石段、登りながら数えてたんだけど…全部で108つ…煩悩の数なのね」
美沙が応じるように、そう答える。
「へぇ…除夜の鐘みたいだな」
俺はそう言うと、何とか石段を登り切り、ハァハァと苦しそうに息をしながら目の前で座り込んだ摸をそっと見つめた。
「さぁ!行くわよ!」
摸の到着を確認すると、美沙は鳥居を潜り抜け境内の隣にある母屋のほうへ、もう既に歩き始めている。
「えぇ~?ちょっと休みましょうよぅ~」
そんな弱々しい摸の声が聞こえてはきたものの…。
それは美沙に物の見事に無視され…。
「…ほら、行こうぜ」
俺はそう言って、摸に手を差し出し助け起こすと一緒に並んで、美沙の後を追いかけ始めた…。
…そして俺と摸が母屋へと到着したときには既に、美沙は母屋の玄関前で呼び鈴を鳴らしているところで…。
呼び鈴を鳴らしてしばらくすると…。
格子状の扉の向こう側で、トタトタと誰かの足音が近づいて来たかと思うと
「どちら様ですかのぅ?」
そんな声と共にガラガラッ…と扉が開かれた。