黒髪とメモ用紙
黒焦げになりながら座布団の上に倒れ込み、ヒクヒクと痙攣をしている…そんな摸を尻目に、話題を変えるように美沙が
「さっきからずっと、思っていたんだけれど…凛さんの髪って、とてもキレイ…」
雨宮 凛の肩まで伸びた、黒く艶やかな髪に目をやって…そう言う。
雨宮 凛は、美沙のその言葉に恥ずかしそうに小さく首を左右に振るが…どことなく嬉しそうだ。
美沙は、そんな雨宮 凛に優しく微笑んで
「…良かったら、少し触らせてもらっても…いい?」
そう言うとさっさと立ち上がって、雨宮 凛の近くまで移動し、その隣りに…静かに座った。
…そんな美沙を見て、恥ずかしそうにしながらも雨宮 凛は、小さく頷いて、見せる。
「ありがとう…」
美沙はそう言って、雨宮 凛の頭に…髪に…右の手のひらで、一瞬触れたかと思うと。
次の瞬間、ピクッ!…と、それを少し浮かせるようにしては、離し…。
…今度は意を決したように、櫛で髪をとかすように指先をその中に入れて…そのままゆっくりと、といた。
…。
…俺は、そんな二人の様子を見つめながら、女の子が女の子の髪の毛を触っている光景が、こんなにも色っぽいものだったとは知らずに…少しドキドキとしながら、俺も雨宮 凛の髪に手櫛をしてみたい!…美沙の奴いいなぁ…羨ましいなぁ…などとバカなことを考えて、いた。
「…指通りもいいし、本当に素敵な…髪。あたしのなんて、すぐに傷んじゃって…」
美沙はそう言いながら、手櫛をしていた雨宮 凛の髪の毛を自らの手の中から解放すると、ショートカットの自分の髪の毛を一本つまんでみせる。
すると…雨宮 凛が、エプロンのポケットの中にしまい込んでいた、可愛い花柄の描かれたメモ帳と、犬か熊か…それとも将又パンダなのか?…そんな謎の絵柄が入ったあのボールペンを再び取り出し、美沙のその言葉に応えるようにして何かを書こうと、ボールペンのその先を用紙の上に乗せた、まさにその瞬間…
「凛さん!…そのメモ帳、可愛い花柄がいっぱい描いてあって、素敵ね。一枚もらっても…いいかしら?」
半ば強引に美沙はそう言うと、羨ましそうな眼差しで、そのメモ帳を見つめる。
雨宮 凛は、そんな美沙にニコッと微笑むと、今まさに何かを書こうとしていたメモ帳の一番上のその用紙を一枚めくり剥がし、それを美沙にそっと差し出す。
「ありがとう!」
美沙は嬉しそうにそう言って、雨宮 凛が差し出したそのメモ用紙を大切そうに受け取ると、制服の上着の内ポケットの中にしまい込む。
美沙が、メモ用紙をしまい込んでいるその間に…雨宮 凛は、めくり剥がしたメモ帳の新しいページにボールペンで何かを書き込むと、それを美沙にそっと見せる。
美沙はそこに書かれた内容を目で追って、読み終えると…雨宮 凛に視線を戻してから
「…そんなことないわ、でも、あたしの髪を褒めてくれて…ありがとう!」
そう言って、優しく微笑んだ。




