囁聞 ②
“…カランッ…カランッ…カランッ…カランッ…カランッ…カランッ…カランッ…”
次々と転がっていく空き缶を見つめながら、俺が得意げな表情で男の子達のほうへ顔を向けてみれば…。
男の子達は、転がっている七本の空き缶を呆然とした表情で見つめながら、言葉を失って…いる。
それでも俺は、このゲームに勝利したことで、とても誇らしい気持ちと優越感…そして、満足感で心がいっぱいになっており…。
男の子達のそんな様子には、あまり目がいかずに。
…やった!
俺の勝ちだ!!
どうだ!凄いだろう?
俺が本気を出せばこんなゲーム、簡単に勝つことが出来るんだ!
そう…意気揚々と思っていた、次の瞬間。
「…今の、どうやってやったんだよ…」
男の子達の中の一人が、訝しげな瞳で俺を見つめながら…そう言う。
“今のは…”
俺がそう口を開こうとしたとき…。
「石、投げてもいないのに…空き缶全部、倒れた…」
別の男の子が、今度は怯えるような瞳で俺を見つめながら…そう言う。
俺は、男の子の怯えるように向けられたその瞳に、誇らしい気持ちも優越感も…そして、満足感もすべて…。
…すべての傲りの感情が、一瞬で吹き飛んで
“いや…違うんだ、今のは…”
まるで、金魚のように口をパクパクとさせながら、何とかその言葉を音にしようとするのだが…なぜだか声が、出て…こない…。
「こいつ…ひょっとして、宇宙…人?俺達とは…違う!?…人間じゃない!…そうだ!きっと宇宙人だ!宇宙人が人間に化けているんだ!」
さらに別の男の子が、口をパクパクとさせているそんな俺のことを指さしながら、そう叫ぶと。
再びまた別の男の子が
「逃げろ~!宇宙人に捕まるぞ~!捕まったら解剖されちゃうぞ~!!」
そう叫ぶが早いか、俺に背を向けて…急いで走り出す。
その小さな背中に向かって、周囲の男の子達に向かって…俺は必死に首を左右に大きく振りながら
“…違う!違うんだ…今のは…俺は…違うんだ!”
そう言葉にしようとするが…やはり声が、出て…こない。
そんな俺を独り取り残して、男の子達はキャーキャー言いながら、蜘蛛の子を散らすように俺から離れて行き…少し離れた所で再びみんな一ヶ所に集まると。
ゴニョゴニョと楽しそうに全員で何かを囁き、話し合った後…。
次の瞬間、一斉にあどけない愉しそうなその瞳でこちらを見つめて
「お前となんかもう遊ばね~!」
「宇宙人!」
「こっちに来んな~!」
「バケモノ!!」
「あっち行け~!」
口々にそう…叫び始める。
俺は、口をパクパクとさせたまま必死に首を左右に振り続けて…その言葉に、その瞳に、怯えたように…二~三歩、後ずさりながら
“ち、違う…今のは、違うんだ…聞いてくれ!…単なる “風” …そう、単なる風が偶然に…だから…お願い…仲間外れに、するな…しない、で…そんな瞳で…見るな…見ない、で…お願い、お願い…だから…みんな…一緒に遊ん…で…、俺…僕は、みんなと同じ…なん…だから…同じ “人間” …なんだ…から…同じ…同じ…同じ…同じ…”
声にならないその声を何とか風に乗せようと…。
でもいつしか…繰り返し耳に届く、その叫び声達から逃れようと。
そして…心の中に突き刺さる、あどげなく愉しそうなその瞳達から逃れようと。
俺は必死に両手で耳を塞ぎながら…そのまま瞳をギュッと閉じて、うずくまるように…その場にゆっくりとしゃがみ込んだ…。




